シリコーン系の接着
シリコーン接着剤は、人工衛星でなくとも使った人は多いと思います。人工衛星でも使用されることは多いです。
人工衛星ではエポキシ系とシリコーン系の2つがもっとも使われます。
エポキシやシリコーン以外にもアクリル系やブタジエンゴム系、ニトリルゴム系など世の中には接着剤がたくさんありますが、この二つが謁見しています。
シリコーン接着剤が宇宙で使われる理由は、高温に強く、紫外線に強いのが理由です。
宇宙環境は、周回衛星の場合、一日に14回以上の地球を回転します。
地球を回転しているということは、昼と夜を何回も繰り返しているということなんですね。
宇宙空間では大気による保護がないために、太陽光の直射日光が、地球にいるよりダイレクトに影響をうけます。
人工衛星の温度も、場所(主に太陽電池セルパネル)によっては100℃近くからマイナス120℃近くまで温度が変化します。
すなわち耐温度特性が良くないといけないんですね。
同じく宇宙空間では、太陽光からの紫外光を直接受けるために、耐紫外線特性が高くないといけないんですね。
全般的な特性として、シリコーン接着剤は宇宙で使いやすいんですね。
シリコーン接着剤は、様々な接着剤メーカーで製造されているのですが、その中でも宇宙特有の要素は必要になってきます。
一つはオフガスという、真空状態で発生ガス量が少ないことが必要です。
ガスが発生してしまうと、他の物質に付着したり、接着剤内にガスが発生して接着力が落ちてしまいます。国際宇宙ステーションの中だと意識的に放出しないとずっと留まり続けてしまいます。
さらに、目的によって高い絶縁性と持つことも必要です。漏電や短絡を防いだり、することができます。一見電気が流れていない様に見えても、流れる危険性を見出してしまったら、保護するしかありません。保護の方法は主にポリイミドテープか、シリコーン接着剤になります。
保護するという目的では、粘性が高いことも必要です。粘性が高いと保護する場所が局所的になり、他への影響を少なくできる上に、必要な接着剤の量も減らすことができます。
あとは熱伝導性が良いということですね。熱伝導性が良いということは熱が流れやすいのです。熱が流れやすいと、局所的な熱が発生しにくく、熱を分散させることができます。人工衛星の熱のコントロールを考えた時に、局所的な熱のコントロールはとても難しいのですが、熱を分散させるということは熱の経路のコントロールがしやすいのです。
そんな理由で、シリコーン接着剤が使われています。
シリコーン接着剤以外の宇宙に関わる製品
突然ですが、シリコンとシリコーンは違います。シリコンは金属ケイ素という物体を指します。シリコーンは、金属ケイ素を利用して、化学結合による化合物をシリコーンと言います。
ですが、宇宙業界にはあまり化学の人が居ないため、あまり区別していないことが多いのです。シリコンでもシリコーンでもどちらでも言葉が通じますし、なんあらシリコンと呼んでいる人が多いです。
シリコーン接着剤以外のシリコーンですが、次に有名なのが太陽電池セルです。
太陽電池セルは単層/多層/薄膜シリコン太陽電池といったシリコンを含んだ太陽電池があります。
最近ではGaAs(ガリウムヒ素)の太陽電池もありますが、まだまだシリコン太陽電池は多く使われています。
次に、熱フィラーシートや熱フィラーパウンド(グリース状物体)にシリコーンが使われています。熱フィラーシートは、いわゆる放熱シートです。
他にもシリコーンが使われている製品があるかもしれませんが、主要な製品は上記の二つ、太陽センチセルと熱フィラーシートですね。