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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

サービス回復のパラドックスについて

サービス回復のパラドックス(Service recovery paradox)とは?

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本来、製品に対してトラブルが発生した場合、多くのユーザーは不満を募らせ、人によってはクレームを行います。

 

しかし、発生したトラブルをサービスによって補填、回復、修正を正しくすることで、(すべてではないが)トラブルの発生していない安定したサービスよりもユーザーに対して多くの満足感と信頼感を与えることができます。

 

言ってしまえば、トラブルはユーザーにさらなる満足感を与えることをサービス回復のパラドックスと呼ばれています。

 

しかし、残念なことに必ずしも再現性があるというわけではありません。

 

今回は、このサービス回復のパラドックスという言葉を少し調べてみましたので、まとめてみました。 

 

サービス回復のパラドックスの一例

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例えば、航空券を申し込んでいたユーザーに突然キャンセルの連絡が来たとします。

ユーザーは航空会社に連絡すると、航空会社の人たちは謝罪した上で、フライトと同日の別の航空券と、将来旅行に対する割引券を提供してくれました。

サービス回復のパラドックスによれば、ユーザーは航空会社に満足し、トラブルが発生しなかった場合よりも、信頼感を高めます。

 

ここ数年の話では、2015年11月23日に日本でも多く使用されているメッセージングサービスであるSlackの大規模障害が発生しました。

世界中100万人を超えるユーザーが、3時間にわたりメッセージやファイルを送受信できなくなったのです。

一部のユーザーは、Twitterやその他のSNSから不満やクレームを発信していました。

Slackは、サービス障害が起きた数時間の間に、公式アカウントから2,300回以上の発信を行いました。

ただは発信を行っただけではなく、サービスの停止について不安やクレームを発信しているユーザーに対して返答をし続けたのです。

この対応はユーザーを驚かせただけではなく、3,300人以上のフォロワーを獲得しました。

これは平均の7倍にも上り、Slackの中でも最悪な日が避けられたとも言われています。

 

 

サービスのトラブルは、他のサービスへの乗り換えが発生する要因にもなります。

 

逆にトラブルからの上手く回復させることができれば、サービスを継続して使用しても良いと感じる気持ちを継続させます。

 

そもそもサービスの回復は、エラーを発生さないことが難しいサービスを提供する提供側からすれば、気を付けなければいけない要素となります。

 

サービス回復のパラドックスの背景と歴史

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サービス回復パラドックスという用語は、1992年にMcColloughとBharadwajによって創られました。

 

彼らは、トラブル発生後のユーザー満足度が、トラブル発生前のユーザー満足度を超えていた結果になったそうです。

 

サービス回復のパラドックスは、効果的なサービス回復は単にユーザー満足度を維持するだけでなく、よりユーザー満足度を上げることができます。

 

結果として、長期的にユーザーを獲得し、良好なロイヤルティを生み出すことができると主張していました。

 

彼らはそれを「A situation in which a consumer has experienced a problem which has been satisfactory resolved, and where the consumer subsequently rates their satisfaction to be equal to or greater than that in which no problem had occurred.(満足度が高い解決方法を消費者が受け取ることによって、問題が発生しなかった状況と同じか、それ以上の満足感を感じることができる状況である(意訳)」と定義されています。

 

サービス回復のパラドクスの概念が、1990年代初頭に導入されて以来、いつ、どのような状況で発生するのか、多くの実証研究が行われてきたそうです。

 

サービス回復のパラドックスという言葉ができるまでは、「A good recovery can turn angry, frustrated customers into loyal ones. It can, in fact, create more goodwill than if things had gone smoothly in the first place(適切な回復は、怒りや不満を発生させている顧客を、不満もない顧客へ変貌させることができます。実際には、物事が順調に進んでいることよりも、問題が発生して回復させた方がより多くの信頼を生み出します。」と説明されていました。

 

また、この考え方を戦略的に使用することで顧客との継続的な信頼性を保持させることができるとも考えられています。

 

いくつかの調査研究結果

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サービス回復パラドックスを調査した実証研究では、さまざまな結果が得られています。

 

サービス回復のパラドックスの存在を支持する研究もあれば、矛盾する発見がある研究もあります。

 

ある調査によると、サービス回復パラドックスは存在し、その影響は重大と言えます。

しかし、非常にまれな発生であり、管理上の関連性はないとしている場合もあります。

 

上げればキリもないのですが例えば、電気通信会社のユーザーが再び同じ会社と契約した行動を調査した研究では、サービスを回復した時に戻ってきた顧客数は、回復した時とは別のタイミングで戻ってきた顧客の方が大幅に多いことが分かっています。

 

航空会社によるフライトの遅延によって、ユーザーの個人的なイベントに大きな影響を及ぼした場合は、割引券を渡されたとしても満足度を上げることはできません。

 

飛行中に「悪天候のためフライトが遅れます」というよりも「このフライトは出発が遅れたため、到着も遅れます」と言ってしまうと、サービス回復のパラドックスを発生させる可能性を低くさせます。

 

 

一部の研究では、サービス回復のパラドックスは平凡なサービスの場合にのみ発生し、優れて安定しているサービスでは発生しない可能性があると結論付けています。

 

さらには、深刻なレベルではないが、サービスを受けている顧客では制御できないなどのいくつかの条件が満たされたときに影響が発生する可能性が最も高いという研究もあるというものです。

 

これらの調査結果から、次のようにまとめているときもあります。

 

  • 以前に障害が発生している顧客に対しては効果が発揮されません
  • 大きな障害については効果が発揮されません
  • サービスを受けていた期間に関係ありません
  • 提供側の制御できる範疇を越えていると判断した場合に、より効果を発揮します
  • 原因追及の結果、予測できなかったと顧客が認識した場合に、効果を発揮します

 

サービス回復のパラドックスは、たまにミスした場合に、上記を条件として、効果を発揮させ、満足感を上げ、信頼度を高める可能性があります。

 

ただし、必ず起きるものではないため、サービス回復のパラドックスを当てに動いてはいけないということです。

 

 

サービス回復のパラドックスをいつでも発揮させるには

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事前に準備することで、問題が発生した結果的にサービス回復のパラドックスの効果が発揮できるかもしれません。

 

1.危機が発生した場合

迅速な回復プロセスの準備

危険なシナリオを検討し、各シナリオがどのように影響するのか調査し、事前に最も重要な問題点を特定しておきます。

 

すでにサービスを受けて満足し、サービス回復のパラドックスにより高い満足を得る可能性がある顧客は、そうではない顧客より高い価値があります。

 

それにも関わらず、サービス提供側は既存の顧客に対して積極的な行動を怠ることがあります。

 

既存の顧客をないがしろにすることは、クレームや悪評を増やし、サービスのブランドを落とす可能性があります。

 

結果的に信頼を回復させるために発生させるコストは、事前に準備していた場合と比べて跳ね上がります。

 

明確な優先順位とガイドラインを設定し、危機管理の組織体制を整えて、顧客のニーズに優先順位をつけて進める必要があります。

 

ユーザーとの窓口を強化する

カスタマーサービスを行う人員は、危機管理の時に重要になります。

 

多くの顧客がサポートを求める事態になったときに、判断できる権限を与えておく必要があります。

 

顧客からの連絡に対し、組織のポリシーを十分に認識し、迅速な対応ができるようにしてください。

 

 

2.問題が発生した前

問題が炎上する前に、全体を把握し、可能な範囲で制御し、効果的にコミュニケーションを行う

 

