電波は減衰する
電波は、光であることを知っているでしょうか。
正確には、光の中に電波の性質をもっています。
光が遠く離れると、ぼんやりとした光になったり、光が小さくなって見えることがあると思います。
電波も同じです。
電波も遠く離れると、届かなくなったり、スマホのアンテナマークが小さくなったりすると思います。
なぜこんなことが起きるのか、理由は遠いからです。
まだ理由はあります。物体がたくさんあるからです。
光が電波の性質を持っている通り、光は物体がたくさんあると隠れたり、見えなくなったりすると同じく、電波も隠れたり、受け取れなくなってしまいます。
物体とは具体的に、大気のことです。大気が邪魔して、電波が弱くなっていくのです。
ちなみに電波の強弱を強度、大気含めた物体や距離によって弱くなることを減衰といいます。
減衰に対応するには、電波の強度を上げていく必要があります。
電波を上げていくとどうなるか、極端に言うと電子レンジのように加熱します。
電子レンジはマイクロ波と呼ばれる波によって物体を加熱します。
マイクロ波と電波の違いありません、同じです。
波の届き方といっても、早い遅いではなく、響き方の違いなのです。
高い音、低い音、トンッと鳴るか、どーーーーんと鳴るかの違いです。
高い音というか高い周波数は電波が直進しやすくなります。
低い音というか低い周波数は電波が回り込みやすくなります。
この違いは大きな違いです。
高い周波数の場合、電波が直進するので、物体にぶつかっていきます。
どんどんぶつかっていきます。
どんどんぶつかっていくと、どんどん電波は減衰します。
つまり、大きな強度にするか、指向性をもって集中して収束させて送り届ける必要があります。
送り届けるのはその筋でいうと伝送といいます。
静止衛星は高い周波数を選択します。
減衰するのになぜか。
別の利点があるからです。
高い周波数であればあるほど、伝送できる情報量が多くなるからです。
高い周波数の場合、なぜ伝送できる情報量が多くなるのでしょうか。
周波数は一秒間に発生する波の数で決まります。
波の数が多いと高い周波数、少ないと低い周波数が起きます。
一秒間という決められた時間の中で波の数が違うということは、波をほどいて伸ばしてみるとわかります。
波の数が多いほど距離が長くなるのです。
1cmに同じデータ量が入ると考えると、周波数が高い方が有利なんですね。
つまり、静止衛星が高い周波数を選択するのは、たくさんのデータ量を送りたいからなんです。
5Gが来るといわれる世の中も同じです、高周波数をうまく扱える技術ができたのか調べていませんけど、なぜデータ量が多くなったのかわかります。
高い周波数になったからなんですね。
参考
中部電力|「周波数」と「波長」 - 電磁界(電磁波)の基礎知識(スマートフォン版)
https://www.chuden.co.jp/smt/energy/denjikai/jik_chishiki/shuhasu/index.html
周波数が違うと、どうなるの? | アンテナとは | 事業情報 | HARADA
https://www.harada.com/jp/innovation/about/frequency.html
総務省 電波利用ホームページ|電波監視|宇宙電波監視施設(DEURAS-S)
https://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/monitoring/moni/type/deurasys/deuras_s.htm
低い周波数のうまい使い方
低い周波数を使う人工衛星もあります。
理由は簡単です、電波が回り込むからです。
電波が回り込むということは、広い地域で電波を受信できることができます。
例えば、人工衛星に異常が発生した時はどうでしょうか。
人工衛星が回転しているかもしれません、太陽電池パドルが切れているかもしれません、目的の場所を向いていないかもしれません。
色々なことが起きた時に、高い周波数の場合は、あまりに直線的過ぎて、地上側で受け取ることができる可能性がとても低くなります。
低い周波数の場合はどうでしょう。
受け取る可能性が上がります。
データ量は少ないですが、受け取れる可能性が上がります。
低い周波数を使う場合は、人工衛星のステータスを確認するためのデータを取得することが多いです。
低い周波数でデータを送信する場合は、時間をかける必要がありますね。
ちなみに周回衛星の場合は、低い周波数を使う場合が多いです。
周回しているので、電波を掴まえる必要があるのです。
静止衛星はだいたい同じ場所に電波を送り届けることができます。
周回衛星のように、地上のある一点にある動けない地上のアンテナに対して動く人工衛星に対して、アンテナで電波を追う必要があるのです。
アンテナの向きや姿勢制御があまりよくないと捉えにくい電波であっても、低い周波数であれば掴まえることができるのです。
ちなみに、電波の掴まえやすさは、回線計算といわれています。
大気減衰や雲の量、電波の出力を考慮して回線計算を行います。
周波数の高低は人工衛星の運用に大きく関わってきます。
どのようなデータを、どのようなタイミングで送るのかで使う周波数が決まります。
周波数帯によって、通信機のサイズも変わります。
電波は概念設計や実現性の検討の段階で決めておく必要があります。
それでも、扱いやすい周波数は使われます。
ただ、現在多くの人工衛星が打ち上げられているために、低い周波数帯が使われすぎて、あらたにTIUといわれる電波の周波数を国際的に管理している組織から、周波数が足りないとも言われているらしいです。
新しく人工衛星を製造する組織の場合、残っている周波数帯の知識はもちろん、精度の高い姿勢制御を行う技術を持っていないと、なかなか業界として入ってくるのが難しくなっています。
あるいは今のうちに、多くの周波数を申請して、取得しておくという戦略も考えておく必要があるようです。
もちろん、ダミー人工衛星の場合は、申請が通らなかったりするので注意は必要です。相手は国際組織なのですから。
参考
JERG-2-420 RF回線設計標準
http://sma.jaxa.jp/TechDoc/Docs/JAXA-JERG-2-420C.pdf
衛星通信のしくみ - A2A
http://www.a2a.jp/resources/Satcom_v1.pdf
特集 衛星と無線通信システム 衛星通信の回線設計 特集
http://www.rf-world.jp/bn/RFW15/samples/p081-082.pdf