宇宙環境試験に供するセラミックコンデンサの注意点
コンデンサは、充電や放電を行うことで、電圧の変化を吸収したり、電気の通り道で余計なノイズを横道にそらしたり、直流はさえぎり周波数で信号をより分ける機能があります。
セラミックコンデンサは、誘電体に高誘電率のセラミックを用いたコンデンサで、次のような特長があります。
- 極性がない
- 高周波特性が良い(ESRが低い)
- 高耐熱
- 長寿命
- 印可電圧によって容量が変化する特性(DCバイアス特性)を持っている。DCバイアス特性は誘電率が大きいものほど顕著に現れる。
- 温度によって静電容量が大きく変化する
- 高周波による振動で音鳴りが発生する
- 温度/機械的衝撃によりクラック・割れ・欠けが発生しやすい
今回は、宇宙環境におけるセラミックコンデンサの注意点を述べています
概要
セラミックチップコンデンサは、熱衝撃や機械的ストレスの影響を非常に受けやすくなっています。
多くのゴダードスペースフライトセンター(GSFC)プロジェクトでは、熱衝撃または機械的応力のいずれかにより、セラミックキャップに、通常は複数の部品に亀裂が発生しています。
あるケースでは、部品はすべての環境試験に合格しましたが、軌道上で数か月後に異常な動作が始まりました。
発生タイミング
LandSat-8熱赤外線センサー(TIRS)の軌道上異常、磁気圏マルチスケールミッションの統合とテスト(I&T)
Lessons Learned
- すべてのメーカーのセラミックコンデンサは、良性で実証済みの基準に準拠していると見なされる可能性のある熱的および機械的条件下で劣化または故障につながる可能性のある亀裂が発生する可能性があります。
- 損傷は、はんだ接合部の修正、手直しと修理、隣接部品の取り付け、または曲げを含む可能性のあるボードの機械的取り扱いなどの活動によって発生する可能性があります。
Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。
- 部品を取り付ける前に、常にボードと部品を熱的に事前調整してください(NASA-STD-8739.2の13.4.1項と13.4.4項を参照)。
- 審美的なはんだ接合の修正を行わないでください。
- 取り付けられたセラミックコンデンサの近くでの手直しや取り付け不足に注意してください。
- ボードの柔軟な領域にセラミックコンデンサを含む設計を組み立てます。
- 手はんだ付けは避けてください。ただし、必要に応じて、熱衝撃を避けるために部品とボードの熱前処理を実行してください。
- テスト中は漏れ電流の兆候に注意してください。
Lessons Learnedとは
Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。
得られた教訓というと、失敗や不具合だけを想像しがちではありますが、成功したことについても教訓としてあげられます。
Lessons Learnedは同じ失敗を繰り返さないようにすることと、計画が順調に進んだ成功要因を共有することの2つがあります。
NASAで公開されているNASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)から、宇宙業界に限らず、工業製品でも適用できそうなLessons Learnedを集めてみました。
参考サイト
NASA Lessons Learned
https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html
NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)
Understand What 'Cleaning' Means In The Context Of The Flight Item
https://llis.nasa.gov/lesson/2043
コンデンサの『種類』まとめ!特徴などかなり詳しく分類