宇宙機電子部品実装には「リジット基板とフレキシブル基板」と「FR-4」が離れない
宇宙業界に関わらず電子機器にははんだを含んだ部品実装がついて回ります。
今回は「リジット基板とフレキシブル基板」と「FR-4」に注目してみてみます。
まずは部品実装までの流れを確認してみましょう。
- 絶縁繊維樹脂材の板に、薄くて細い銅のラインを引き、似たような板を数枚から十数枚以上重ねてプリント基板を製造する。
- プリント基板の上に部品を配置し、はんだと呼ばれる鉛と錫を主とした合金により接合する。
- プリント基板を筐体に配置し、ハーネス(ケーブル)をプリント基板と接合し、コネクタにより筐体外部との接続するラインを作る。
- 別の筐体・電子機器を接続するために、ハーネス(ケーブル)を伸ばし、コネクタで接続する。
詳細は省くにしても、だいたいはこの流れで部品実装が進みます。
プリント基板の製造「リジット基板」と「フレキシブル基板」の違い
フレキシブル基板の結論の7項目
- 量産が確定していればメリットがある。
- 開発品ではデメリットの方が大きい。
- 基板とケーブル実装による軽量化が可能である。
- 搭載体積を減らせることができる。
- 比較的に高密度実装となる場合はコストが高く、リードタイムが長くなる。
- 使用できる電子部品の制限と接着強度を含めた設計に時間が掛かる。
- 機械的強度がリジッド基板に比べて弱くなる。
プリント基板には、リジット基板とフレキシブル基板の2種類に大きく分けられます。
リジット基板とフレキシブル基板との違いは、硬質(リジット)であるか柔軟(フレキシブル)であるかの違いです。
フレキシブル基板のメリットとしては、内部配線の軽量化が大きいのではないでしょうか。内部配線を少なくすることでコネクタも減らすことができます。
人工衛星において、重量を減らすことと搭載体積を小さくすることはとても大きいメリットになります。
人工衛星を打上げる際には、大きさや重量、ロケットによっては重心の制限があります。
決められた制限の中、重量と搭載体積を減らすことができれば、その軽量分を他の部品に回すことができるのです。
人工衛星では大きなメリットではあるのですが、あまり使われていませんでした。
使われていなかった理由があります。
技術的に両面実装しかできなかった点があげられます。
人工衛星の電子部品の高密度化により基板の両面ではなく多層基板(積層数)にする必要性が発生しており、避けられていました。
ただ、現在は技術的にも積層数を増やすことができています。
機械的強度もリジット基板に比べて低く、使用できる電子部品も制限されており、補強版や接着強度も考慮しつつ検討する設計が難しいという点も挙げられています。
これらのデメリットよりも大きいのが、コストが高くなるのとリードタイムが長くなりやすい傾向にあります。
量産であれは金型製造により量産することで全体のコストを低減させることができるのですが、単機製造ではこの辺りが開発費やスケジュールに重く効いてきます。
今までは特注品・開発品であることが多かったので、手直しに時間とコストがかかるフレキシブル基板よりはリジット基板を使用する方が利点が大きかったのです。
毛嫌いしていてフレキシブル基板の使用が少なかったのではなく、スケジュールやコスト、改良のしやすさの蓄積により培われてきたノウハウが、結果的に設計・製造者の信頼性を上げることになり使用されてきたのです。
もちろん、ここ十数年で盛り上がってきた人工衛星の小型化に伴う機数の増加を考慮すると、フレキシブル基板に移行してもおかしくはないかもしれませんね。
FR-4とは
結論の6項目
- FR-4とは、NEMA/ANSI規格のFRグレードの呼び名である。
- FRの数値が高いと難燃性が高くなり、FR-5まで規定されている。
- JIS規格で同等の規格(GE4F)もあるがあまり使われない。
- ガラスエポキシ樹脂である。
- 基板の緑色はソルダレジストであり、FRグレードも樹脂材も関係ない。
- ソルダレジストは絶縁膜のことで、緑以外に色がある。緑は安い。
基板にもガラスエポキシ樹脂とかいろいろと種類があります。
多くはFR-4と聞いたことがあるかもしれませんし、各所で聞かれる基板の材料です。
FR-4とは、米国電機工業会NEMA(National Electrical Manufacturers Association)規格と米国国家標準協会ANSI(American National Standard Institute)規格での呼び方です。
日本産業規格(旧称:日本工業規格)JISでも呼び名が与えられていますが、業界的にはNEMA/ANSI規格が使われることが多いです。JISでは、FR-4はGE4Fとも評されます。
ちなみに、業界のせいもあるかもしれませんが「FR-4があるのだから、FR-1やFR-2はないのか?」と電気設計者に聞いても、あまりピンとは来ない程度に使用されていないようです。
有名どころだけ機材の種類を挙げてみると、次の通りです。
- FR-1,2:紙フェノール基板
- FR-3:紙エポキシ基板
- FR-4,5:ガラスエポキシ基板
- CEM-3:ガラスコンポジット基板
- ―(規格表記なし):ガラスポリイミド基板
- ―(規格表記なし):フッ素基板
- ―(規格表記なし):ガラスPPO基板
もともとFR-Xとは難燃性を示すようで、数字が大きいほど高難燃性を示しています。
さて、基板と聞いて想像するのは色はあるでしょうか?
主に、緑色と黄色が思いついているのではないでしょうか。
基板の色は緑色や黄色は上記に上げた機材の色ではなく、ソルダレジストの色を使用しています。
ソルダレジストとは絶縁膜のことで、基板に張り巡らされた銅箔や基板そのものにほこりや水分、熱の付着から保護し、絶縁性を維持するものです。
レジスト材料により顔料が変わり、緑色や黄色、赤色や黒色も使用されることができます。
レジスト材料の顔料にも特性があるようで、緑色はレジスト面積を比較的小さくできます。他の顔料では、あまり狭すぎるとレジスト剥がれが発生する可能性があります。
まあ、0.01~0.05mm程度の差ではあるのですけどね。
緑が多く使用されているためか、緑色のレジスト材料の方がコストが安い傾向にあるようです。
参考サイト
フレキの基本!メカ設計者から見たFPCとFFCの違いについて
https://temcee.hatenablog.com/entry/fpc_ffc
フレキシブル基板の長所と短所
https://www.atmarkele.com/articles/142
基板材料について
http://www.pbfree.jp/topics/c-101/
プリント基板の『FRグレード』とは?FR-1とFR-4の違いは?
https://detail-infomation.com/circuit-board-fr-grade/
プリント基板のソルダレジストの色について
https://www.fusionpcb.jp/blog/?p=198
プリント基板の色はなぜ緑色ですか?