無料で利用できる国立国会図書館デジタルコレクション
国立国会図書館デジタルコレクションを知っているでしょうか?
日本の最大図書館がインターネット上で閲覧できるのです。
今回は「人工衛星」と検索して、インターネット上から無料で閲覧可能な現状最古の情報を調べてみたいと思います。
国立国会図書館でのネットで閲覧可能な最古の書籍は岡山畜産便りである
人工衛星と名がつくものは、人工衛星が打ち上がる前から言葉としてあったのですが、ネット上で閲覧が可能な対象と絞ると昭和32年(1957年)の岡山畜産便りです。
早速抜粋しました。
オーストラリアの旅(15) 花 尾 省 治
オーストラリアの旅日記もここらで一応しめくくりにしたい。今一度旅の行路をふりかえって見ると東南アジア諸国のうちマニラ(フイリッピン)とボルネオのタラカン(インドネシア)に寄港しオーストラリア(シドニー,メルボルン,アデレード,ポートリンカーン)を歴航した。
今や世をあげて宇宙時代といった感があり,水爆実験,原子力発電,人工衛星,月世界へと飛んでいっている。しかし同じ地球でもまだ文明から切り離され未開発の資源にうずもれている後進国が日本の身近にある。それは豊な雨と日光に恵まれ緑の木々に包まれている東南亜の国で長い間の植民地でまだ独立後日もなお浅く若い国である。
これ等の国は今後日本と経済提携の緊密化を図らなければならない。特に農業においては原始的略奪農法を行っているので,その生産を高めるため日本の技術を導入し科学のメスを入れ後進熱帯農法の改善を営んでいる。
東南亜の島伝いに南下し島のつくるところにオーストラリアがある。南十字星の下で大きい国で,しかも新しい国である。気候は一概にはいえないが東海岸から南にかけて特に恵まれた地帯であり政治,経済,文化,産業の発達と,実にすばらしく豊かな文明国をつくりあげた。即ち1788年シドニーに上陸した最初の移民から200年を出ずして農業国として羊毛は世界一の座につき,小麦は4大輸出国の1つとなり,又牛肉,バターの輸出国として大きい地歩を占めている。ただ人口が尐なく面積が広いため従って農業は機械力にたよった農法を行っている。道路もすばらしくよく田舎道に到るまで鋪装され自動車の多いことも特徴の一つといえる。
岡山畜産便り. 昭和32年 (11・12月合併)
岡山畜産便り. 昭和32年 (11・12月合併) - 国立国会図書館デジタルコレクション
著者の花尾省治さんは、岡山県酪農連会長や参事を務めた方で、書籍当時の役職は不明です。
時世の一文として人工衛星を取り入れています。
1957年といえば、ソビエト連邦にて初の人工衛星の軌道投入やライカ(犬)の地球周回があげられ、文章の通り宇宙時代と呼ばれ、世界の大国同士の戦争から技術開発へと移った時代でもあることが分かります。
まあ、アメリカとソ連の戦争は回避されていましたが、他の地域での戦争は止まりはしなかったのですけどね。
畜産便りから、各国への研修・訪問であったことがうかがえます。
東南アジアの農業は、まだまだ日本の技術に遠く及ばない、支援が必要であること述べていると同時に、オーストラリアの文化レベルは高いことを述べています。
今でもオーストラリアは農業大国で、有機栽培を行っている面積は世界最大とも言われています。牛肉も、牛丼チェーン店である吉野家がオーストラリア産牛肉を使用していることを聞いたことがある人もいるかもしれません。
ちなみに、岡山畜産便りは一般社団法人岡山県畜産協会で発行されており、ネット上には復刻版が掲載されています。
http://okayama.lin.gr.jp/tikusandayori/s5001/197501.pdf
オーストラリアは2018年にオーストラリア宇宙庁を創設
文章にあったオーストラリアと、現在の宇宙の関係についてまとめてみましょう。
そもそも日本ではオーストラリアがニュースに出てくるのは、牛肉などの食料の輸入という話と森林火災があげられるのではないでしょうか。
オーストラリアの森林火災は気候変動に伴う乾燥によるものらしいです。
気象シミュレーションとしては気候変動により予測が難しくなる中で、現状を把握する最良の手段としては人工衛星からの画像取得が有効な手であるといえます。
実際、オーストラリア連邦政府の期間により、「Sentinel Hotspots」(あるいはDEA Hotspots)というプラットフォームが2003年に開発されており、火災の熱源を人工衛星の赤外センサーから取得し、ほぼリアルタイムに近い発熱状況を提供しています。
オーストラリアの宇宙部門は、オーストラリア連邦科学産業機構(Commonwealth Scientific and Industrial Research Organisation :CSIRO)と呼ばれるオーストラリア最大の総合研究機関の一部門で、宇宙部門の研究がされています。
「Sentinel Hotspots」も研究開発の成果の一つです。
また、オーストラリアの広大な土地を使用した国立の望遠鏡施設であるAustralia Telescope National Facility:ATNFを保有し、世界最大級の電波望遠鏡を持っています。
天文以外でも、深宇宙探査衛星と通信するためのNASAの追跡ステーションであるキャンベラ宇宙センターも存在しています。
そのほかに、宇宙との歴史とすれば、オーストラリアは1967年にWeapons Research Establishment Satellite(WRESAT)という人工衛星を打上げています。
オーストラリアは自国でのロケット製造はしていないのですが、ウーメラ試験場(Royal Australian Air Force Woomera Test Range: RAAF WTR)と呼ばれる場所を保有しており、非軍事の試験計画に使用されているようです。
日本に関係でいうと小惑星探査機「はやぶさ」の再突入カプセル着陸地点にも使われました。
2020年時点での近年のオーストラリアの動向としては、宇宙産業に参入し始めています。
CSIROの一部門であった宇宙部門ですが、独自の国際宇宙機関として、2018年12月11日にオーストラリア宇宙庁(Australian Space Agency:ASA)を南オーストラリア州アデレードに創設しています。2019年には、オーストリア連邦政府がアメリカの「月から火星へ」(Moon to Mars)探査計画に参画を表明しています。
もういくつか国立国会図書館の書籍から抜粋しようと思ったのですが、まとまりが悪いので、別の記事にまとめます。
参考資料
オーストラリア連邦科学産業機構
Australian Space Agency - Wikipedia
Australian Space Agency
https://www.industry.gov.au/strategies-for-the-future/australian-space-agency
https://twitter.com/ausspaceagency
Digital Earth Australia Hotspots
https://hotspots.dea.ga.gov.au/#/
オーストラリアの森林火災は、もはや人間やコンピューターが予測可能な範囲を超えていた
https://wired.jp/2020/02/26/australias-bushfires/
Open Data Cube
Canberra Deep Space Communication Complex
https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/01/6090c3179f495da1.html
オーストラリア政府がNASAの月探査計画に参加
https://crds.jst.go.jp/dw/20191107/2019110721630/
オーストラリア発見 2.第一産業
http://australia.or.jp/_old/discover/chapter02/002.html
オーストラリアの文化や習慣の特徴14選!これがオージースタイル!
https://world-note.com/australian-culture-customs/