空気の密度と火星の大気
空気の密度を考えたことがあるでしょうか。
もしかすると高校時代に習っていたり、大学入試で勉強したり、大学で少し詳しく学んでいる人もいるかもしれません。
地球の空気密度は世に出回っているでしょうから、火星の密度を考えていきます。
しかし、小難しい数式は出てきませんので、計算したがりの人はごめんなさい。
空気の密度は、乾燥状態の0℃、1atmにおいて1.293kg/m^3です。
もちろん、理想気体の状態方程式を利用して算出された値です。
これは地球の大気組成の78%である窒素(N2)の密度に近い値であり、地球の大気組成21%である酸素(CO2)の密度など、地球の大気組成の密度に非常に近い値です。
N2の気体密度(0℃、1atm)、1.25kg/m^3
O2の気体密度(0℃、1atm)、1.977kg/m^3
それは、ここでいう空気とは地球の空気であり、地球の空気は地球の大気組成に等しいからです。
そこで火星の大気はどうでしょうか。
火星の大気組成は、95%がCO2で、3%がN2と言われています。
したがい、火星の空気の密度は、乾燥状態の0℃、1atmにおいて1.247kg/m^3程度となります。
ネット上では最新のデータと過去のデータが混在しているため、調査時を考慮するとややこしいのですが、2012年8月に火星に着陸した火星探査機ローバーであるCuriosity(キュリオシティ)によると、季節によりその組成も変わってくるといわれています。
詳細な大気組成の分析結果はのちのち解明されていくことでしょう。
そもそも火星に季節があるということも初めて聞いたかもしれません。
火星の自転軸が太陽との公転軌道に対して25度傾いているために、時期によってその環境を変えています。
太陽の周りを687日間かけて一周し、一日の長さである自転周期も24時間39分と地球と違います。
火星の重力は地球と比べて40%程度で、引力が関係しているのか、大気も薄く地球の0.75%程度と言われています。
気温も赤い星ではありますが、大気が薄く、保温機能も低いためか、火星表面の最高温度が20℃程度と言われています。
火星表面の最低温度は-140℃といわれており、気温差163度にもなります。
地球の衛星である月の場合ですと表面温度は、最大110℃から最低-170℃と変化することから、気温差280度となります。
気温差だけを考えれば、月より火星の方が熱衝撃という観点で、物体への耐久が低くても問題なさそうですね。
ただし、火星の場合は常に寒いという問題が付きまとうことになります。
逆に、火星にしろ、月にしろ、-160℃まで低くなれば、ビスマス系高温超電導材料(-163℃)とか使用できるのですが、難しいものですね。
空気抵抗と空気密度
空気の密度は、乾燥状態の0℃、1atmにおいて1.293kg/m^3
火星の空気の密度は、乾燥状態の0℃、1atmにおいて1.247kg/m^3
もちろん、理想気体状態ではありますが、地球と火星とでは空気密度がほとんど違うと思いがちですが、前述した通り、地球と火星とでは大気圧が違います。
地球の標準大気圧である1atm=101.325 kPaに対して
火星は750Pa程度しかありません。
ボイル・シャルルの法則により圧力と密度は比例の関係があるため、
圧力が2倍となると、密度も2倍となり関係が成立しています。
火星の空気の密度は、乾燥状態の0℃、750Paにおいて0.009230kg/m^3となります。
空気密度が低くなるとどうなるでしょうか。
生物的な問題はともかく、物理的には空気密度が低くなると、空気抵抗が減少します。
空気抵抗が小さいと、同じ力でも弾丸の飛距離が伸びます。
新幹線が空気の壁で、速度が遅くなったり、機体の強度を強固にする必要もなくなります。
車でもそれなりの速度は出ますが、大気組成が違うために地球の酸素を取り込む方式のエンジンは、地球よりも能力を発揮できない可能性があります。
飛行機になると、速度が出るかもしれませんが、気圧が低くなることにより揚力が落ちるために上昇する力が落ちていく可能性があります。揚力は完全に解明されていないので予想ではありますが。
パラグライダーの場合ですと高地から滑空した時の滑空時間が伸びます。
パラグライダーではなく、パラシュートの場合はどうでしょうか。
火星の重力でゆっくり落ちるかと思いきや、気圧が低いため、重力と反する力を得るためには空気を受けるために、地球より巨大な帆を作ることになるかもしれません。
空気抵抗が低いことで、終端速度が地球よりも早くなるため、下手をすると開かずに落下することもあり得ます。
ただし、落下したとしても、重力加速度は地球より小さく、落下した物体の重量も軽くなるため、位置エネルギーや運動エネルギーは小さくなります。計算するとさほど変わらないかもしれませんが。
国際宇宙ステーションのように、火星で居住可能なステーションができればそのような試験もできるかもしれません
探査機では、長期で地に足の着いた探査が行われることが多いですが、理論的に想定できるけど実験的な試みを考えるのも良いかもしれません。
火星の第一宇宙速度は分からないけど、観測衛星が周回する場合、地上との交信は大気がない分、今まで以上に小さいアンテナで対応できるかもしれません。
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参考文献
火星ってどんな惑星なの?
https://www.nao.ac.jp/astro/basic/mars.html
燃費を考えてみました-その2
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/macchann/hiroshi/nennpinokousatu2.html
火星の大気を考える
http://planet.jpn.org/planet/mars/air/mars-air.htm
NASA、探査ローバーで火星の大気組成を解明 謎が残る酸素量の変化
https://www.zaikei.co.jp/article/20191117/540021.html
技術資料 気体編1-1.
https://ryutai.co.jp/shiryou/gas/gas-01.htm
火星ってどんな惑星なの?
https://www.nao.ac.jp/astro/basic/mars.html
驚愕!寒暖差は280℃知られざる月の表面温度
https://weathernews.jp/s/topics/201804/080065/
火星への移住は無理だった? そこに「大気」はつくれない、という研究結果
https://wired.jp/2018/08/10/co2-terraforming-mars/
40億年前の火星は厚い大気に覆われていた – 隕石を手がかりに火星環境大変動の謎に迫る
https://academist-cf.com/journal/?p=5937
大気の組成の謎- 地球と惑星の比較から -
https://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~keikei/enlighten/atmos.html
いまのところ原因不明。火星大気中の酸素量は予測以上に変動していた
https://sorae.info/astronomy/20191114-curiosity.html
太陽からの紫外線が火星の大気散逸に及ぼす影響
https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/9723_mars
火星の表面温度は?大気はどうなっているの?
火星、13の驚くべき真実 ── インサイト、着陸成功!
https://www.businessinsider.jp/post-180150
第9回 宇宙から帰ってくるとき燃えるのはなぜ?
終端速度
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%82%E7%AB%AF%E9%80%9F%E5%BA%A6
自動車における空力開発と取り組み動向