問題が発生した時に、顧客の96%は会社に対して直接クレームを発信することなく、サービス提供側の原因を追究し、発信します。

 

問題が発生した場合、サービス提供側は情報の発信に積極的に取り組む必要があります。

 

サービスが停止していると多くの顧客が気付く前に通知してください。少なくとも、コールセンターへの連絡は減少します。

 

頻繁に更新を行い、常に顧客の動向を確認し、問題を解決するために熱心に取り組んでください。

 

透明性を保ちつつ、責任の所在をそらしたり、難しい専門用語を使用しないでください。

 

顧客の信頼を維持するためには、お互いに伝わる込みにケーションが必要となります。

 

顧客へのフィードバックを行う

 

問題を回避し、解決されても顧客を放置しないでください。

 

問題の理由と実行されている予防措置を明確に発信してください。

 

顧客のクレームが是正措置に繋がった場合は、感謝と改善を顧客様に通知してください。

 

情報の提供をすることで、顧客もチームの一員であるかのように感じ、より高い満足感と信頼感を感じることができます。

 

 

参考資料

Service Recovery Paradox – How to Turn Failure Into Value

https://customerthink.com/service-recovery-paradox-how-to-turn-failure-into-value/

What Is the Service Recovery Paradox, and Is It Real?

https://smartercx.com/what-is-the-service-recovery-paradox-and-is-it-real/

How To Use the Service Recovery Paradox To Your Advantage

https://www.genroe.com/blog/when-does-the-service-recovery-paradox-work-and-when-does-it-fail/763

The service recovery paradox

https://www.customerthermometer.com/customer-retention-ideas/the-service-recovery-paradox/

The power of the service recovery paradox

https://smartermsp.com/the-power-of-the-service-recovery-paradox/

ラッセル・リンカーン・アコフのシステム思考【システムエンジニアリング】

システムエンジニアリングとはなにか?

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この質問に回答するのは、とても困難です。

 

ウィキペディアによると

Systems engineering is an interdisciplinary field of engineering and engineering management that focuses on how to design, integrate, and manage complex systems over their life cycles.

Systems engineering - Wikipedia

 「システムエンジニアリングは、大規模で複雑なシステムを開発及び設計、統合及び管理するための学術的なアプローチ」

しかしそれだけで表現するには困難です。

 

別の定義として次のように表現しているエンジニアもいます。

The systems engineer ensures that the product satisfies the customer.
and
The systems engineer examines the entire system and applies a little wisdom

Just Enough Systems Engineering

 「システムエンジニアは、顧客が製品に満足七得ることを確認します。

そして

システムエンジニアは、システム全体を見渡して、いくつかの知恵を適用します。」

 

この定義は一見当然のことと思われるかもしれません。

しかし、現実は難しいという事実があります。

 

システムエンジニアリングは、故障が発生した時に、特に巨大な影響(コストやスケジュール)が発生するときに、効果を感じることができます。(それまでは、単に手間のかかる無駄作業と感じる方が多いのではないかと思います。)

また、プロジェクトマネジメントよりも前の段階から実施しておくことで、より効果的に機能します。

 

システムエンジニアリングは宇宙機の開発から多く広まりました。

現在では、航空機、建設、通信など多くの物に使用されています。

 

それらの分野には、それぞれ、規格、認証、資格があり、システムエンジニアリングを実践するには、管理するための大量の紙を使ったりと、現在のペーパーレスに即さない悪評も上がっています。

 

それは正解でもありますが、うまく使いこなせば小さな労力で実行することも可能です。

 

実際のところ、システムエンジニアリングに対する回答は、自らシステムエンジニアリングを実践し、理解するほかないのです。

 

そのうえで、システムエンジニアリングに対する回答を得るしかないのです。

 

システム思考

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システム思考という言葉を知っているでしょうか?

 

システム思考とは、システムの一部分を確認しながら全体を見渡すことを意味しています。

 

システム思考とは、全体が部分部分が統合された集合体であることを理解することを意味しています。

 

個々のパーツでは見つからない特性を見つけることも意味します。

 

というように、いまいち、具体性の掛けている表現になってしまいます。

 

ラッセル・リンカーン・アコフは次のように述べています。

 

Successful problem solving requires finding the right solution to the right problem. We fail more often because we solve the wrong problem than because we get the wrong solution to the right problem.

http://fearlessrevival.com/russell-ackoff/

 「問題を解決させるには、問題を適切に見分け、適切な解決策を見つける必要があります。正しい問題に対して間違った解決方法を試すよりも、間違った問題を解決して、失敗することがよくあります。」

 

いくつかのアプローチを行い、問題を解決したとしても、実は問題解決に至らない課題に対して注力しており、結果、失敗してしまう。

 

といったところでしょうか、こういったことがしばしば発生し、システム思考が自分たちの組織に合わないと止めてしまうこともあるかもしれません。

 

ラッセル・リンカーン・アコフは、失敗している理由として次のことを挙げています。

 

システムの一部分を改善しても、必ずシステム全体として改善されるとは限らない

優れたエンジニアだとしても、平凡な製品を作ってしまう理由の一つです。

各部分がお互いに適合して、システム全体が成立するという事実を認識することから始まります。

 

問題は分野ごとに整理されているとは限らない

実務上の理由から、各分野ごとに担当や組織が分かれているいますが、問題も同様に分野ごとに分かれているとは限りません。

 

問題に対して様々な角度から検証していく必要があります。

 

問題を発散させず、問題を解決する必要があります。

システムは、問題が無くなるように調整していく必要があります。

 

問題を試行錯誤したり、学術的なアプローチを行ったとしても、必ず問題が前進するわけではありません。

 

 

参考

Was ist Systems Engineering?

https://www.se-trends.de/was-ist-systems-engineering/

Systemdenken: Die Sichtweise von Russell Ackoff

https://www.se-trends.de/systemdenken-russell-ackoff/

 

https://de.wikipedia.org/wiki/Russell_Ackoff

Russell L. Ackoff | Quotes | Systems Thinking Books

http://fearlessrevival.com/russell-ackoff/

最近のJAXAは年収が分かるらしい

JAXAの場合簡単に年収が出てきます。

だいたい690万ですって、本当?って感じですが。

 

案外知られていないようなんですよね、このページ。

 

 

いえ、今回はこれだけです。

 

www.jaxa.jp

www.jaxa.jp

 

 


 

レーザー加工の誤解と6つ真実【筐体加工】

レーザー加工の誤解を解く

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原文

https://www.engineeredmechanicalsystems.com/truth-behind-laser-cutting-myths/

 John Thom

レーザーは間違いなく、私たちの知る技術の中でも実用的に進化してきた技術の一つです。光のエネルギーを集約したビームは、矯正眼科手術をはじめ、音の伝達に至るまで利用されています。

 

レーザー加工は、材料によって事前に加工プログラムを作成し、コンピューター制御によって、強力なレーザーを調整しています。

一般的な例として、カメラ内部に搭載される回路の加工やさまざまな素材で作られた装飾品で使われています。

適切なレーザー機器を使用することで、多くの金属を細かい形状で加工し、多くの製品に使用することができます。

 

しかし、製造業の世界におけるレーザー加工の常識は、一般的に誤解も広がっています。

この記事では、レーザー加工に関するいくつかの誤解と真実をまとめました。

 

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宇宙機のセラミックコンデンサの熱や機械的負荷の影響 | Lessons Learned、失敗学、事故事例

