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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

【NASAの教訓】『アポロ13』のフライトディレクター:ジーン・クランツの残した10か条

アポロ計画ジーン・クランツ

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credit:NASA

OFFICIAL EMBLEM - APOLLO 11 - FIRST (1st) SCHEDULED LUNAR LANDING MISSION

https://images.nasa.gov/details-S69-34875

 

1995年に公開された映画「アポロ13」は、1970年に実際にアポロ13号で起きた実話をもとに制作された映画です。

 

その中で主任フライトディレクター(運用責任者)としてアメリカのヒューストン(ジョンソン宇宙センター)の地上局内にジーン・クランツはいました。

彼は「Failure Is Not An Option(失敗の選択肢はない)」というセリフを残しています。ちなみに、宇宙関連のショップでもこの言葉が使われたTシャツが売られています。

 

彼も実在の人物で、アポロ13号より前の5号、7号、9号、11号でもフライトディレクターで、地上側の現場の責任者でした。

その後、アポロ17号までフライトディレクターを務めあげ、昇進していき、1994年にNASAを退職していきました。

 

彼のリーダーシップは、アメリカの有人探査および月面探査において重要な役割を果たしています。

彼は、アポロ13号以外にも、打上げの落雷に見舞われたアポロ12号。月面着陸直前にアボートスイッチにはんだボールがあったことによる不具合に対する修正が発生したアポロ14号。別のスイッチにはんだボールがあり月に向かう途中にエンジンが点火されかけたアポロ15号。姿勢制御をおこなうジンバルに不具合で月面着陸が危うくなった16号に対して、地上側から危機的な問題に対応していました。

 

本人動画はこちら

www.youtube.com

 

ジーン・クランツの残した10か条の教訓

伝説的なフライトディレクターであるジーン・クランツは次の教訓を残しています。

 

①Be Proactive(先を見越して積極的に動く)
②Take Responsibility(自分の担当は自分で責任を持つ)
③Play Flat-out(やるときは全力で手を抜かない)
④Ask Questions(わからないことはその場で必ず質問し確認する)
⑤Test and Validate All Assumption(考えられることは全て試せ)
⑥Write it Down(重要なことはすべて書き残す)
⑦Don't Hide Mistakes(ミスは隠さない)
⑧Know Your System Thoroughly(システムを全部掌握する)
⑨Think Ahead(次に来るものを常に意識する)
⑩Respect Your Teammates(チームワークを尊重し、信頼感を持つ)

 

これは宇宙開発に関わらず、彼が挑戦することになった危機的な状況にも事前・あるいは最中にどのように対応すればいいのか素晴らしい教訓になります。

 

ジーンクランツの教訓は他の日本語略もあるのですが、この翻訳はとても飲み込みやすいと感じています。


 

フライトディレクターとは

これらの教訓のほかに、ジーン・クランツはフライトディレクターはどんなものかを絶った一文に残しています。

「A flight director may take any action necessary for crew safety and mission success.(フライトディレクターは、宇宙飛行士の安全とミッションの成功に関わるあらゆる行動を取れる。)」

 

シンプルでいてわかりやすい記述ですね。

 

参考文献

 

NASA Johnson Space Center Oral History Project

https://historycollection.jsc.nasa.gov/JSCHistoryPortal/history/oral_histories/KranzEF/kranzef.htm

Kranz, Eugene F.

https://goefoundation.org/eagles/kranz-eugene-f/

https://history.nasa.gov/SP-4223/ch6.htm