往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是

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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

【宇宙機とノイズ】人工衛星のノイズが影響するものは

ノイズは、自分の人工衛星とロケットのため

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宇宙機においてノイズはどういう存在なのでしょうか。

 

ジャミングという言葉を聞いたことがあるかと思います。

人工衛星も類にはもれず、ノイズはジャミングとなり主に通信関係で邪魔になります。

ノイズとは雑音とも訳されるように、必要な信号を埋もれさせます。

 

例えると、都会のスクランブル交差点や学校の休み時間、大学の食堂の中心でイヤホンしながら音楽を聞く状態です。雑音にまみれて音が聞き辛く、音量を上げるでしょう。

 

 

人工衛星も同じです。

ノイズに邪魔されない様にするには信号の出力を上げなければいけません。出力を上げるとちょっぴり電力を上がり、別の受信箇所に影響するノイズが発生するかもしれません。

 そこで止まるのは、各電子部品の性能であったり、発熱量であったり、大きさで結局は制限が来て、合わせるようにしていくしかありません。

 

ノイズと人工衛星に限らず電子機器はもぐら叩きと言われます。

どこかをつぶせば、どこかで出てきてしまうことになります。

 

さて、人工衛星は、ノイズが人工衛星自身に対してどの程度影響を与えるかを考えていかなければいけません。

しかし、人工衛星に関わるノイズの事象は他にもあります。

 

それは他の人工衛星に対してでしょうか。

人工衛星同士はかなり離れておりために、お互いに干渉することはとても少ないです。

中継衛星と言われる、電波を中継する用の人工衛星ならばともかく、可能性は少ないです。

 

もしかするとジャミング用の人工衛星の開発とか考えられたかもしれませんが、そうなると、ジャミングを発生させるには高出力の電波送信能力が必要になります。

ジャミングが出ると、発生させた人工衛星自身もコントロールが効かなくなる可能性が高く、1発切りのミサイルと同じになってしまいます。

コスト的に考えると、ミサイルをぶち当てた方が安くしみます。

 

では他に何があるでしょうか。

 

人工衛星を打上げるミサイルであるロケットに影響を及ぼします。

 

ロケットは人工衛星を目標とする軌道に放出するために、打ち上げ後地上からコントロールをしています。このコントロールに電波を使用していますし、ロケット内部にもいくつかの制御部(パソコン)が搭載されています。

 

ただ、最近はコールアンドレスポンスでコントロールしていたロケットですが、全自動AIにより、だいだいのコントロールに電波を使わないこともあります。

だた、ロケットはミサイルと違い、人が居るところや、異常な動作をした場合に、緊急時爆装置が必要となります。

 

海外のロケットの規定はわかりませんが、日本国内でロケットを打上げる場合は自爆装置が必須となります。

 

その電波と、人工衛星の発生する電波が干渉したらどうでしょうか。

 

自爆できず、人的被害が発生してしまいます。

爆薬を積んでいないけれど、鉄の塊が高度数百メートルから落下するのです。

 

人工衛星のノイズに対する要求は、人工衛星自身はもちろん、搭載するロケットからの要求もあります。

 

ノイズを止めるには

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ノイズの発生源としては、だいたい次のようなものが挙げられます。

 

電子部品や電子機器の熱

信号線と電源線が近いことにより、強い電磁場を持つ電源線の影響

電力管理機器の発生する電磁場

ミッション機器の発生する電磁場

 

電力を多く使う機器には、強い電磁場が発生します。

もぐら叩きと言われるのは、最初に強い電磁場を抑えていっても、あとから、今までは強い電磁場に隠れていたけれど、ピンポイントに発生している電磁場・電波が影響する場合もあります。

 

人工衛星の性能が高くになるにつれて、受信機能が繊細になればなるほど、今まで隠れていたノイズの影響に悩まされます。

 

車載機器でも行われることなのですが、電波試験室であるシールドルームにて各機器あるいは主要な電磁場を発生させる機器のノイズを測定します。

 

シールドルームを使用するのは、機器のノイズを測定するのに、外乱のノイズか機器のノイズなのか切り分けるためです。

 

このシールドルームではノイズあるいは電磁場、他にはアンテナパターンも測定することが可能です。

 

磁場とかは、電波は金属などの遮蔽物があると、反射を起こすため、シールドルームで測定する際にも、金属以外のプラスチックや木材(表面コーティング)などで固定治具を作る必要があります。

固定せずとも、吊り上げて測定することもあります。

 

もし、金属を使用してしまったり、周囲にノンフライト品の金属が残っている場合は、再測定するか、影響を解析や実測で判断する必要があるので注意が必要です。

 

ノイズはほんの小さな隙間からも拡散することが知られています。単なる落し蓋のようにしていても隙間から漏れ出てしまいます。

コネクタのプラスチックで作られているインシュレーション、コネクタピンの隙間からも漏れ出る可能性があるため、シールドコネクタを使用して、電子機器から外部へ逃げ出さない様にしています。

 

まさか、自分の発生したノイズで機器が壊れることはないでしょう。

それは単体試験で確認して問題ないと思いたいですね。

 

参考

news.mynavi.jp