往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是

往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是 宇宙blog

人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

【宇宙機と使用具材】トレーサビリティと材料証明とロット

トレースするために必要な情報であるロット番号

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過去からの人たちはどうやって気づいたのか、電子部品の性質はロット(Lot)によるところが少なからずあるらしい。

 

電子部品でロットと呼ばれるのは、ある単位で製品を生産している区分となります。

電子部品によっては流行り廃りがあり、毎日製造しているとは限らないのです。

多量に生産した部品で需要以上の部品を製造してしまったり、計画的に製造する量を調整して保管したりするなど、同じ部品で、同時に購入したとしても、保管期間が違ったり、倉庫の関係で保管地域が変わったりします。

 

これらを管理する単位をロットと言います。

これが宇宙業界で出てくるロット、いわゆる製造あるいは生産ロットと呼ばれるものです。

 

業界が違えば、ロットの意味合いも違います。

購入ロットといい、購入者が最小単位で購入できるロット。例えば、乾電池は1本で販売されることはあまり見ません。店舗では2本、4本、12本などとセットになっているかと思いますが、これを購入ロットと呼んでいます。

最小ロットといい、販売者側が販売する最小個数があります。多くの場合は販売者側の利益が発生する分の数をいいます。製造ロットに近いですが、製造ロットは最小個数から生産可能な最大個数を含めているため、定義としては広いです。

 

では一般に、というか企業であっても、製造ロット限定で購入できるところは多くありません。

 

最小ロットが少なく十分に管理されている場合は、製造ロットで提供できます。しかし、単価も安く大量製造品である電子部品の場合は、販売側からするとロット番号の管理するにはコストがかかりすぎてしまい、薄利多売な製品であれば、利益を損なってしまいます。

 

そのような場合に製造ロットで購入するにはどうすればいいのか、少し多めに購入して購入者側でロット管理をするしかありません。

 

ロット管理で影響があるのは

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先に記載した通り、先人たちはロットごとに性質が違うことを発見しました。

もちろん同ロット内でも性質が違うのに、ロットが違うだけで、さらに性質が違うのです。

 

その性質は主に電気的性質です。

 

よく言われるのは宇宙線に曝されたときの耐性です。

宇宙線の影響を受けやすいか受けにくいかに違いが表れます。

 

他にも通信信号や電流・電圧の調整幅が違います。

電子部品は常温で、性能の差を確認しているのですが、低温や高温で挙動が変わるということも考慮に入れておかなければいけません。

その時に、交換部品として同ロットにしたり、代替品を新たに購入したりすることを考えると、なかなか試験が進みません。

この辺りは地道に試験していくしかありませんね。

なんでこのタイミングで、電子部品同士のかみ合わせの悪さがでるのかと思うタイミングで出ます。

このタイミングというのも、従来製造していて、不具合も発生したことがなく、ロット管理をしていても、電子部品の組みわせが悪いと不具合は発生してしまいます。

 

ほんのわずかな差で、異常なデータを検知することだってあります。

 

プロジェクトによってはすぐに交換をするという判断もあれば、次号機に開発することが決まっていれば、開発と並行して、次号期以降の対策を考えたりします。

高温・低温で発生した不具合に対しても、高温・低温にするのはコストと時間がかかるため、常温での特性を分析し、事前に防げる案を検討します。

 

もちろん、部品の交換や改修が容易にできる設計であれば、分析せずに、管理のみで進めることは可能です。ただし、部品の交換や改修が容易にできる設計とは、汎用性が高いために、基板の面積が大きかったり、枚数が多かったりするので、一長一短ではあります。

 

電気設計の中では、電子部品が部品をトレースする道具であれば、機械設計の中で材料証明及びミルシートが材料をトレースする道具になります。

 

金属の材料証明で、神戸製鋼が一時有名になりましたが、ギリギリの設計をしている業界ではかなりシビアな問題となります。

宇宙業界ではマージンを多く考慮しているために、強度不足ということはなかなか起こりませんが、ミッション機器は案外ギリギリの強度であることが多いので注意が必要です。

 

さて、材料証明とミルシートの2つを上げましたが、ミルシートは材料証明の中の一つであり、主に金属材料のことを示すことが多いようです。

 

材料証明は、製品の品質を保証する資料であり、加工業者や材料メーカーから発注する際に有料であることがあります。あるいは、材料証明を発行しないために、仕様以上の品質は保証しないとすることもあります。

 

材料証明の数値は、実力値であるため、仕様の数値より高いのです。

 

ロケット振動で、人工衛星の一次構造が破損しないことを確かめる際に、マージン考慮値、JISなどの一般値、公称仕様値などと比較していくのですが、最後の手段に出てくるのが材料証明あるいはミルシートの数値となります。

 

これを突破してしまうと、ロケット振動で壊れないことが証明できなくなるために、強度的な補強をする必要が出てきます。

 

そもそも、なぜ基本設計や詳細設計をしていく中で、強度を越えてしまうのか。

 

その理由として、設計・解析ミスはありますが、インタフェースの勘違いにより受ける静荷重値の方向を間違ったり、ロケット及びロケットインターフェースの変更にあります。

 

特にロケットの変更は、負荷される荷重が変わるために、プロジェクトの考え方によっては、機械環境試験の再試験を行うこともあります。

再解析により、再検討・再設計というパターンもあります。

 

特に小型衛星の時代は、ロケットを乗り換えることが日常茶飯事となります。

設計者は事前に、マージンを乗せたり、ロケットの中でもっとも悪い環境を確認しておく必要も出てきます。

 

構造による不具合は、慣れてきた時であったり、技術の継承不足により発生することが多く、突然発生するために注意が必要です。

 

参考

04510.jp

www.keyence.co.jp

career-picks.com

chewy.jp

 

kenkou888.com