宇宙環境試験に供するセラミックコンデンサの注意点 

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コンデンサは、充電や放電を行うことで、電圧の変化を吸収したり、電気の通り道で余計なノイズを横道にそらしたり、直流はさえぎり周波数で信号をより分ける機能があります。

 

セラミックコンデンサは、誘電体に高誘電率のセラミックを用いたコンデンサで、次のような特長があります。

  • 極性がない
  • 高周波特性が良い(ESRが低い)
  • 高耐熱
  • 長寿命
  • 印可電圧によって容量が変化する特性(DCバイアス特性)を持っている。DCバイアス特性は誘電率が大きいものほど顕著に現れる。
  • 温度によって静電容量が大きく変化する
  • 高周波による振動で音鳴りが発生する
  • 温度/機械的衝撃によりクラック・割れ・欠けが発生しやすい

 

今回は、宇宙環境におけるセラミックコンデンサの注意点を述べています

 

概要

セラミックチップコンデンサは、熱衝撃や機械的ストレスの影響を非常に受けやすくなっています。

 

多くのゴダードスペースフライトセンター(GSFC)プロジェクトでは、熱衝撃または機械的応力のいずれかにより、セラミックキャップに、通常は複数の部品に亀裂が発生しています。

 

あるケースでは、部品はすべての環境試験に合格しましたが、軌道上で数か月後に異常な動作が始まりました。

発生タイミング

LandSat-8熱赤外線センサー(TIRS)の軌道上異常、磁気圏マルチスケールミッションの統合とテスト(I&T)

Lessons Learned
  1. すべてのメーカーのセラミックコンデンサは、良性で実証済みの基準に準拠していると見なされる可能性のある熱的および機械的条件下で劣化または故障につながる可能性のある亀裂が発生する可能性があります。
  2. 損傷は、はんだ接合部の修正、手直しと修理、隣接部品の取り付け、または曲げを含む可能性のあるボードの機械的取り扱いなどの活動によって発生する可能性があります。

Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。

  1. 部品を取り付ける前に、常にボードと部品を熱的に事前調整してください(NASA-STD-8739.2の13.4.1項と13.4.4項を参照)。
  2. 審美的なはんだ接合の修正を行わないでください。
  3. 取り付けられたセラミックコンデンサの近くでの手直しや取り付け不足に注意してください。
  4. ボードの柔軟な領域にセラミックコンデンサを含む設計を組み立てます。
  5. 手はんだ付けは避けてください。ただし、必要に応じて、熱衝撃を避けるために部品とボードの熱前処理を実行してください。
  6. テスト中は漏れ電流の兆候に注意してください。

 

 

Lessons Learnedとは 

Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。

 

得られた教訓というと、失敗や不具合だけを想像しがちではありますが、成功したことについても教訓としてあげられます。

Lessons Learnedは同じ失敗を繰り返さないようにすることと、計画が順調に進んだ成功要因を共有することの2つがあります。

  

NASAで公開されているNASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)から、宇宙業界に限らず、工業製品でも適用できそうなLessons Learnedを集めてみました。 

  

 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

Understand What 'Cleaning' Means In The Context Of The Flight Item

https://llis.nasa.gov/lesson/2043

コンデンサの『種類』まとめ!特徴などかなり詳しく分類

https://detail-infomation.com/capacitor-type/

NASAのDC/DCコンバーターの適用に関するガイダンス(2008年) | Lessons Learned、失敗学、事故事例

NASAの選択とDC/DCコンバータの適用に関するガイダンス

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DC/DCコンバータの不具合は、宇宙機に限らず多くの製品で発生する可能性が高いデバイスです。

 

現在、市販製品と言われるCOTS品が使用されていますが、DC/DCコンバータの場合はどうでしょうか?

 

今回は、宇宙品質のDC/DCコンバータの故障の一部を知っていただくことで、宇宙品質のDC/DCコンバータを使用しない場合に気を付けるべき部分として、設計に反映していただければと思います。  

概要

ハイブリッド型DC/DCコンバータの入手性、品質、および信頼性の問題により、多くのNASAプロジェクトにおいて、コストとスケジュールに影響を及ぼしています。

 

軌道上の障害もいくつか発生していますが、その多くは開発時や試験時に障害が発生しています。

 

この記事は、デバイスの選択、購入、および試験について、NASA NESCの調査によって、2008年に文書化されたDC-DCコンバータの教訓をまとめたものをリライトしたものです。 

ガイダンス作成の経緯

電子スイッチモードDC/DCコンバーターは、入力エネルギーを一時的に保存し、そのエネルギーを別の電圧でデバイスの出力に放出することにより、ある直流(DC)電圧レベルを別の電圧レベルに変換します。

 

過去20年間、このアセンブリにおいて故障や障害が発生していないNASA宇宙機のプロジェクトはほとんどありません。

 

軌道上での故障が疑われるものが、重力場観測のための観測衛星のGRACE、国際宇宙ステーションハッブル宇宙望遠鏡などいくつかありますが、多くの場合は、システムとサブシステムの開発や試験中に発生しています。


DC/DCコンバーターは、特性評価が難しいハイブリッドデバイスです。

 

多くの異常は、部品の誤使用に起因しています。

 

サブシステム設計者のデバイス仕様の主な情報源は、製造元の製品データシートですが、この中には必要な情報がすべて記載されているわけではありません。

 

多くの宇宙機のアプリケーションは、デバイスに低負荷をかけています。

この使用方法は、通常、製品データシートの仕様に反映されていないものです。

 

サブシステムアプリケーションが最適な電気的パラメータと異なる場合、DC/DCコンバータのパフォーマンスが急激に低下する傾向があります。

 

慎重に選定したDC/DCコンバーターでさえ、宇宙機システム開発の過程での設計変更に脆弱になります。

 

DC/DCコンバータは、品質と信頼性の課題ももたらします。

 

いくつかの宇宙飛行プロジェクトでは、部品の製品評価である破壊的物理分析(DPA)、放射線試験、または寿命試験(地球観測衛星Jason、宇宙赤外線望遠鏡、火星探査ローバーなど)、ベンチテスト、機械環境試験(Cloudsat、ハッブル宇宙望遠鏡など)に対する脆弱性、デバイスの仕上がり品質が悪いために失敗しました。

 

宇宙品質(ClassK)のデバイスの場合でも、ハイブリッドの軍用規格(MIL-PRF-38534)の規定の多くは、宇宙機システムの信頼性を実現するには不十分です。

 

宇宙品質の要件は、コンデンサテスト、ハイブリッド電気ディレーティング、ワーストケース分析、低放射線量率、シングルイベント効果制限などがあり、一般的な軍事用途の要件(MIL-PRF-38534)よりも厳しいです。

また、部品の一部の設計変更が発生した時に、軍事用途の要件ではデバイスを再認定する必要はありません。

 

設計者は、ClassKの代わりに安価なClassHまたは低クラスのデバイスを使用してコストを節約しようとしたことがありますが、システムとサブシステムでの統合試験で周辺部品が溶融されたりして作り直すことになり、コストを考慮すると高い品質品を使用した方がはるかに低コストになります。

 

NASA Engineering & Safety Center(NESC)は、FPGA(Field Programmable Gate Arrays)の次に、DC/DCコンバータが最も厄介な設計対象としてランク付けされる可能性があると考え、NASAのプロジェクトメンバーにガイダンスを提供するための調査を開始しました。

 

電気試験は、NASA宇宙機システムでのデバイス適用のリスクを軽減する試験方法を導き出すために実施されました。

 

