ロケット射場の選び方
ロケット射場が2019年に新たに建設開始したようですね。2020年には建設が終わるそうです。
ロケット射場って、簡単に言うと、ロケットの発射地点です。
ロケットなので宇宙に飛ばす地点、すなわち、宇宙に早く行ける場所なんですね。
いやいや、地上から宇宙までの距離はほとんど変わらないという人が居るかもしれません。
なんなら、エベレストや富士山の方が距離的に宇宙に一番近い場所って言えるじゃないですか。
ちがうちがう、宇宙に近い場所じゃないんですよ、宇宙に早く行ける場所なんです。
電車でいうなら、新幹線の発着駅です。
飛行機でいうなら、空港を射場と呼んでいます。
日本における射場で一番重要な要素は何でしょうか。
住民の理解です。
これ結構重要です。
次に大事なのが、打上げ方向に何もないことです。
何もないとは、人間、環境、およびミッションとそれに関わる資産に影響を与えないことです。
一番良いのは、海でしたり、砂漠、広原と言ったところでしょうか。
そして、打上げ方向は東西南北どこでも良い訳ではありません。
打上げる理由は何でしょうか、人工衛星を地球の周囲を回るための軌道に送り届けることが目的のほとんどです。
軌道に送れないと、地球に重力に引っ張られて落下してしまいます。
軌道に送るとは重力に引っ張られない力が必要なのです。その力の一つが第一宇宙速度といわれる速度です。
その速度は秒速7.9kmといわれています。時速28,440kmになります。
地球1周がだいたい40,000kmなので、だいたい1時間30分程度で地球を1周する速度になります。
とても大変なんですね。
さて、 地球は地軸と呼ばれる軸を中心に回転しています。
では地球は西回りでしょうか、東回りでしょうか。
よく使われる表現としては西から東に回っています。
この自転する速度を利用する手はないのです。
赤道近傍は秒速464mです。単位を直すと秒速0.454kmです。
赤道から離れていくと速度は落ちますが、それでもこの差はロケットの燃料や速度に影響を与えます。
ロケットの動きを見てみると、多くのロケットは西から東に動きます。
それは、この地球の自転のエネルギーを使っているからなんですね。
気象衛星などの静止衛星はともかく、周回衛星は太陽同期軌道と呼ばれる軌道を飛んでいます。
太陽同期軌道を飛ぶ人工衛星は、南極と北極を回り、昼と夜を繰り返しています。
すなわち、南あるいは北向きに人工衛星を放出するんですね。
ということで、ロケットの打上げは、南北東のうちどれかがいいのです。
もちろん国土上の問題で難しい国もあり、西側に打上げているところもあります。
日本でのロケット発射場は4か所、すべて南と東に空いていますね。
ちなみに、射場名を探していたら、インターステラテクノロジズの発射場は名前を売り出していました。
インターステラテクノロジズ発射場:※北海道広尾郡大樹町
種子島宇宙センター:鹿児島県熊毛郡南種子町
内之浦宇宙空間観測所:鹿児島県肝属郡肝付町
インターステラテクノロジズ発射場ネーミングライツ | IST NAMING SHOP
漁業とロケット
射場建設に住民の理解が必要な理由。
ロケットって大きい音が出ますよね。
打ち上げ失敗した時は、海に落ちますよね。
そんな時に漁に出たとすればどうでしょうか。
大事故です。
ロケット打ち上げ時間帯はある程度決まっていますし、漁業の時間帯もある程度決まっています。
決まっているのに、両方作業していたらどうでしょうか、大事故の確率が上がるだけです。
あと、魚は音に敏感なので、大きな音が鳴ると警戒心を高めるんですね。
もちろん、鳥もそうです。
そのため、漁業関係者はもちろんですが、周辺住民へ爆音を鳴らすので理解が必要なんですね。
魚の音感覚
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/49/6/49_KJ00001456675/_pdf
本州に作る意味
ロケットの輸送は時間もお金もかかります。
船で輸送する場合がほとんどですが、陸路という手段ももちろんあります。
国内でHⅡ-AロケットやH3ロケットを製造している三菱重工のロケット製造工場は愛知県です。
同じく、Sロケット(S-310、S-520、SS-520)やイプシロンを製造しているIHIエアロスペースのロケット工場は群馬県です。
多分。
鹿児島県までいくには航路か空路を使うことになります。
陸路で移動した方が、輸送環境の予想がしやすく安全なんですね。
空路の方が輸送環境(気圧差とそれに関わる温度差)が変わるリスクがやや大きいので、航路を使う場合が多いのではないでしょうか。
輸送に敏感なのは、ロケットより人工衛星かもしれません。
国内の人工衛星システム製造メーカーは関東に固まっています。
距離が長ければ長いほど、リスクが高くなります。それはなるべく避けたくなります。
故に、本州内にあることはとても有利なんですね。
ちなみにインターステラテクノロジズでは、射場とロケット製造場所はとても近いそうです。
あとはロケット打ち上げの回転率をどう上げるかにかかっています。
人工衛星の製造にも戦略があるため、ある期間に絶対打上げたいという時があります。
今まで、時期を延ばして、多くの人工衛星が別のロケットに鞍替えしたでしょうか。
小型衛星の製造が活発になれば、打上げる機会とコストがネックになってきます。
いくつかの人工衛星を保有したい組織が、打上げ機会やコストの問題で海外で打ち上げることになったでしょうか。
打上げ機会とコストの問題は、今後の人工衛星製造メーカーにも関わってきます。
機会がなければ売れないので、結局は赤字で突き進んでしまうからです。
10cmでの人工衛星が作れたとしても、打ち上がらなければ高級なオブジェか、通信機になるだけなのです。
参考
種子島芋焼酎[上妻酒造] | 世界一美しい射場【種子島宇宙センター】
http://kouzuma-shuzou.com/tanegashima/taneinfo01.html
なぜ種子島や内之浦で打ち上げるのですか? | ファン!ファン!JAXA!
https://fanfun.jaxa.jp/faq/detail/303.html
http://www.cosmotec-hp.jp/column/nagao3.html
https://ssl.jspacesystems.or.jp/library/archives/usef/gijyustu/pdf/USEF09L-R-001.pdf
宇宙で変わる北海道の未来、日本の未来
http://www.dokeiren.gr.jp/assets/files/pdf/topics/201902vision_4.pdf
https://www.dbj.jp/topics/region/area/files/0000027435_file2.pdf
和歌山に国内初の民間ロケット射場 スペースワンの戦略と狙い | 月刊「事業構想」2019年7月号
https://www.projectdesign.jp/201907/area-wakayama/006564.php
フィールド科学教育研究センター・里域ステーション・紀伊大島実験所
https://ssl.jspacesystems.or.jp/library/archives/usef/gijyustu/pdf/USEF09L-R-001.pdf
愛知県飛島村のロケット製造工場で「飛島宇宙教室2018」を開催します|CSRへの取り組み|三菱重工
https://www.mhi.com/jp/csr/news/story/chubu_180925.html