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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

リモートセンシングと農業/考古学/北極・南極

リモートセンシングと農業/考古学/北極・南極

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-GSFC_20171208_Archive_e000502

 

人工衛星のデータは、農業や林業、天気といった様々なことを使用されています。

 

人工衛星データの中で地球表面を観測装置を用いて、観測することをリモートセンシングと呼びます。リモートセンシング人工衛星だけではなく、飛行機や気球などで観測することも言います。

 

リモートセンシングという表現は、そのうちに地球表面に限らず、惑星表面を観測する技術のことを指すことになるかもしれませんが。

 

リモートセンシングの用途は年々広がっています。

人工衛星のデータがどのように使われているか、知らない情報があれば幸いです。

 

 

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農業

【001】 光学センサ及び合成開口レーダを使用した土壌水分量の観測

大量に水を使用する日本ではいの一番に出てくることはなかなか難しいかもしれませんが、土壌水分量を調べることができます。

 

土壌水分を調べることで、地球の水循環や天気予報、干ばつ、洪水について分析することができます。

人工衛星による土壌水分量を観測するには光学センサと合成開口レーダの二つの方法があります。

光学センサでは、自然界に放出されたいわゆる表面放射の波長(スペクトル)を観測します。高精度ではありますが、一般に空間分解能の低い、いわゆる粗い画像が得られます。

合成開口レーダの場合は、対象地域に電波を照射し、後方散乱により観測します。光学センサとは異なり、空間分解能の高くなりますが、精度は低くなります。

NASAでは両方の観測装置を搭載した人工衛星によりSoil Moisture Active Passive (SMAP)と言われる計画があり、2015年に打上げられています。

 

【002】農業計画のための土壌データのマッピング

土壌は何もしなければ痩せ果て、時間がたつにつれて岩となり崩れていきます。

土質と水、日光によって、植物含めた生物が住める環境が保たれます。

世界の土壌情報を集めている独立した国際組織である国際土壌照合情報センターISRIC( World Soil Information)が土壌データのマッピングを優先事項と上げており、人口増加と食糧のために、世界中で正確な土質情報の必要性が高まってきています。

ISRICでは、1km区画の空間土壌特性を予測するモデルを開発していたり、Terra/Aquaの観測データを使用した気候指標や従来の土壌調査などをもとに、空間予測モデルを作成しています。

 

【003】正規化差植生指数(NDVI)による作物の状態の定量

世界の食料供給は、現在において衛星画像と正規化植生指数(NDVI、Normalized Difference Vegetation Index)で監視されています。

近赤外線観測によって、農業における健康な植生を検出しています。収穫される状態にもよりますが、一般に健康な植生は緑色の波長を反射し、赤と青の波長を吸収します。

人間の視覚から移る緑色の波長は、光合成中の植物によって生成されている葉緑素クロロフィル)です。

葉緑素は、他の波長と比較して、緑色及び近赤外の波長で多くの光を反射しています。この情報からNDVIと近赤外観測が農業及び自然環境における主要な情報とされる理由の一つとなります。

 

【004】精密農業で農耕地のコストと時間を節約する

精密農業(Precision Agriculture)とは、農耕地の空間的時間的な画像データを農作業の判断に利用するシステムのことを指します。

精密農業をうまく実行することで、肥料の節約は10%とされており、収穫量も向上させることができるといわれています。

精密農業では、さまざまな波長の光を観測し、農作物の健康状態を確認します。健康状態に合わせて、調整された肥料を設定し散布させたり、農業害虫の特定にも活用されています。

 

考古学

【005】恐竜の足跡の発生を予測する

リモートセンシングによって、恐竜が地球上を歩き回っていた場所を特定するためにも使用されています。

一般に恐竜は地層の奥深くに埋まっているイメージですが地球上の中には地表面に露出していることもあります。

そのような恐竜の化石が数多く露出している地域の植生や傾斜面、サイズなど地理空間的データを取得します。

現在の技術では、解像度ではありませんが数値モデルで、1cm以下の精度のモデル化をすることができます。

 