NASAガイダンス文書は、これらのデバイスの選択、購入、およびテストで飛行プロジェクトを支援するために作成され、デバイスの使用から学んだ教訓を文書化しています。

 

Lessons Learned

ハイブリッド型DC/DCコンバータの入手性、品質、および信頼性の問題により、多くのNASAプロジェクトにおいて、コストとスケジュールに影響を及ぼしています。

 

NASA宇宙機のハードウェアで一般的なデバイスの選定傾向は次のとおりです。

 

  1. 部品だけでなく複雑なアセンブリにおいても、宇宙機システムへの適用を成功させるには、学際的なサポートチーム(設計エンジニアリング、電子部品エンジニアリング、品質保証エンジニアリング、信頼性エンジニアリング)が必要です。
  2. 長いリードタイムの​​調達:システム要件の変更により、プロジェクトがアプリケーションに適さない電力変換器を選択する可能性があります。

Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。

 

DC/DCコンバータの選択と適用に関する詳細なガイドラインを提供します。最も重要な推奨事項は次のとおりです。

 

バイスのアプリケーションと試験

1.製品のデータシートには通常、DC/DCコンバータに関するすべての情報が記載されているわけではないことを認識し、技術担当者に連絡して疑わしいアプリケーションについて議論してください。

2.市販(COTS)の既製コンバーターは、非常に軽い(<20%)負荷では安定性が低いことを認識してください。

より負荷の高いアプリケーションで使用する場合でも、負荷の低いアプリケーションでも問題がないと考えないでください。

3.COTSのハイブリッドEMI除去フィルターには減衰のない共振があり、フィルターとコンバーターの組み合わせの安定性を確保するために追加の外部部品が必要です。

プロジェクトでは、回路全体を分析し、部品(LRおよび/またはRCネットワークなど)を追加してフィルターの共振を減衰させ、入力電圧、出力負荷、および温度のアプリケーション範囲にわたってフィルターとコンバーターの組み合わせの安定性を保証する必要があります。

4.同期機能は、JPLミッションがノイズを制御するために必要になることがよくありますが、絶対に必要な場合にのみ使用する必要があります。

外部同期機能は、同期信号の振幅、周波数、立ち上がり/立ち下がり時間、および回路の接地に非常に敏感です。

誤用すると、コンバータ出力のノイズまたは発振が増加します。

5.軌道上の入力電圧ランプ条件下でのDC/DCコンバータの特性評価。

一般的な宇宙軌道上のアプリケーションでは、入力電圧と電流のスパイクを軽減したり、発振せずにデバイスをオンにしたりするのに十分な入力電圧ランプレートが提供されない場合があります。

6.追加のDC-DCコンバータテストの推奨事項は、1998年の教訓(https://llis.nasa.gov/lesson/603)で提供されました。


バイスの信頼性

7.内部デバイス回路で部品応力解析(PSA)を実行します。

単にデバイスを「ブラックボックス」としてディレーティングすることは避けてください。

8.DC/DCコンバーターでワーストケース分析(WCA)を実行し、総放射線量だ​​けでなく、強化された低線量率と変位損傷の影響も分析してください。

9.バイスがフライト認定された後に発生する設計、または作業・設計工程への変更を確認し、必要に応じて更新された工程の分析、または再認定を要求してください。

10.分析または試験により、デバイスの耐放射線性に関する製品データシートの結果を確認してください。


バイスの品質

11.顧客におけるキャップ前の目視検査は、適切に訓練されたデバイス検査官によって実行されることを確認してください。

再作業が必要な欠陥を特定するために必要になります。

12.バイスの蓋のシーリングとスクリーニングの後でも、欠陥が発生する可能性があるため、ClassK以外のすべての製品ロットでカスタマーDPAを実行してください。

 

バイスの調達

13.バイスの品質を達成するには、認定メーカーリストからデバイスベンダーを選択することを強くお勧めします

14.MIL-PRF-38534にはClassKデバイスでも欠陥があるため、作業範囲記述書(SOW)またはソース管理図(SCD)を使用して、顧客のキャップ前の目視検査、コンデンサショットキーダイオードのスクリーニング、および定期的なMIL-PRF-38534グループを追加してください。

15.目的のコンバーターは通常、ベンダーの在庫から入手できないため、長い(6か月を超える)リードタイム製品としてコンバーターの調達を計画してください。

16.高品質のデバイスを調達するように勧めます。

アップスクリーニングを含む低品質の総コストと、プロジェクトに対するロット障害のコストとスケジュールの影響は、高品質デバイスの初期コストを大幅に超える可能性があります。

17.バイスのアプリケーションやロットの故障に関連する問題を解決するには、調達サイクル全体を通じて、設計エンジニアリング、電子部品エンジニアリング、品質保証エンジニアリング、および信頼性エンジニアリング機能を代表する監視チームのプロジェクト計画と予算が不可欠です。


最後に

 

宇宙品質の製品に手間がかかる理由の一端を知っていただければと思います。

 

多くの管理や試験を実施しているため、高コストになり、これらを購入するだけでも宇宙機のプロジェクト全体の開発を遅くしている理由でもあります。

 

人工衛星においてシステムの統合作業を早くしても、部品調達に関しては早くなりません。

 

人工衛星はシリーズというより単発打上げが多く、期間も数年間隔であり、デバイスの製造メーカーも生産工程の更新や材料の入手性も変わり、製品自体の寿命もあるために長期保管に適しないこともあります。

 

そのため、ほぼ毎回、デバイスを調達しているという経緯があります。

 

スターリンク衛星のように定期的に大量に打上げる場合は、デバイスメーカー側に負荷も減るために、部品生産側としてメリットはありますが、そうでない場合は、部品生産側に負荷を強いられることになります。

 

近年、部品の品質も高くなっていますが、やはり宇宙品質の方が大型衛星においてはコストが低い傾向が多いです。

 

中型・小型衛星の場合は、コストとスケジュールの観点からどちらを選択するか、製品の信頼性も考慮した上での判断を望みます。

 


 

Lessons Learnedとは 

Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。

 

得られた教訓というと、失敗や不具合だけを想像しがちではありますが、成功したことについても教訓としてあげられます。

Lessons Learnedは同じ失敗を繰り返さないようにすることと、計画が順調に進んだ成功要因を共有することの2つがあります。

  

NASAで公開されているNASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)から、宇宙業界に限らず、工業製品でも適用できそうなLessons Learnedを集めてみました。 

  

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

Counteracting the Threat of Counterfeit Components

https://llis.nasa.gov/lesson/1879

太陽電池パドルの展開検知スイッチの未起動で異常事態となった事例 | Lessons Learned、失敗学、事故事例

惑星探査人工衛星マゼランのソーラーアレイの展開の兆候

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-s30-72-046

 

太陽電池が必要な人工衛星は、電力消費が多く、使用頻度の高いミッションを行う場合に搭載されます。

 

展開パドルが働かなければ、人工衛星の電力が足らずに、緩やかに人工衛星が喪失するか、多くの機能が制限されることになります。

 

太陽電池パドルで最も心配する点は、展開機構が正常に稼働するのか確認できるのかという点です。

 

軌道上は、他に観測できるものがないため、展開パドルが駆動するのか、目視することができません。

大型衛星であろうと、地上からの望遠鏡で、かろうじて観測できそうというレベルなのです。

 

 

多くはマイクロスイッチで、パドルの状況を検知しているのですが、検知方法にもいくつかあり、今回はその失敗例となります。

 

