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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

衛星画像のキャリブレーションの仕方をまとめてみました【宇宙機とミッション】

衛星画像は素のままでは使用しないことが多い

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-PIA13281

 

人工衛星から取得された衛星画像はそのままでは使用できません。

 

実際のところ地上で使用されているデジタルカメラも同じなのです。

デジタルカメラはカメラ内部で処理を行い綺麗な画像を出力します。

人工衛星から取得された衛星画像も同様に処理を行う必要があるのです。

 

今回は衛星画像とキャリブレーションの話です。

 

 

JAXAの記事の一文を見てみましょう。

 

一般に衛星が取得する観測データには、ノイズや縞が入っていたり、センサの地球を見る方向や地球の自転などの影響で歪(ゆが)んでいたりします。一例を挙げますと、真っすぐな道が歪んだり、平面が曲面に見えるといったようなことがあります。その歪みを補正し、ノイズを除去してデータを正しくすることを専門用語でキャリブレーションと言います(中略)

キャリブレーションは基本的にコンピュータの中で行いますが、その処理をする数式を開発するのも私たちの仕事です。その数式の組み合わせをアルゴリズムと言いますが、衛星の劣化に応じてアルゴリズムを書きかえ、映像データの品質が落ちないよう調整します。私たちが年齢とともに耳が遠くなったり、目が悪くなったりするのと同じように、人工衛星も、打ち上げ直後の状態と、半年後、1年後、3年後では特性が異なり、観測画像も劣化していきます。過去のデータと見比べて、衛星の感度に変化がないかどうか、劣化してきていないかどうかをモニターし、感度劣化が判断された時には、既存のアルゴリズムの修正や、新しいアルゴリズムの開発を行います。
さらに、キャリブレーションが終わったデータを使って、地球環境の変化を抽出するとか、地震災害場所の抽出をする等の解析業務を行います

 

島田政信~衛星からのデータ解析で世界に貢献を~

http://www.jaxa.jp/article/interview/no20/index_j.html

 

正直、ほとんど完結してしまうほど、分かりやすい文章ですね。

ですがキャリブレーションはこれだけではありません。

 

ここで記載しているのは幾何学キャリブレーションです。

 

実践カメラキャリブレーション ~カメラを用いた実世界計測の基礎と応用~

https://www.slideshare.net/SSII_Slides/ssii2019ts3-149136612

 

幾何学的なキャリブレーション以外に、撮影対象である地球の表面の反射率や放射輝度、大気条件を取得することで、撮影データのキャリブレーション(補正)を行っています。

 

反射率や放射輝度を取得し合成処理に掛けることで、人間の見た状態と同じ、自然に近い色合いと言われる合成された画像をTrue Color(トゥルーカラー)合成といいます。

合成処理の仕方によっては、植生分布に用いることが多いFalse Color(フォールスカラー)やNatural Color(ナチュラルカラー)と呼ばれる処理が行われます。

 

前者のような幾何学キャリブレーションを幾何補正(Geometric Correction)、後者のようなキャリブレーションを輝度較正(Radiometric Calibration)と言います。

AMICAデータ解析

 

衛星のカラー画像の分析の場合は、幾何補正で下地を作り、輝度較正を行う必要があります。

衛星画像を販売店から購入して使用する場合、多くは幾何補正済みなことが多く歪みが少ない製品が提供されます。

したがい、幾何補正は人工衛星の画像を取得し、加工するエンジニアでなければあまり知られる手法ではないかもしれません。

市販のカメラもレンズにより歪みを減らしたり、内部のソフトウェアの処理で歪みを低減しているため、魚眼レンズといったレンズを使用しなければレンズに歪みがあると意識することもないかと思います。

ただ幾何補正は、人工衛星以外にも航空写真でも使用されるために航空写真での文献からも分かる通り、情報としては多くweb上に広まっているのではないでしょうか。

 

 

 

 

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参考文献 

www.google.com

 

ランドサットミッション 校正と検証

https://www.usgs.gov/land-resources/nli/landsat/calibration-validation?qt-science_support_page_related_con=2#qt-science_support_page_related_con

 

絶対放射キャリブレーションは画像科学に不可欠なツールですが、それは何ですか?

https://blog.maxar.com/earth-intelligence/2020/absolute-radiometric-calibration-is-an-essential-tool-to-imagery-science-but-what-is-it

  

キャリブレーションにより、衛星機器によって生成された対応するデジタルカウントから、地球ターゲットの実際の放射輝度を計算できます。

https://www.eumetsat.int/website/home/Data/Products/Calibration/index.html

 

ALOS搭載のPRISMおよびAVNIR-2の初期キャリブレーション結果と精度評価

https://www.jstage.jst.go.jp/article/rssj/27/4/27_4_329/_article/-char/en

 

ミッション機器、打ち上げ、運用、レベル1処理を含む衛星

https://www.jstage.jst.go.jp/article/rssj/39/1/39_14/_article/-char/en

 

衛星搭載光学センサの放射量校正

https://www.jstage.jst.go.jp/article/rssj/36/3/36_256/_pdf/-char/en

 

第一期水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W1)の概要と初期校正検証結果

https://www.jstage.jst.go.jp/article/rssj/33/4/33_274/_pdf/-char/en

PRISM/DSMモザイクの作成と評価

https://www.jstage.jst.go.jp/article/rssj/33/2/33_126/_article/-char/en