往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是

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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

【宇宙機と寿命】人工衛星の破壊は

デブリが、ゴミが、というのは聞き飽きているし

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人工衛星で、最近よく言われることはスペースデブリです。

 

デブリは宇宙空間に浮かぶ金属の塊です。

正確には金属の塊というより人工物の塊です。

 

軌道上にいって、コインを軌道上に投げれば、それはもうデブリになります。

人工衛星機器にはじまり、鏡やボルト、フィルムあげればきりがありません。

 

スペースデブリ人工衛星の違いはなんでしょうか。

 

軌道上で飛んでいるところを見るとそんなに違いはありません。

 

ただ、地上と通信ができること、あるいは通信ができなくてもデータを取得できるなどの目的を持ったものを人工衛星としています。

 

目的を失ったものはすべてスペースデブリといえます。

スペースデブリ人工衛星に衝突したという事例は少なからず残っています。

 

1996年 フランス軍事観測衛星CERISEにアリアンロケット破片が衝突、ブーム損傷。
2009年 米国の通信衛星イリジウムに使用済みロシア衛星が衝突、大破。
2013年 エクアドル小型衛星NEE-01 Pegasoに旧ソ連ロケット破片衝突。高速回転し衛星通信途絶

  

といっても、常に宇宙空間にいるわけではありません。

地球の軌道上でも微重力が発生しているため、緩やかに地上へ落下していきます。

地上に落下すると何が待ち構えているのか、大気です。

 

地上に落下する際に、高速で落下し、大気とぶつかります、

大気とぶつかり、空気を高速で押し続けることで空力加熱あるいは断熱圧縮が発生し、物体が昇華します。

固体からほとんど一気に気化してしまうのです。

 

大気圏再突入用のカプセルが白い理由は、外側からの熱の吸収を防ぎ、外部へ熱を放出するためです。

 

 多くの人工衛星は、常に重力によって落下しているのです。

 

参考 

人間が出した「宇宙のゴミ」8選:小さくても破壊力絶大なゴミが大量に|WIRED.jp

WEB版『航空と文化』 日本航空協会 「空の安全をずっと続けるために~JAXA DREAMSプロジェクトの紹介」

ますます深刻化、宇宙ごみ問題 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

良く聞かれる質問:スペースデブリ(仮訳):文部科学省

スペースデブリに関してよくある質問(FAQ)|JAXA|研究開発部門

SpaceXが打ち上げたインターネット用衛星が気象観測用の人工衛星と衝突未遂 - GIGAZINE


衛星のロケットによる粉砕問題

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人工衛星を破壊する実験、何回も実施されています。

人工衛星を破壊する兵器をAnti-SATellite weapon(ASWT)と呼んでいます。あるいはキラー衛星とも呼んでいます。キラー衛星と呼ばれるくらいなので、人工衛星かと思いきや、ロケット・ミサイル・レーザーなんですね。

 

始まりはアメリカ空軍が1958~1959年に12回実験を行ったことにあります。すべて失敗に終わっていますが。

1959年10月に人工衛星の一部を掠めたというアメリカ空軍の実験結果(WS-199ボールド・オライオン計画(Bold Orion))で成果を出しています。

その後、1970年にソビエト連坊が世界で初めて、人工衛星に成功します。

 

キラー衛星はミサイルのほかに、レーザー兵器なども検討されるようになっていきます。

 

近年では、2019年3月にインドのミサイルによって、インド自国の人工衛星を破壊しています。

 

アメリカ以外に、キラー衛星を持っている国は、インド、ロシア、中国といわれています。

 

中国の2007年に実施した人工衛星破壊が、比較的よく知られているミサイルの人工衛星破壊実験なのですが、それより以前から実験が行われていたんですね。

 

人工衛星を破壊する理由の一つに、ヒドラジンと呼ばれる有毒物質を積んでいることを挙げています。

少なくとも、2008年に実施された計画(Operation Burnt Frost)により制御不能になった人工衛星(USA-193)の破壊を行ったときの理由は、地表に有害物質をまき散らさないためだとか。

 

参考

Anti-satellite weapon - Wikipedia

Исторические сведения "Истребитель спутников" - программа

US shoots down toxic satellite | The Daily Telegraph

Operation Burnt Frost - Wikipedia

Pentagon plans to shoot down disabled satellite - Reuters


単なるお約束になっているかもしれない25年落下問題

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Credits: NASA

人工衛星を25年以内に落下させなければならないということは国際ルールにはないのです。

 

そもそもそんなの知らないよ、というのは置いておきます。

 

人工衛星を25年以内に落下させなければいかない理由は、国際機関間スペースデブリ調査委員会(The Inter-agency Space Debris Coordination Committee:IADC)のガイドラインに端を発しています。

 

ガイドラインは、国際宇宙平和利用委員会(UNCOPUOS)に提示され、2007年に合意されています。

ただあくまで、行動規範としてのガイドラインなのです。

 

日本の宇宙活動法においても、このガイドラインを参考にしています。

16 軌道上デブリ発生の抑制
・軌道上デブリとなるものの発生については、次のとおり対策を講ずること。
① ロケットの軌道投入段について、指令破壊用火工品の誤作動防止措置を講ずること。
② 推進薬が液体燃料であるロケットにあっては、なるべく残留推進薬、残留ガス等を排出する
とともに、排出が完了しない場合にも破砕することがないよう、内圧上昇に対して安全弁の設置等の措置を講ずるか、安全性を設計で確保すること。

人工衛星等の打上げに係る許可に関するガイドライン

ただし、落下に対するルールはなく。デブリを増やさない対策を取ることとしています。

 

人工衛星を25年以内に落下させる理由は、使い終わった人工衛星をなるべく早く地表に落下させ、軌道上の空路を開けるためです。

 

 

おそらく国際機関が打ち上げるロケットや人工衛星は25年以内落下のルールが適用されるでしょうが、民間で打ち上げるロケットや人工衛星はどうでしょうか。

 

どうなんでしょうね。

 

さて、もし、もっとまじめにデブリ問題を話すのであれば、IADCやJAXAの宇宙状況把握(SSA)を調べてみることをおすすめします。

 

参考

IADC - International Association of Drilling Contractors

JAXA | 宇宙状況把握(SSA)システム

欧米の宇宙状況認識(SSA)の現状と今後の動向に関する調査研究