インターステラテクノロジズのMOMO5号のクラウドファンディングが2020年5月2日に開始されました。
わずか1日程度で1000万円を集め、2020年5月5日の時点では2300万円を超えています。
いや、すごいです。本当にすごい。
もともとMOMO5号は2020年の1月に打上げるはずが延期して、2020年5月2日打上げる予定でした。
コロナウィルスが様々なところで様々な影響を振るっている2020年4月28日に中止の要請を受けたことに始まります。
日本の宇宙業界は長年、政府からの資金提供で成り立ってきました。
業界が生まれたのは1970年頃からでもう50年近いです。
宇宙専業は少ないかもしれませんが、関連する分野はすそ野が広く、電子部品や構体を形成する材料、カメラなどの光学機器や通信機器、並びに電源・電力機器やソフトウェアなど、製品に関わる分野でも数多くあります。
このように関連する企業がたくさんあるのですが、かなり陰に埋もれています。
単純に宇宙業界というと、生活に直結しているか実感しにくく、科学的探究事業であると思われがちな業界でもあります。
故にお金を集めるのが大変なのです。
お金を集めるには相手の理解が必要なのですから。
何に役立っているのか、何に役立つのか、ということから話し始める必要があります。
理解してくれたとしても、数億円規模という多額の支援が必要でもあるため、支援者も二の足を踏んでしまうのは当然です。
結果、政府の資金で活動していくことになります。
政府の資金=税金で動いているため、失敗しようものであれば、批判に当てられやすい業界でもあります。
人工衛星の搭載されたロケットが失敗した時は、ロケット製造組織の担当者や人工衛星組織の担当者はもうどうすることもできなかったと聞いたことがあります。
マスコミなのか、政府なのか分からないのですが、ある程度炎上が終わったときに、どうやら収まりが付き着きそうなところに落ちるまで待つしかなかった、公開裁判でひたすら謝罪しつつ、判決がでても控訴せずに粛々と受け入れるしかなかったといいます。
当時のJAXA関係の方々は、直接そのプロジェクトに関わっていなくても世間の風当たりが強かったといいます。
当時の印象がとても強く、非常にリスクの高い商品であると世間では考えられているため、政府以外からの資金調達を受けるということが難しい業界でもありました。
政府以外から資金調達が可能であれば、そこまでの批判を受けることもなかったのかもしれません。
しかし、当時は還元率が少ない組織で、独自性の高い技術が使われているため、融資をしても下手に口を出すことができず、コントロールもできない。
利益を出すには(おそらく)他の業界より時間がかかり、かなり苦労することが分かりきっています。
繰り返しますが、お金が集まりにくいのです。
そんな中で、2015年以降、アクセルスペースをはじめ、宇宙ベンチャー(宇宙スタートアップ企業)での資金調達の話を聞いたときは驚いたものです。
すごいブレインが居たものだと。
宇宙業界の政府以外からの資金調達は2020年現在でも5年という短い歴史しかない世界なのです。
資金調達の中には、企業や個人投資家からの投資の他にクラウドファンディングがあります。
個人で数億円を動かせる人は限られています。
今まで宇宙業界を支援したいと思っていても、数億円という規模、手が出るはずがありません。
しかも宇宙には興味があっても個人に何ができるか分からない。
そんな状態だったものが、今はリターンという結果が残りつつ支援ができるクラウドファンディングという環境があらわれました。
クラウドファンディングは一般の方にも支援してもらうため、目新しい技術好きの人はもちろんですが世間の関心の強さが数字となって見えるものです。
個人的に宇宙業界では「リーマンサット」と呼ばれるサラリーマンが開発した超小型衛星開発のプロジェクトで成功したことを覚えています。
インターステラテクノロジズは、2017年に打ち上げたMOMO初号機からクラウドファンディングを使用しています。
結果は次の通り。
MOMO初号機は、735名から総額2700万円
MOMO2号機は、924名から総額2800万円
MOMO3号機は、1,173名から総額1981万円
MOMO4号機は、557名から総額974万円
MOMO5号機は、522名から総額1028万円(2019年11月時点)
なかなかの金額を集めていると思いがちですが違います。
比較になるか分かりませんが日本のロケットの打ち上げコストを並べると、MOMOがどれだけ低価格で頑張っているか分かります。
