振動試験ジグ設計のポイント
人工衛星に限らず環境試験のひとつである振動試験は通常の製品でも試験が行われる。
大抵の場合は輸送振動試験などの包装時や梱包時の試験が多いようです。
振動試験のジグ設計のポイントですが、そもそも振動試験のジグとは、振動試験機と対象となる供試体=構造体を結合する対象のことなのです。
振動試験は、構造体に振動を与えて、構造体の構造が持つかどうか確認する試験のことを指します。
振動試験で確認するポイントは、必要な振動荷重あるいは振動負荷を加えた時に、対象が壊れないことを確認することになります。構造の耐性の確認を指します。
振動試験の種類としては、正弦波振動試験、ランダム振動試験、サインバースト試験、モーダルサーベイ試験が主としてあります。
各試験ごとに試験治具を製作してもよいのですが、この振動試験治具の製造にも時間やコストがかかります。
この試験治具のポイントとしては、剛体であることと伝わっているかもしれません。
剛体は字のごとく、硬い構造体であることを指しています。
硬い構造体は、強度も高いことだけでなく、重い質量であることを指していることが多いのです。
だからといって、硬い物質を使っているだけでは、加工費用や材料費がかかってしまいます。
ただ、従来の構造試験を使いたがる人が居たり、試験治具の余裕がないと、再設計をする機会はないかもしれません。
試験治具は、第一に壊れないことです。
構造体と同じ負荷を与えても、影響を与えない程度の強度は必要です。
次に構造体と違う固有値あるいは共振周波数を持たないことです。
構造体と同じ固有値だと、構造体と一緒のタイミングで振動してしまい、より大きな負荷を掛けることになってしまいます。
次には振動環境条件から離れた部分に固有値あるいは共振周波数を持っていることです。
振動環境条件で試験治具が共振してしまったら、構造体への振動評価が行えません。
最後に、構造体と振動試験とインターフェースを取ることができるように、締結箇所があることです。
試験治具がガタつかないように、振動試験機との締結点はなるべく多い方がいいでしょう。
ただ、構造体との固定箇所は実際の固定点と同じであることが望ましいです。締結点が違うだけで構造の評価はがらりと変わります。
振動試験機への取付け時に用いるプレートジグの材質に関する研究
https://www.gitc.pref.nagano.lg.jp/reports/pdf/H21/02Seimitsu/H21P04_16-19.pdf
JERG-2-130-HB003A 振動試験ハンドブック
http://sma.jaxa.jp/TechDoc/Docs/JAXA-JERG-2-130-HB003A.pdf
試験治具の再設計と試験の確認のポイント
試験治具に構造シミュレーションを使うかどうかはともかく、インタフェース箇所を確保したまま、剛性が弱くならない程度に削り取っていくのです。
また、複雑な構造にするとその分、振動数も複雑になります。
単純な構造であれば、振動数のピークは1つあるいは2つ程度に収まります。
ただ重く硬いという設計であれば、複雑な設計をしなくてもよいのですが、最適設計を目指すのであればよい、少し考えてみてもいいかもしれません。
硬くて重いと振動試験治具の扱いも難しいと思いますので、なかなかその塩梅が難しいかもしれません。
扱いやすくするために、軽くすると周波数が高くなるため、環境試験の条件にかぶったりと、なかなか難しい所なのです。
しかも、固定点を間違っていると、その分が結果となって現れます。
振動試験の注意
振動試験時の注意としては、何があるでしょうか。
1つ目は試験の入力プロファイルを間違えないことです。
2つ目は試験前に工具やボルトなどの部品が試験機に置かれていないことを確認することです。
3つ目は試験直前にオペレータと打ち合わせを行い、緊急停止の相談をしておくことです。
4つ目は構造体に取り付ける加速度センサーをしっかりと固定しておくことです。あるいは、加速度センサーが使えることを確認することです。
センサーが固定されていなかったり、加速度センサーが使用不能になるとデータが抜けてしまいます。
加速度センサーが使用不能かどうかをあえて確認するのは加速度センサー及び接続するケーブルは、多くの試験に使われているため、故障しやすくなっています。直前でもしっかり確認しましょう。
5つ目は試験中に部品の跳ね返りに注意することです。2つ目で忘れ物を確認したとしても、どこかに忘れ物がある可能性があります。試験のオペレータに合図なり連絡を取って、試験を止めましょう。
6つ目は試験中の異音に注意することです。異音は、構造体が壊れる前兆であったり、ボルトのトルク不足で抜け始めたり、設計不足で固定箇所の設計不良により破損したりすることになります。
7つ目は試験後に目視確認を行い物体が破損していないか確認することです。構造シミュレーションをしている場合は、どこが強度的に弱いか確認していることと思いますのでそこを重点的に確認することです。さらにシミュレーションでは再現できない部分や、最も荷重がかかる締結場所を確認することです。
さらに言うなら、振動試験治具の破損状況も確認しておく必要があります。振動試験治具が破損していると、伝わるはずの荷重が分散されてしまっている可能性があります。
最後にクイックな試験評価はどうすればよいのでしょうか。一つは構造シミュレーションと照らし合わせることです。
もちろん構造シミュレーションのようにキレイな数値にはならないので、ある程度、頭の中で変換が必要になります。
もう一つは、モーダルサーベイ試験を行うことです。試験の負荷が大きい正弦波であったりサインバーストよりも負荷レベルの低いモーダルサーベイ試験を各試験前後に行い、そのデータの差分で評価するというのが分かりやすいと思います。
ただ、試験前後でもピッタリ同じになりません。ボルトの締め付け具合や駆動箇所の微妙な変化が発生してしまうことに注意です。
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