概要

金星探査機である人工衛星マゼランは1989年に、スペースシャトルに搭載されて打上げられました。

 

スペースシャトルから放出されたときに、シャトルの宇宙飛行士は、マゼランの太陽電池パドルが展開される様子を観察していました。

 

しかし、太陽電池パドルに実装されていた、パドルが展開されたことで反応するマイクロスイッチの信号が発信されませんでした。

 

テレメトリトランスデューサが、関連する機能だけでなく、目的の機能も検知するようにします。

 

マイクロスイッチの設計では、太陽電池パドルの作動ストロークでの許容以上の動作を考慮する必要があります。

 

宇宙機の寿命の早い段階でFMECAを実行します。

  

発生タイミング

スペースシャトルと打上げられた惑星探査機マゼランの軌道上シーケンス中に、2つの太陽電池パドルがスペースシャトルの宇宙飛行士によって展開されたことが観察されました。

 

しかし、パドルが開ききったことを示す「パネルラッチ」のテレメトリ表示が送信されませんでした。

 

展開パドル機構の故障モードの影響と重要度の分析(FMECA)により、パドルが動いて定位置で固定するラッチのテレメトリの表示に問題があることを特定しました。

 

パドルの起動シーケンスで、スペースシャトルの慣性上段ロケット(IUS)の燃焼によってパネルがラッチ位置に向かって移動するように、パネルが回転しました。

 

分析によればこの異常は、マイクロスイッチの作動ストロークの限界と展開ヒンジの機構のゼロ重力効果の組み合わせによるものでした。

 

 

慣性上段ロケットの燃焼中に、太陽電池のパネルを少しずらすことで、マイクロスイッチが閉じたことで、適切なテレメトリ表示が提供されました。

 

この異常を分析することで、あとの探査機の任務には影響を与えることはありませんでした。

 

Lessons Learned

探査機マゼランの太陽電池パドルに取付けられていたマイクロスイッチは、パドルのラッチの状態ではなくソーラーパネルの位置を検出するように取り付けられました。

 

結果として、位置情報を示すマイクロスイッチであり、「パネルラッチ」を検知するインジケーターではありませんでした。

 

マイクロスイッチの作動ストロークの限界と展開ヒンジの機構のゼロ重力効果により、マイクロスイッチで検知できなくなる可能性があります。

 

故障モードの影響と重要度の分析(FMECA)により、これらの問​​題の回避策を打上げ前に、起動シーケンスの中に組み込むことができる可能性があります。

 

Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。

 

 テレメトリトランスデューサをどこに取り付けるかを決定する際には、関連する機能だけでなく、目的の機能が実際に検知されていることを確認するように注意する必要があります。


マイクロスイッチのすべてのアプリケーションでは、作動ストロークでの許容以上の動作を考慮する必要があります。

 

最後に

展開パドルの展開失敗あるいは、展開パドルの展開未検知は、20年以上経過した現在でも発生しうる事象です。

 

内容にもありましたが、地上と軌道上では重力が違います。

 

最近では、よりミッション機器へのペイロードを優先するあまり、従来より使用されていた展開機構の軽量化が行われる場合もあります。

 

展開機構が軽量化されれば、自然と展開時に使用されることが多い火工品などの衝撃にパドルがギリギリ耐える設計になります。

 

いくつかの機構では、衝撃を緩和させるために、パドルの駆動部をゆっくり動かす機構に変更していることもあり、結果、ラッチのマイクロスイッチでうまく検知できないことという事象も発生します。

 

機構系の設計は、地上では再現の難しい微重力を考慮する必要があるため、ワークマンシップの確認や量産機の再現性を含めFMEAなどの故障分析を実施する必要があるでしょう。

  


 

Lessons Learnedとは 

Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。

 

得られた教訓というと、失敗や不具合だけを想像しがちではありますが、成功したことについても教訓としてあげられます。

Lessons Learnedは同じ失敗を繰り返さないようにすることと、計画が順調に進んだ成功要因を共有することの2つがあります。

  

NASAで公開されているNASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)から、宇宙業界に限らず、工業製品でも適用できそうなLessons Learnedを集めています。 

 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

 

Magellan In-Flight Solar Array Deployment Indication

https://llis.nasa.gov/lesson/289

火星探査用のローバーのタイヤがパンクした事例(火星探査プロジェクトMSL) | Lessons Learned、失敗学、事故事例

火星探査プロジェクトであるMSLのローバーホイールの早期摩耗

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2021年現在、火星や月をローバーと呼ばれる車両が走行する計画が上がっています。

現在も多くの車両が研究開発されています。

 

今回の教訓は、想定していた最悪ケース以上のケースが発生し、ローバーの寿命が著しく短くなってしまったところにあります。

 

概要

マーズサイエンスラボラトリー(Mars Science Laboratory、MSL)は、NASAが火星探査ミッションで用いる宇宙船の名称です。

 

MSLに使用されるローバーホイールの設計は、火星の特定の種類の地形でパンクしやすいことが証明されています。

 

ホイールのパンクは、動作の負荷のシミュレーションが不十分であり、寿命試験が適切ではなかったことを示しています。

 

MSLプロジェクトは、他の部分への損傷、二次的被害を最小限にするために運用制限を実施しました。

 

火星2020プロジェクトでは、過酷な地形での耐久性を高めるため、けん引性能のある材料のホイールに設計を変更します。 

 

発生タイミングと追及

MSLの「Curiosity(キュリオシティ)」のローバーは2012年8月6日に火星に着陸し、現在火星の表面を19 km以上走行しています。

 

Curiosityの6つのアルミニウム製ホイールは、緩い砂や砂の上にある岩、及び平らな岩盤を移動するために設計されました。

 

設計は、The MarsYardと呼ばれるNASANASA /カリフォルニア工科大学ジェット推進研究所(JPL)にある屋外試験施設でシミュレートされた条件下で試験されました。

 

過去の3つの火星探査機のホイールと同じく、ホイールは火星の地表を移動中に遭遇するであろう特定の地形に限定して設計されました。

 

キュリオシティの黒い縁のローバーホイールは中空で、中央のハブに取り付けられた5つのアルミニウム製のスポークが露出されています。

 

「グラウザー(爪)」として知られるホイールのトレッドは、3つのシェブロン形状(鋸歯状のパターン)でホイールの幅にまたがっています。

 

JPLのローバー運用チームは、ローバーが火星の表面を運転するときに、ローバーのロボットアームにThe Mars Hand Lens Imager(MAHLI)カメラを使用して、定期的にホイールの状態をチェックしています。

試運転時にチェックした結果、左前のホイールスキンに穴が開いていることがわかりました。

 

シェブロン型(鋸歯状のパターン)のトレッドの間のホイールスキンの最も薄い領域で、そのような摩耗が予想されたため、対策していました。

(以前の火星探査車のホイールには、直線的なホイールスキンの凸形状がありました。そのため、横滑りを防ぐためにシェブロンのパターンが付けられました。)

 

しかしその後、目視によるホイールの検査で、予想以上にホイールの摩耗が確認され、ホイールの損傷の原因を追究することになりました。

 

キュリオシティのローバーホイールの内面の火星で撮影された写真を確認すると、凸状態やシェイブロンのパターンの無い滑らかなホイールスキン状態は、鋭い岩によってアルミニウム材料のホイールが破れた(パンク)状態を示しています。

 

パンクの発生から数か月の経過を確認した所、ホイール損傷率の増加に懸念を抱き、問題を分析するチームが結成されました。

 

