往時宇宙飛翔物体 システム機械設計屋の彼是

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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

リモートセンシングと林業/政府/水文学

リモートセンシング林業/政府/水文学

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人工衛星のデータは、農業や林業、天気といった様々なことを使用されています。

 

人工衛星データの中で地球表面を観測装置を用いて、観測することをリモートセンシングと呼びます。リモートセンシング人工衛星だけではなく、飛行機や気球などで観測することも言います。

 

リモートセンシングという表現は、そのうちに地球表面に限らず、惑星表面を観測する技術のことを指すことになるかもしれませんが。

 

リモートセンシングの用途は年々広がっています。

人工衛星のデータがどのように使われているか、知らない情報があれば幸いです。

 

 

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林業

【041】山火事の早期発見

山火事は、人命や物的被害を引き起こします。

山火事の発生を管理し、影響を軽減する必要があります。

人工衛星データを用いて、消防士の派遣場所を高い精度で連絡することができます。

人工衛星の極軌道気象衛星NOAAのAVHRR(Advanced Very High Resolution Radiometer、改良型高分解能放射計)、地球観測衛星Terra/AquaのMODIS(Moderate Resolution Imaging Spectroradiometer、中分解能撮像分光放射計)によって、中赤外線と熱赤外線の帯域によってより最適化されます。

人工衛星データは時系列で記録し、山火事の範囲を予測・追跡できます。

 

【042】ブラジルでの違法な熱帯雨林伐採の逆転

ブラジルに住むスルイ族は、Googleと協力して熱帯雨林の森林破壊を止めました。

スルイ族は、Google EarthスマートフォンGPSといったツールを扱っています。

違法な採掘と伐採を監視しています。

幸いなことに、多くの違法業者は撤退し、違法行為は歴史上最低レベルになっています。

 

 【043】樹木病害の種類の把握と防止

多くの人々が森林の恩恵を受けています。

樹木病害の急速な拡大は、生態系の健康と地方や国の経済に大きな被害を与える可能性があります。

アメリカマツノキクイムシは17.5ヘクタール以上の森林に寄生し、樹木の色の変化を引き起こします。

衛星画像により色の変化を監視し、マツノキクイムシなどの樹木病害の発生を監視します。

 

政府

【044】新規建築物や建築物の改修を見つけることで、脱税者をみつける

地方自治体や国が気が付かないうちに、住宅の増築やプールをして納税から逃れることはできません。

ギリシャアテネの税務局では人工衛星データを使用して富の兆候を調査しています。

2010年には15,000以上のプールが税務局に申請されませんでした。

ギリシャは資金不足であったため、衛星画像を使用して、税収することを検討しています。

 

【045】土地被覆と土地利用の検出

「土地被覆」は地表面が生物・物理的に覆われているかを示したものです。

「土地利用」は、土地がどのように利用されているを説明しています。

都市計画として、樹木を50%おおう必要がある場合、空間分解能が重要な部分となります。
Landsatの衛星画像は、複数の区画にまたがっており、樹木を調査することには適切なものではありません。

アメリカのバーモント大学にある空間分析研究所(SAL)は、アメリカ国土の土地被覆を衛星画像データによる分類と比較し、11:39で大幅に過小評価されていることが確認されました。

 

【046】地方自治体による都市資産の管理を行い、建築物の安全基準の評価

アメリカの一部の都市では、モバイルのLiDARを利用して資産を管理し、安全基準を確保しています。

毎年、地方自治体では何千もの建築許可を発行しています。

膨大な量の許可は、地方自治体の中ですべてを管理することを困難としています。

モバイルのLiDARのデータサーバーを利用し、地方自治体の内部データと比較することで、建築物の建設が適切に実施されていることを確認できます。

 

【047】無人偵察機を使用して墓地の空間を管理

チェコ共和国は、無人航空機UAVを利用して墓地をマッピングするシステムを実装しました。

8万を超えるお墓が1cmの解像度で管理されています。

この方法は、現場の各墓地を実地で調査記録するよりもとても速く、デジタルデータとして記録も残ります。

UAVは、墓地のマッピングのためには低コストでかつ高精度な方法となりました。

墓地の空間データベースが作成され、税金も削減できました。

 