もちろん、いくらかインターステラテクノロジズからの持ち出しがあるはずなので、正確には比較できませんが、どちらにせよ、 いろいろ工夫しているとはいえまだまだ資金不足な状況なのです。
そんなこんなで支援の結果、2019年にMOMO3号機は目標の高度113kmの宇宙空間まで到達しました。
その後、クラウドファンディングの結果を見るとMOMO3号機が成功したことで、挑戦しようという気概が薄れたのか、数か月後のMOMO4号とMOMO5号であまり金額が集まらなくなっていました。
その中で延期に次ぐ延期が起きました。
創業者の堀江貴文さんが2020年5月2日に上げた動画を見ると苦渋な感じがにじみ出ているように見えました。
正直、MOMO4号機やMOMO5号機(2019年11月)のことと合わせて、コロナウィルスによりクラウドファンディングの支援者の収入も減っている中、普通に考えて厳しいよね、と動画を見て思っていました。
動画にもありましたが漁業関係からすると、ロケットが打ち上がるときは休業しなければいけないので、数日分の稼ぎが無くなったり、海上で漁業の道具に落下してしまうと、補償もしなければいけなくなりかもしれません。高高度に上げるため飛行機や船舶、自衛隊や海上保安庁などの関係省庁と調整しなければなりません。
とても大変なんですね。
ちなみに、北海道大樹町に限らず、JAXAが持っている種子島宇宙センターで打上げるときも同じですし、現在和歌山県串本町田原で建設中のロケット会社「ワンスペース」でも同じになります。
そんな厳しい中でロケット打上げは常に戦っているのです。
今回のクラウドファンディングは、今が大型連休中で、外出もできないためネット環境が近かったという条件が重なっていたとはいえ、1日程度で目標金額を突破したのは、驚きの一言です。
しかも支援人数が今までの倍に迫る勢いで増えています。
今回は金額というより支援者の数に驚きを隠せません。
コロナウィルス騒ぎの相次ぐ休業でいろいろなことが停滞することへの反発かのようにも思えます。
MOMO5号がMOMO3号機のように成功することを願っていますが、例え失敗したとしても引き続き支援が続けばと思います。
クラウドファンディングの支援者をFANCLUBに誘導したりすればいいのだけど、、、まあ、その辺は当事者が考えるでしょう。
安定した利益が出るのも、安定してロケットが打ち上がることに始まり、ユーザーの観測機器を搭載することでデータの取得したり、人工衛星の打上げ費、宇宙を使った付加価値の提供(MOMO5号 特設ページ)とか、まだまだ年単位でかかりそうなのですね。
一時期、停滞感があった宇宙業界を盛り上がっていけばと思います。
個人としては宇宙業界から離れた身ですけどね。
ロケットの必要性についてはこちら
今後の計画についてはこちら
MOMO3号機の様子は次の通り。
参考
【新型コロナに負けない!】インターステラテクノロジズは宇宙開発をあきらめない!!
https://camp-fire.jp/projects/view/273150?list=popular_rewards
観測ロケット「MOMO5号機」打上げ延期のお知らせー無観客のロケット打上げ、大樹町からの自粛要請を受け、GW中の打上げ延期を決定
http://www.istellartech.com/archives/2941
手の届く宇宙へ、夢追いサラリーマン達が人工衛星を飛ばしたい
https://readyfor.jp/projects/rymansat
「再び宇宙へ!みんなと宇宙兄弟のチカラでMOMO5号機を宇宙に送ろう!」
https://camp-fire.jp/projects/view/202761
みんなの力で宇宙から夢の折り紙飛行機を飛ばそう!
https://camp-fire.jp/projects/view/163339
宇宙ベンチャーの資金調達!国内・海外宇宙ビジネスの調達方法と実例まとめ【2019】
インターステラテクノロジズ株式会社 – Interstellar Technologies Inc. サウンディングロケット MOMO
http://www.istellartech.com/technology/momo
インターステラテクノロジズ ウィキペディア(Wikipedia)
MOMO 5号機 特設ページ
http://www.istellartech.com/technology/momo5_2020
https://president.jp/articles/-/28633
小型ロケット「イプシロン」が切り開く宇宙ベンチャー振興の新時代
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