さらに後日、左前輪のホイールに大きな裂け目が開き、試験運転で見られた損傷よりはるかに大きかったです。

 

MSLのホイールへの損傷の進行性の損傷は継続しており、岩盤(ピラミッド型の三稜石)を繰り返し走行したことによる金属疲労に起因するパンクとされています。

 

この地形は、試験運転中にはシミュレートされていませんでした。

これは、地形に関する限られた知識しかなかったためです。

 

撮影されたホイールを確認すると ホイールの下半分には、アルミニウムの破れたパンクが3つもありました。

 

穴の中でも最も大きいサイズは、ホイール幅の約1/3のサイズでした。シェブロンパターンのトレッド間のホイールの中央に発生していました。

 

2番目と3番目のパンクは、その約半分で、ホイールの高い位置やホイール幅の中央にもあります。

 

また深い円錐貫通穴は、ホイールの上部近くの外縁にあり、小さな非貫通亀裂も様々な場所で見られていました。

 

ベンチファクトの影響は、ホイールへの動的な機械的負荷によって悪化します。

 

ロッカーボギー機構は、中央と後輪が前輪を障害物に押し付けることにより、垂直障害物(岩)の面を乗り越えます

前輪が回転すると、車両が障害物を越えて持ち上げられます。後輪が中輪を障害物に押し付け、前輪が中輪を持ち上げて何度も持ち上げるまで障害物に押し付けます。

最後に、後輪は前の2つの車輪によって障害物を越えて引っ張られます。

 

ロッカーボギー機構は、すべて同じ速度で回転するホイールと、中輪と前輪をサポートする下向きのアームが含まれています。

 

前輪または中輪が岩にぶら下がっていて、ローバーの残りの部分が運転を続けると、アームが車輪に下向きの力を加えます。

 

これにより車両の静的重量をはるかに超えてホイールの負荷が増加し、グラウザーの凸とホイールスキンに損傷に引き起こされることが分かりました。

 

損傷が最も小さい後輪は、トレーラーのようにアームの後ろに引きずられるだけなので、この下向きにかかる負荷の増大が発生しません。

 

その後の試験により、下向きの押し付け力が緩く、先のとがった岩であった場合、パンクの主な原因はパンクは、動かない岩の中で先のとがった岩(ピラミッド型の三稜石)によるものであると結論付けられました。

 

 

ローバーの試験プログラムは、運転関連の負荷がホイールの損傷の潜在的な原因であるとは考えてられていませんでした。

 

MSLプロジェクトの車輪の試験の最悪ケースは、地形の影響を受ける運転負荷よりも、着陸タッチダウン負荷の方に評価のポイントを置いていました。(タッチダウン後の画像を確認すると、小さな亀裂はありますが、大きな損傷は見られませんでした)

 

MSLプロジェクトは、将来の被害の程度を軽減するための是正措置を実施しました。

(1)車輪の摩耗の進行を評価

(2)運転中の車輪の摩耗を最小限に抑えるための、目視による運行とThe MarsYardでの検証に基づくガイドラインの確立

 

(2)の対策は、鋭い三稜石が集中している硬い表面を運転することを避け、可能であれば、前輪への負荷を減らすために「車輪が損傷する可能性の高い」地形を後輪で運転することが含まれます。

 

これらの対策は、損傷率の管理に効果的であることが証明されています。

 

ローバーは延長されたミッションを完了することができ、さらに延長できる可能性があります。

 

発生原因

MSLのローバーホイールの設計は、特に特定のタイプの地形との相互作用に続いて、パンクやひび割れの影響を受けやすくなっています。

 

MSLホイールの早期摩耗の根本原因分析は、いくつかの有益な教訓を与えてくれました。

 

  1. ホイールは疲労に特別強い設計ではありません。。車両重量は、駆動トルクと組み合わさることにより、ホイールスキンへの応力が材料の耐久限度を超え、亀裂が発生します。
  2. ドライブアクチュエータの位置制御は、各車輪の移動距離の違いにより、障害物を横切るためにホイールに負荷を与えます。この力は、車両の静的重量をはるかに超えてホイールの負荷を増加させ、グラウザーの凸とホイールスキンに損傷に引き起こされることが分かりました。
  3. 地形には注意が必要です。ホイールの設計は、自然に発生するベンチファクトによるパンクを完全に防げません。ホイールスキンの金属は、地球上、おそらく火星上で見られる自然に発生している障害物の三稜石の鋭さによってパンクしやすくなっています。
  4. グラウザーの周りの皮膚の喪失(疲労亀裂またはパンクによるかどうかにかかわらず)は、ホイールの荷重経路に変化を引き起こし、材料の降伏限界を超えてグロウザーに荷重をかけます。この材料の過負荷状態により、最終的にはすべてのホイールグローサーが故障します。通常、グローサーがホイールの内部補強リングと接触する場所です。
  5. 円状に移動する(旋回)ことは、一部のホイールに対して、通常の駆動負荷よりも反力負荷が増加します。負荷を増やし、一部のホイールは旋回操作中に、小さくアッカーマンステアリングの動きをします。小さいアッカーマンステアリングの回転半径は、ホイールの損傷の原因になります。
  6. ホイールの端にある障害物の上に座って操舵すると、テスト中に観察された最大の負荷が発生しました。ただし、このプロセスは主要な損傷モードではないようです。おそらく、ホイールの端にある鋭い障害物の上に止まり、ステアリング操作を指示する可能性が低いためです。

 

後続の火星2020ローバープロジェクトは、ホイールの質量の増加を最小限に抑えながら、MSLプロジェクトと同等の過酷な地形と砂のトラバース性能でより高い耐久性を備えた改造ホイールを設計し、試験しています。

 

Lessons Learned

1.「test as you fly, fly as you test(飛ぶように試験する、試験するように飛ぶ)」というJPLの設計上の格言には注意が払われていませんでした。

 

MSLホイールは単体での寿命試験をしていたため、システム全体のホイールの寿命に関わる負荷を与えていませんでした。

 

また、火星で遭遇した三稜石(風が鋭くなった)の岩盤を過小評価し、滑らかな人工地形でのホイールの寿命試験が行われ、動かすことができない岩盤上で影響を考慮していませんでした。

 

2.モビリティシステムの解析モデルと試験は、負荷を受けるケース増やし、運用環境が最悪ケースを網羅的に対応する必要があります。

 

Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。

 

1.多くを想定し試験してください。

MSLプロジェクトは、ローバーの移動速度は比較的遅く、火星全域に対しても一部であるため、半静的負荷のホイール設計に焦点を合わせました。

この設計方針は、ホイール単体での試験検証と一致しています。

 

2.コンセンサスの達成

プロジェクトチームが、最悪ケースを火星全域の一部を構成する地形に焦点を当てて試験することに、同意してください。

 

3.適切なマージンの設定

環境を十分に把握されていに場合は、最悪ケースをいくつも考え、十分なマージンを考慮した機能を設計に取り込んでください。

(1)既知の環境を分析しリスク要因を厳密に分析し評価する

(2)ミッション全体のリスクを大幅に下げるため、発生可能性、被害の影響、環境のリスクを考慮する。

 

 

4.避けるべき地形

ホイールにやさしい地形での運転を推奨します。

ホイールの損傷と過酷な地形との相関は高いと考えられています。

地形の砂の中に、約8cm以上のする鋭くとがった三稜石が大量にあります。

岩のない経路がない地域は、運転するのに最悪のタイプの地形の1つで、より小さな三稜石に懸念されます。

 