【048】鳥瞰図で建物を簡単に認識

鳥瞰図「bird’s eye view」は、上空を飛ぶ鳥が地上を見下ろしたような地図の手法です。

45度程度の斜めの角度で世界を見下ろすことによって、地図的な特徴や遠近感を分かりやすく表現することができます。

この分かりやすさによって、Google MAPやBing MAPでも採用されています。

 

水文学

【049】水文学者のためのDEMを利用した流域の描写

水文学(Hydrology)とは地球の水を扱う科学、その発生、循環、分布、その物理的および化学的特性、またそれら特性の人間活動への反応を含めての物理的および生物的環境との相互作用を扱う科学です。従い、水文学は地球上の水のサイクルのすべての歴史をカバーする分野とも言えます。

DEM(Digital Elevation Model、数値標高モデル) は地表面の地形のデジタル表現であり、数値地形モデル (DTM、Digital Terrain Model) と呼ばれることもあります。

DEMは、河川においてどのように水が流れるのか推定することができます。

水文学者は、河川域の研究を行うときに、降水量や地表面を流れる水量や地下水流の情報を必要としています。

これらの情報から、水分の蒸発量や周辺の土地への浸透や表面への露出・流出を分析します。

リモートセンシングにより、正確な標高データを得ることで、河川の勾配の情報を得ることができます。

 

【050】井戸の地下水活動の特定

地球は、海や川、湖など多くの水に囲まれています。

現在も地中深くに多くの地下水があります。

地層の帯水層では、地下水を多く貯蔵しており、この帯水層から水を汲み上げている井戸が多数存在しています。

この地下水は飲料水や農業などに使用されており、地下水を把握することがとても重要であるという理由の一つです。

地下水活動は、その土地の岩石の種類や土壌、土地利用、及び降雨量によって把握することができます。

 

【051】湿地帯の生態系破壊を防ぐ

湿地は豊かな生物多様性を有し、水質調整、さらに二酸化炭素吸収機能を持つなど重要な生態系の仕組みを形成していました。

それにもかかわらず、湿地状態での利用可能性の低さや治水の必要性のため開発が進められて、消えていきました。

湿地とは、「天然のものであるか人工のものであるか,永続的なものであるか一時的なものであるかを問わず、更には水が滞っているか流れているか、淡水であるか汽水であるか鹹水であるかを問わず、沼沢地、湿原、泥炭地又は水域をいい、低潮時における水深が6メートルを超えない海域を含む(ラムサール条約1条1項)」地域のことです。

湿地は特に劣化が著しく、過去300年間で世界の湿地面積の87%、1900年以降では54%が失われています。

水の浄化、洪水の制御、岸の安定化の向上に役立ちます。

 

参考資料

リモートセンシングとは?

https://www.restec.or.jp/knowledge/

100 Earth Shattering Remote Sensing Applications & Uses(2020/12/27)

https://gisgeography.com/remote-sensing-applications/

 

アマゾンのアウミール首長とスルイ族

https://www.google.com/earth/outreach/success-stories/chief-almir-and-the-surui-tribe-of-the-amazon/

森林に発生する樹木病害の伝染と防除

https://www.rinya.maff.go.jp/kanto/gizyutu/kouza/pdf/h18_1_jyubyou.pdf

アメリカマツノキクイムシ(コウチュウ目:キクイムシ科)の生態と随伴生物:日本への侵入リスクの考察のために

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjaez/60/2/60_JR14025/_pdf

 

15 Free Satellite Imagery Data Sources

https://gisgeography.com/free-satellite-imagery-data-list/

 

土地被覆分類とは?

https://sites.google.com/site/mizuochipublic/%E5%AE%9F%E8%B7%B5%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%84-remote-sensing-tutorials/%E6%A9%9F%E6%A2%B0%E5%AD%A6%E7%BF%92%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E5%9C%9F%E5%9C%B0%E8%A2%AB%E8%A6%86%E5%88%86%E9%A1%9E/1-%E5%9C%9F%E5%9C%B0%E8%A2%AB%E8%A6%86%E5%88%86%E9%A1%9E%E3%81%A8%E3%81%AF

 

UVM SPATIAL ANALYSIS LAB

https://site.uvm.edu/sal/
Mobile LiDAR | Surveying And Mapping, LLC (SAM)

https://www.sam.biz/about/technology/mobile-lidar

Mobile Lidar Systems Today and Tomorrow | GIM International

https://www.gim-international.com/content/article/mobile-lidar-systems-today-and-tomorrow

