往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是

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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

注意が必要?人工衛星データビジネスに閉塞感・端境期を感じてしまう3つの理由【宇宙ビジネス】

衛星データを取り扱うビジネスが生まれているが伸び悩んているの?

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人工衛星データを取り扱うビジネスでの閉塞感があるように感じます。

理由①無償データの拡大

理由②取得頻度の急増がない

理由③使用ユーザー不足

 

現在、多くの人工衛星の無償データがネット上に上がっています。

最も有名なのがGoogle Earthです。

 

Google Earthは地図データとGPSデータを組み合わせることで、リアルタイムで自分の位置と場所を知ることができるようになりました。

 

現在では各国10基程度の地球観測衛星による無料のマルチスペクトルデータによる気象や植生、災害状況も知ることができています。

 

 

ただ無償のデータを利用しても欠点があります。

 

欠点①観測タイミングが数時間から数か月であること

欠点②解像度が低くピンポイントでの状況確認が難しいこと

 

欠点①は、閉塞感の理由②にもありますが、10基程度の人工衛星があれど、全く同じ軌道で周回するには数日かかります。

 

数日かかると、時期を逃す可能性が高いのです。

 

画像データの植生や災害

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地球観測衛星の画像データの利用に植生や災害を上げました。

植生や災害の一例をあげてみます。

 

植生といえば農業です。

無償のデータを使用する場合は、ピンポイントで画像データを取得できるわけではありません。

現在利用されているのは、ある時期に取得していた画像データを分析することで収穫時期を導き出しています。

 

農業は雨量や日照量により収穫時期がずれ込むことがあり、農産物の種類により千差万別です。

まだ、データの取得時間に制約がある現在では、即効性と人の目による判断の方が素早く収穫時期を確認できてしまいます。成長分野ではありますが、まだ時間が掛かる分野です。

 

ユーザーの引き込みが難しい所ではないでしょうか。

 

もちろん収穫時期以外に、農薬散布や収穫時の自動運転で地理データを活用されているようですが、広大な土地や管理が厳しい農作物以外は費用対効果が少ないのではないかと思ってしまいます。

 

 

無償データではないこともあるのですが、災害にも人工衛星データが使用されています。

 

災害というと日本では水害が多いのですが、世界的には森林火災が知られています。

森林火災の検知で人工衛星のデータが活用されているは、広く知られています。

 

森林火災は水害と違い光学観測機器で観測可能なデータになります。

水害の多くは雲が発生するため、地表面の人工衛星データを取得することができず、水害後の被害調査に使用されるにとどまっています。

 

水害では水中におけるレーダーエコーに近い仕組みを持つ合成開口レーダー人工衛星の使用が進められています。

 

天候に影響されることがなく、地表の情報を取得できることから、大雨による土砂災害の予測にも活用されつつあります。

 

ただし、直接の水量を見ることができず、地上の河川の観測カメラと合わせることで府外の推測をしています。

 

これらの災害に対するデータは公共領域となるため、地方自治体との協力が必須となります。

公的データとなる場合は、周辺の地方自治体との協力体制が必要になり、ある組織に集中するか、複数になる場合は組織同士の協力も必要になる難しい分野となります。

 

無償データが出てきた中では、人工衛星画像データを単体で使用することは難しいです。今後は、高解像度データであっても、価格も下がる可能性があります。

 

Google Earthのような別データとの組み合わせを探すか、データ解析による付加価値がなければ、勢いは落ちていくことでしょう。

 

宇宙業界はやっぱり政府系の資金がでかい

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現在は、人工衛星の機数や機種を増やすという取得頻度を上げ、インフラを整えている段階です。

 

人工衛星のインフラを整えた後に、どのようにユーザーを増やしていくのかが問題となります。

 

大きなお金を動かすには、政府系と手を組むのが早く確実です。

 

海外で有名な宇宙系の企業としては、SpaceXやPlanet Lab、Airbus Group(エアバス)、Kongsberg Satellite Service(KSAT)があげられます。

これらの宇宙関連事業の売上は、自国、外国含めて政府関連が多いです(KSATは違うかな)。

 

宇宙ビジネスは、個人や民間事業でのユーザーが少なく、研究開発レベルになっています。

動くお金が多くなく、儲からなく、事業として倒れてしまう可能性がります。

 

安定して生き残るには、どうしても政府関連の事業と付き合っていくことを主眼に置いていかなければいけない、かな。

 

一方でパラダイムシフトを狙って準備を進めているところもあるのでしょう。

 

人工衛星を製造するにも年単位の時間が掛かるため、ハードとしての技術革新は難しいため、データを利用したソフトとしての技術革新の方が先に来るような気配はあります。

 

ハードの技術革新はロケット含めた人工衛星の打上げ機会が増えなければ進まないですからね。

 

個人的には組織の統廃合の上で、現行の大手以外の組織が立ち上がると面白いのですね。

人工衛星は、派閥もありそうでなので、2~3社ぐらいにまとまってくれるとより面白い気がします。

 

参考資料

JAXA 第一宇宙技術部門 利用事例 農林水産

http://www.sapc.jaxa.jp/case/organization/agriculture.html