5.優先地形

ホイールの寿命を長持ちさせるための好ましい地形は、砂または凝集性のレゴリス地形が含まれた地形で、回避可能な大きな岩/三稜石(8cm以上)はほとんどない地域です。

レゴリスとは新鮮な基盤岩の上に分布する未固結または二次的に結合された岩石であり、古い物質の風化、削剥、移動、体積によって形成されたものであり、その中には破砕、風化を受けた岩石、サピロライト、土壌、有機物集合体、氷河堆積物、崩積層、蒸発性堆積物、風成堆積物が含まれる。いわば新鮮な岩石と空気の間に分布する物質はすべてレゴリスと呼ばれる。

 

6.運転モード

ステアリングによって生じる距離が長くなる場合、ホイールの摩耗を減らすために、複雑な地形では逆方向に雲梯することを検討してください。


7.モニターホイール

500メートル以下の間隔で、6つのホイールすべてに損傷がないか検査してください。

適宜、損傷を確認し、重大な被害になるまでに特定し、地形と相関させ、より多くのデータを取得してください。

 

8.ホイールの寿命改善

ホイールの寿命を延ばす方法は、トルク制御された運転モードを開発することです。

障害物を通過するとき、ホイールのトルクを減らし、蓄積ダメージを減らします。

トルクを制御しても、ホイールへのダメージをなくすことはできません。

 

9.岩石のモニター

自動ナビゲーションドライブ用のより正確な岩石をモニタリングするシステムを開発します。

特定の地形において、8 cmを超える鋭くとがった三稜石を検出し、回避できれば、ホイールへの損傷を減らすことができます。

 


 

最後に

ローバーの構造的な設計において、もっとも負荷が掛かる状況は、ローバーが火星地表面に着地するタイミングであると予想されて設計し、試験を行っていました。

 

しかし、実際のところ、ミッションを長期間行う上では走行時に蓄積するダメージの方が 大きいという結果となりました。

 

宇宙開発の構造系では、ロケットの打上げ振動や分離時の衝撃、宇宙船間のドッキングなど、瞬間的あるいは数十時間のダメージがほとんどです。

 

宇宙空間はほぼ無重力であるため、宇宙機に加わる継続的なダメージというのはあまりありませんでした。

 

あるとすれば、太陽風であったり観測器の冷却装置、アンテナや太陽光パネルのパドル機構部分など比較的微振動なものでした。

 

今回の事例は考慮していたとしても、知見がなかったため過小評価されてしまったのかもしれません。

 

現在、JAXAトヨタの協力で月面ローバーの開発が行われているのですがこのあたりも汲んでいるのでしょうかね。

 

Lessons Learned 

Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。

 

得られた教訓というと、失敗や不具合だけを想像しがちではありますが、成功したことについても教訓としてあげられます。

Lessons Learnedは同じ失敗を繰り返さないようにすることと、計画が順調に進んだ成功要因を共有することの2つがあります。

 

案外成功体験というものは、組織の中でノウハウとして蓄積されず、個人の中でされることが多いです。

 

本人は今までのノウハウから自然と身についていることだとしても、他の人が同じノウハウを共有しているとは限らないため、言語化して残しておくことは重要です。

 

NASAで公開されているNASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)から、宇宙業界に限らず、工業製品でも適用できそうなLessons Learnedを集めてみました。

 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

 

Premature Wear of the MSL Wheels 

https://llis.nasa.gov/lesson/22401

 

Wheels and Legs

https://mars.nasa.gov/mars2020/spacecraft/rover/wheels/

 

Mars 2020 Perseverance Rover - NASA Mars

https://mars.nasa.gov/mars2020/

 

NASAの失敗を活かす!「メイド・イン・ジャパン」が月面で光る日

https://forbesjapan.com/articles/detail/16173

アッカーマン・ステアリング

https://automotive.ten-navi.com/dictionary/12339/

 

レゴリス地質学と地化学探査

https://www.jstage.jst.go.jp/article/shigenchishitsu1992/54/1/54_1_91/_pdf/-char/ja

 

http://curiosityrover.com/tracking/drivelog.html
“Wheel Wear,” JPL Incident Surprise Anomaly (ISA) Report No. 55561, December 18, 2013.

“Mars Science Laboratory Wheel Damage Mechanical Tiger Team – Final Report,” JPL Document No. D-78450/MSL-266-3989, January 6, 2015.

R.E. Arvidson, et al, “Relating Geolocic Units and Mobility System Kinematics Contributing to Curiosity Wheel Damage at Gale Crater, Mars,” Journal of Terramechanics, TER 691, March 20, 2017. Patrick DeGrosse Jr.

“MSL Wheel Damage,” JPL Incident Surprise Anomaly (ISA) Report No. 56534, June 18, 2014.

Patrick DeGrosse Jr., “What is Causing the Damage?,” September 25, 2014.

“M2020 Mobility Wheel & Flexure Initial Design Review,” Mars 2020 Mission Formulation, June 14, 2016.

MARS 2020 Project, Surface Terrain Model Specification Document, JPL Document No. D‐93886, October 1, 2015.

リモートセンシングと天候

リモートセンシングと天候

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-GSFC_20171208_Archive_e002108

※CGではなく実際の国際宇宙ステーションから撮影された写真

 

人工衛星のデータは、農業や林業、天気といった様々なことを使用されています。

 

人工衛星データの中で地球表面を観測装置を用いて、観測することをリモートセンシングと呼びます。リモートセンシング人工衛星だけではなく、飛行機や気球などで観測することも言います。

 

リモートセンシングという表現は、そのうちに地球表面に限らず、惑星表面を観測する技術のことを指すことになるかもしれませんが。

 

リモートセンシングの用途は年々広がっています。

人工衛星のデータがどのように使われているか、知らない情報があれば幸いです。

 

 

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天候

【095】風速と風向の測定

ゴルファー、サーファー、農家、パイロット、エンジニア、および風力発電の計画者は、正確な風力の情報を必要としています。

気球とGPSデータで測定され、海風はブイや船舶など海面に近い所で測定されます。

しかし、この測定方法は唯一の方法ではありません。

人工衛星マイクロ波散乱計により広範囲の風力観測も可能となっています。

 

【096】自然災害の危機を伝える天気予報

天気予報の情報は、観光客を始め、地元企業やスポーツ選手にとって重要な要素となります。

1975年には、風、気温、その他の大気データを収集するために静止軌道で運用された気象衛星(GOES-1)が打ち上げられました。

それ以後、日本でも同じく静止軌道上の気象観測衛星であるひまわりが打上げられています。

年々、打上げられ、その観測範囲や観測する種類、分解能も向上しています。

 

【097】地球の下層大気を監視

地球上において、一部の都市の汚染は激しく、毎日1パックのタバコを吸うのと同程度と言われている場所もあるそうです。

過剰に汚染された都市の多くは中国に存在しています。

主要な汚染物質の1つは一酸化炭素です。

一酸化炭素は人間の目には無色ですが、人工衛星の赤外線観測機器により確認することができます。

 

【098】オーロラを上空から観測

太陽により放出される荷電粒子が地球の磁気圏に巻き込まれると、地球の大気にぶつかります。

地上から見れるオーロラの綺麗な色は、電離圏の上空にある磁気圏に入り込んだ際の相互作用により発生するものと考えられています。

地上だけでなく国際宇宙ステーションからのオーロラの眺めも公開されています。

www.youtube.com

www.youtube.com

 