 

衛星画像情報を利用した歴史遺産の保存研究(1)

http://www.egyptpro.sci.waseda.ac.jp/pdf%20files/S-1/S-1-5-2.pdf

新型コロナが襲うイラン中部コム、墓が拡張 衛星画像

https://www.cnn.co.jp/world/35150820.html

This is EagleView

https://www.eagleview.com/

空飛ぶ鳥の目から見下ろした風景「鳥瞰図」

https://www.hcc.co.jp/hcclab/20200518/

 

衛星リモートセンシング技術の応用による地下水の起源を探る試み

https://www.esrij.com/industries/case-studies/48974/

「最近の地下水調査方法と計測技術」リモートセンシングと地理情報システムの地下水調査への応用

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jagh1987/35/1/35_37/_article/-char/ja/

水循環解明のためのリモートセンシングの有効活用に向けて

https://www.cger.nies.go.jp/cgernews/201204/257002.html

RTI、衛星探査でケニア北部の巨大地下水源を発見…干ばつ地帯に水を供給

https://response.jp/article/2013/09/13/206298.html

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jagh1987/35/1/35_37/_article/-char/ja/

河川流域について知っておくべき9つのこと

https://www.pref.shimane.lg.jp/infra/kankyo/kankyo/shinjiko_nakaumi/ramsar/world_wetlaods_day.data/9.pdf

湿地再生事例にみる新たな環境破壊

https://core.ac.uk/download/pdf/144445934.pdf

土壌の炭素貯留で地球温暖化の緩和

https://www.maff.go.jp/hokuriku/seisan/kankyo/pdf/h25_giken.pdf

IPBES土地劣化と再生に関する評価報告書 政策決定者向け要約(抄訳)

https://www.biodic.go.jp/biodiversity/activity/policy/ipbes/deliverables/files/spm_land_degradation_restoration_ja.pdf

リモートセンシングと標高/エンジニアリング・建設/環境

リモートセンシングと標高/エンジニアリング・建設/環境

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コペルニクス

  

人工衛星のデータは、農業や林業、天気といった様々なことを使用されています。

 

人工衛星データの中で地球表面を観測装置を用いて、観測することをリモートセンシングと呼びます。リモートセンシング人工衛星だけではなく、飛行機や気球などで観測することも言います。

 

リモートセンシングという表現は、そのうちに地球表面に限らず、惑星表面を観測する技術のことを指すことになるかもしれませんが。

 

リモートセンシングの用途は年々広がっています。

人工衛星のデータがどのように使われているか、知らない情報があれば幸いです。

 

 

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標高

【032】光の検知及び測位技術を利用した精密レーダマッピング

LiDAR(Light Detection and Ranging)は、レーザービームを使用して、上空から地球の表面までの距離を測定します。

光による検知と測位はLiDARの由来となっています。

LiDARは、レーダービームを使用して密に観測できます。

数値表面モデルや数値標高モデル、日射強度モデルのサンプリングデータを得ることができます。

  

【033】SRTMミッションによる標高の推定

全世界の標高を30m間隔でマッピングする必要があり、2週間と期限が与えられました。

あなたはどうしますか?

NASAのSRTMミッションでわずか11日で達成しました。

SRTMは、Shuttle Radar Topography Missionの略で、スペースシャトルに搭載したレーダーである合成開口レーダー実行されました。

 

【034】写真測量を使用した標高と等高線の導出

写真測量の歴史は19世紀半ばに遡ります。

物体間の距離を測定することにより、幾何学特性で導出していました。

GISの派生で、等高線マッピング、表面モデル、体積調査、3Dマッピングなどがあります。

犯罪現場のマッピングや考古学的発掘、建築などの他の分野でも使用されています。

 

エンジニア/建設

【035】最適な通信ネットワーク容量の計画

現在、世界人口の87%がモバイルデバイスを使用しているといわれています。

この業界の驚異的な成長率は、最適な通信ネットワーク容量のために長期的な計画が必要です。

電気通信会社は、容量を最適化するための費用対効果の高い方法としてリモートセンシングを使用しています。

無線周波数カバレッジは、最適なアンテナの種類や設置地域、及びアンテナの指向性などの拡張を検討する材料となります。

人工衛星のデータから地形や土地利用、及び環境要因をモデル化することで、最適なネットワーク容量を導く情報となります。

 