【006】マヤや古代エジプトなどの古代遺跡の発掘

古代遺跡の発掘には、赤外線画像とステレオ画像(立体画)が使われています。

長い波長である赤外線により、表面約1m程度の深さまで情報を得ることができます。

ステレオ画像は、地上にある物体の微妙な高低差を知ることができます。

考古学者が木々の植生の大きさを越えた高さで地上に正方形のパターンを見つけた時に衝撃を与えたといいます。

正方形のパターンで見られたのは古代の建物やピラミッドであり、リモートセンシングと赤外線画像を使用することで、古代マヤ文明エジプト文明を発見・解明してきています。

 

北極/南極

【007】積雪量を計算する

積雪量は、雪が解けると川に流れ込み、地域によっては洪水であったり飲料水に関する貴重な情報になります。

しかし、リモートセンシングによって積雪量を計算することは非常に困難です。

NASAでは人工衛星ではありませんが航空機に搭載されたイメージング分光計およびLIDAR(Light Detection and Ranging)システムによって観測しています。

LIDARシステムとは、観測対象に向けてパルス波を発信し、照射による散乱光を観測することで観測対象を分析するシステムです。

 

【008】北極圏での探索、保護、誘導

北極圏は政治的にも非常にデリケートな地域です。アメリカを始め、ロシア、カナダ、デンマークが自国の領土を主張しており、すべての国が合意するまで、北極圏の資源を自由にすることはできません。

北極圏は、鉱物の採掘や天然ガス、船舶航路の短縮といった多くの利権が関わっています。

 

【009】氷河の融解と海面への影響の研究

氷河は地球上で最大の淡水貯水池を保持しています。

極地の99%には氷河があることが分かっています。

さらに、2002年に打上げられたNASAとドイツ航空宇宙センター(DLR)による2機のコンステレーションを編成したGRACE(Gravity Recovery and Climate Experiment) によって、北米アラスカの氷河が年間約20.6ギガトンの質量を失っていることが観測されています。

日本の年間(2017年)の生活用水と工業用水が約25.7ギガトンと言われており(農業用水を合わせると約79.3ギガトン)、日本の年間で使用する水の80%が失われていることになります。

恐ろしいことに、融ける氷の量は年々増えており、海水へ深刻な影響を与えています。

 

参考資料

リモートセンシングとは?

https://www.restec.or.jp/knowledge/

100 Earth Shattering Remote Sensing Applications & Uses

https://gisgeography.com/remote-sensing-applications/

農業

Soil Moisture Active Passive(SMAP

https://smap.jpl.nasa.gov/

ISRIC( World Soil Information)

https://soilgrids.org/

精密農業(スマート農業)はテクノロジーではない、マネジメントである

https://www.jacom.or.jp/column/2019/05/190521-38061.php

考古学

An Integrated Approach to Three-Dimensional Data Collection at Dinosaur Tracksites in the Rocky Mountain West

https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/10420940490442296

北極/南極

NASA Opens New Era in Measuring Western U.S. Snowpack

https://www.nasa.gov/home/hqnews/2013/may/HQ_13-131_Airborne_Snow_Mission.html

NASA Airborne Snow Observatory (ASO)

https://nsidc.org/data/aso

GRACEがもたらしたもの

http://www.geod.jpn.org/web-text/part3_2014/matsuo/index.html

水資源の利用状況(国土交通省

https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/mizukokudo_mizsei_tk2_000014.html#:~:text=%E5%85%A8%E5%9B%BD%E3%81%AE%E6%B0%B4%E4%BD%BF%E7%94%A8%E9%87%8F%EF%BC%88%E5%8F%96%E6%B0%B4%E9%87%8F%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B9%EF%BC%89&text=%E7%94%9F%E6%B4%BB%E7%94%A8%E6%B0%B4%E3%81%A8%E5%B7%A5%E6%A5%AD%E7%94%A8%E6%B0%B4,m3%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82