【099】地球の放射収支のアルベドの測定

地球アルベドは、地球に入射される太陽光が地球上で反射する割合のことを指します。

暗い表面では、太陽光を吸収して暖かくなります。

雪のような明るい表面は、多くの太陽光を反射していきます。

アルベドは地球の放射線収支の重要な要素にもなります。

地球上の総アルベドを計算するために、各土地被覆タイプにアルベド値が割り当てられます。

アルベドに土地被覆タイプと合計を掛けて、地球の総アルベドを測定します。

 

【100】日射量を計算することにより太陽光エネルギーの最適化

ほぼ無限に照射される太陽エネルギーの分析することができます。

ソーラーパネルを設置する際に、どの程度効率化できるのか知る指標として、分光放射照度の直達、散乱、全天成分(DNI、DHI、GHI)があります。

例えばGHIは、地球の表面に入射する総太陽エネルギーの割合を1平方キロメートルあたりのワット数で測定します。

 

 

参考資料

リモートセンシングとは?

https://www.restec.or.jp/knowledge/

100 Earth Shattering Remote Sensing Applications & Uses(2020/12/27)

https://gisgeography.com/remote-sensing-applications/

 

気象観測ガイドブック

https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kansoku_guide/guidebook.pdf

人工衛星マイクロ波散乱計 MetOp-B/ASCAT から得られる全球規模海上風速 Level 2 データの精度検証

http://www.union-services.com/sst/sst%20data/4_31.pdf

超低高度衛星を用いた風向風速観測の実現性検討

https://laser-sensing.jp/31thLSS/31th_papers/01_A-1_Sakaizawa.pdf

人工衛星搭載マイクロ波散乱計を用いた風力エネルギー資源量推定における長期変動解析

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jweasympo/37/0/37_233/_pdf

QuikSCAT

https://winds.jpl.nasa.gov/missions/quikscat/

Ocean Winds

https://podaac.jpl.nasa.gov/OceanWinds

 

人工衛星からのオーロラ全体像の撮影

https://www.jstage.jst.go.jp/article/itej1978/34/3/34_3_221/_pdf

明滅するオーロラの起源をあらせ衛星が解明-宇宙のコーラスにあわせて密かに揺れる電子の挙動がつまびらかに-

https://www.jaxa.jp/press/2018/02/20180215_arase_j.html

宇宙の電磁波の「さえずり」がオーロラの「またたき」を制御 ─ 北極域での高速オーロラ観測と科学衛星「あらせ」による国際協調観測 ─

https://www.isas.jaxa.jp/topics/002339.html

 

リモートセンシングと交通

リモートセンシングと交通

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Credits: NASA

 

https://images.nasa.gov/details-KSC-2009-3153 

 

人工衛星のデータは、農業や林業、天気といった様々なことを使用されています。

 

人工衛星データの中で地球表面を観測装置を用いて、観測することをリモートセンシングと呼びます。リモートセンシング人工衛星だけではなく、飛行機や気球などで観測することも言います。

 

リモートセンシングという表現は、そのうちに地球表面に限らず、惑星表面を観測する技術のことを指すことになるかもしれませんが。

 

リモートセンシングの用途は年々広がっています。

人工衛星のデータがどのように使われているか、知らない情報があれば幸いです。

 

 

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交通

【088】無人偵察機などにより農村部の道路状況を評価

日本では道路が整備されていますが、世界中では、まだ未舗装道路が数多くあります。

各地の交通計画の担当者は、未舗装道路に関する情報を得て、計画を考えています。

リモートセンシングと地理情報システム(GIS)の統合により、航空写真による高い空間分解能の写真で未舗装道路のポットホール検出、および倒木状態を分析できます。

数センチメートルの精度で、地方の道路状況を評価し、データベースを作成することで、調査する時間とお金を節約できます。

 

【089】自動運転車

自動運転車が警察によって違反を犯して捕まらないのでしょうか?

自動運転の搭載されている車両には、歩行者や自転車、一時停止の標識などの障害物や標識を検出するセンサーが搭載されています。

センサーの情報とGPS、自動車の慣性、各道路の3次元情報、および搭載されているソフトウェアと組み合わせることで自動運転車ができあがります。

 

【090】道路の亀裂を探索する

リモートセンシングデータは多くの分野をカバーし、建設関連についてもアドバイスを提供します。

アメリカのカリフォルニア州ソルバング市では、道路管理の問題に対してリモートセンシングデータに注目しています。

公共事業として衛星画像を使用し、損傷した舗装道路を特定しています。

担当者は、どの道路がどのような修理が必要かを把握することができ、最も役立つサービスとして使用されています。

 

【091】車両排出物の燃費の評価

各国政府は、自動車に対して排気ガス規制を強化しています。

人工衛星は、はるか空から、CO、HC、NOなどの車両排出量を測定できます。

自動車の走行距離や不法改造された機器を監視して、違反料金を課すというアイデアもあるそうです。

人工衛星は、自動車による大気汚染を管理する機会を提供されます。

 

【092】道路網の作成

都市計画担当、救急隊員、およびナビゲーションシステムには、最新の道路網が必要となります。

新しい地域や計画が立ち上がるたびに、道路網データベースを最新状態にする必要があり、とても時間が掛かります。

マルチスペクトル画像と地図データベースの分類を使用することにより、道路網を監視し、修正する時間のかかるプロセスも自動することができます。

ただし、駐車場と道路の識別はまだ難しいため、課題の一つとなっています。

 

【093】航空交通管制の効率と安全性の向上

航空交通管制は、地上から航空機を誘導することで、空中での衝突を防ぎつつ、空の交通整理を行っています。

交通整理が悪いと、無駄な燃料費とコストが掛かり、排気ガスも無駄に排出することになります。

現在の航空交通整理では、地上レーダと人工衛星によるGPSデータを活用しています。

航空交通管制システムは、各飛行機のルートの改善、空中での待機の削減、および全般的なコストの節約を目的としています。

GPSデータ以外の天候情報などの人工衛星データを使用して、飛行機が早く着陸し、ナビゲートするのを支援することを目的としています。

 

【094】道路の変化分を検出して交通渋滞の削減

世界の人口の増加と都市化により、都市部の交通量が増加しています。

渋滞の発生は、自動車の燃​​料と時間をロスすることになります。

地上による道路の計測システムは、人工衛星よりも非常に正確な交通量を提供しますが、計測システムが設置されている地点の道路に限定されています。

自動車の密集具合は、変化分を検出することで確認することができます。

 

参考資料

リモートセンシングとは?

https://www.restec.or.jp/knowledge/

100 Earth Shattering Remote Sensing Applications & Uses(2020/12/27)

https://gisgeography.com/remote-sensing-applications/

 

衛星リモートセンシングデータを用いた道路上の車両抽出に必要な空間分解能に関する一考察

http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00035/2000/55-06/55-06-0172.pdf

道路政策の質の向上に資する技術研究開発

https://www.mlit.go.jp/road/tech/hyouka/h29/29-9_houkoku.pdf

Multiscale Road Extraction in Remote Sensing Images

https://www.hindawi.com/journals/cin/2019/2373798/

Roads and Intersections Extraction from High-Resolution Remote Sensing Imagery Based on Tensor Voting under Big Data Environment

https://www.hindawi.com/journals/wcmc/2019/6513418/

A review of road extraction from remote sensing images

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2095756416301076

衛星画像を用いた道路混雑状況の判別

https://www.jstage.jst.go.jp/article/iieej/40/6/40_6_1027/_pdf