【036】水を供給するための灌漑システム

リモートセンシングを利用した灌漑システムは、農業や水を使用する他の産業への給水を改善することができます。

この灌漑システムの設計を計画するには、幅広いデータ(土壌水分量や温度、蒸発水分量、日照量、降雨量、植生など)が必要となります。

人工衛星によるステレオ画像(立体画)と航空写真測量は、数値地形モデルなどのデータをまとめ上げるのに役に立ちます。

エンジニアは、建設を開始するために、地上の情報を把握しておく必要があります。

 

環境

【037】欧州の地球観測データプログラム「コペルニクス」による環境と監視

地球全体の環境監視と安全保障が目的で、欧州宇宙機関ESA)のコペルニクス計画があります。

目標として、完全に自律的な環境監視システムを実現することにあります。

コペルニクスは6つの衛星により、陸上、海上、大気、気候変動、災害の把握のために、公共インフラの一つとして包括的が衛星データを取得します。

 

【038】生物の多様性を監視する

ある生物群系、生態系、または地球上に多様な生物が存在している状態を示す生物多様性を監視することに役立ちます。

空間分解能やスペクトル分解能が向上しているため、植生を始め動植物など監視などに大きな役割を果たし始めています。

 

【039】湖や河川を保護するための水辺地帯の景観や水質環境の評価

水辺地帯(エコトーン)は、水辺に沿った樹木も茂る地域です。

これらは、湖や河川の環境を保全する防波堤にもなります。

水辺地帯は、幅が狭いこともあり、高い空間分解能を必要としています。

水は地球全体に広がっているため、水辺地帯の保護はこれからも必要になります。

 

【040】公園における環境変動の評価と生物多様性の促進

公園は多数の動植物の生態系や維持させることができます。

都市開発の中で、自然を保護する数少ない場所になります。

公園は大規模になれば管理がとても難しくなります。

そこでリモートセンシングデータにより、景観の変化を記録し、生物の多様性や外来種の監視、森林火災の早期発見などに役に立ちます。 

 

参考資料

リモートセンシングとは?

https://www.restec.or.jp/knowledge/

100 Earth Shattering Remote Sensing Applications & Uses(2020/12/27)

https://gisgeography.com/remote-sensing-applications/

 

Shuttle Radar Topography Mission 

https://www2.jpl.nasa.gov/srtm/instrumentinterfmore.html

Shuttle Radar Topography Mission

https://ja.wikipedia.org/wiki/Shuttle_Radar_Topography_Mission

 

Remote Sensing and Control of an Irrigation System Using a Distributed Wireless Sensor Network

https://naldc.nal.usda.gov/download/53900/PDF

Remote monitoring of irrigation systems

Control Engineering | Remote monitoring of irrigation systems

How Remote Sensing Technology Improves Efficiency of Irrigation Systems

https://development.asia/explainer/how-remote-sensing-technology-improves-efficiency-irrigation-systems

IoT-Based Smart Irrigation Systems: An Overview on the Recent Trends on Sensors and IoT Systems for Irrigation in Precision Agriculture

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7070544/

 

ESA COPERNICUS

http://www.esa.int/Applications/Observing_the_Earth/Copernicus

欧州コペルニクスの動向

http://www.jsprs.jp/pdf/GEXPO18_tachikawa.pdf

コペルニクス計画、幸先の良いスタートを切る

https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v11/n7/%E3%82%B3%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%83%8B%E3%82%AF%E3%82%B9%E8%A8%88%E7%94%BB%E3%80%81%E5%B9%B8%E5%85%88%E3%81%AE%E8%89%AF%E3%81%84%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%88%E3%82%92%E5%88%87%E3%82%8B/54095

リモートセンシングと災害/エコロジー

リモートセンシングと災害/エコロジー

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-GSFC_20171208_Archive_e000220

 

 

人工衛星のデータは、農業や林業、天気といった様々なことを使用されています。

 

人工衛星データの中で地球表面を観測装置を用いて、観測することをリモートセンシングと呼びます。リモートセンシング人工衛星だけではなく、飛行機や気球などで観測することも言います。

 

リモートセンシングという表現は、そのうちに地球表面に限らず、惑星表面を観測する技術のことを指すことになるかもしれませんが。

 

リモートセンシングの用途は年々広がっています。

人工衛星のデータがどのように使われているか、知らない情報があれば幸いです。

 

  

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災害

【022】活火山の監視

火山は、マントルからマグマが地表面に達した時に形成されます。

地球上では600以上の活火山があります。

通常、火山にはアクセスできないことが多く、火山活動を調査するために、温度情報を取得できる熱赤外及び中赤外線が使用されています。

 

【023】干渉法による潜在的な地滑り

アメリカでは毎年地滑りによる人命が失われており、数十億ドルの損害を引き起こしています。

潜在的な地すべりの発生を検知する最初のステップとしては、ステレオ画像(立体画)と光学画像を使用することです。

斜面の不安定性の引き金は、地震、侵食、排水不良などの原因となる可能性があります。

地すべりは、年間に数cm~数10cmと動きが緩慢なので、地上分解能は1cmより良い必要がありました。

地すべり監視システムを実現するには、1mm未満の分解能を要求されます。

GPSの精度も干渉測位で1cm程度の分解能である。

モデルを作ることで再現するか、航空写真により再現する必要があります。

 

【024】地震後の被害の定量

地震により壊滅的被害が起きた時に、被害状況を知るには難しい場合があります。

地震の被害状況を知ることは、救助隊にとって必要不可欠となり、迅速で正確に行われる必要があります。

地震前後での変化を検出し、画像を分類していくことは、損害を評価するために迅速な方法となります。

災害評価において、建物や地表モデルによる日陰も判断材料となります。

 

【025】石油及び天然ガスに対して干渉法を用いて地形の安定性を評価

アクティブセンサーは、位相差を使用して、干渉法を使用して地形の変化を測定します。

油田及びガスセクターなどの業界では、地形の安定性を監視し、安全基準を向上させています。

時間経過とともに、継続的に人工衛星データの取得は高い安全性を意味し、パイプライン(石油や天然ガスなどを運ぶために設置される管路)の監視をします。

 

【026】自然災害の対応と回復のためのリスク評価

近年、災害の数は明らかに増加傾向にあります。

災害の被害の緩和だけでなく、発生時の対応とその後の回復・復興を実行するためにリモートセンシングデータは使用されます。

自然災害(ハザード)状況における時間的地球観測データとGIS(Geographic Information System、地理情報システム)の統合は、災害対策における主要なツールとなります。

ハザードの状況から、被害状況の評価と人員支援を決定します。

 

エコロジー

【027】持続可能な個体数レベルを確保するためにホッキョクグマを数える

ホッキョクグマ地球温暖化のために絶滅する最初の動物としてリストにあります。

生態学者は、生き残っているホッキョクグマの個体数を調査するための主要な情報源として衛星画像に注目しています。

時系列情報を使用し、ホッキョクグマと大きな白い岩の違いを調査しています。

同様に、南極のアーリーペンギンやコウテイペンギンのコロニーを衛星画像から発見し、監視しています。

 

【028】保護地域におけるパンダの生息地の解明

ジャイアントパンダは食事の99%で竹を食べ、動物界で究極の竹好きです。

パンダにとって生息地は重要です。

地震や道路建築、地球温暖化、違法伐採により生息域が細分化されてしまっています。

絶滅の危機に瀕しているジャイアントパンダを保護するために、継続的に監視していく必要があります。

 

【029】渡り鳥を追跡し、鳥の病原体保有状況を調査

鳥は、食べ物、気候、繁殖によって長距離を移動します。

軽量のGPSは、鳥がどこに移動するかを知るために使用されているにすぎません。

森林が減少することで、鳥の移動パターンが変更することは、野生生物管理において重要な要素となります。

リモートセンシングは、森林の階層構造(森林の階層構造は一般に地表面、草本層、低木層、亜高木層、高木層に区分される植生の階層)や生物季節学などの森林特性を調査できます。

鳥の生息域の適合性モデルは、これらの森林特性を使用して病原体の保有状況を追跡しています。

 

【030】最小コストの分類と植生を使用したヌーの移動を解明

タンザニアでは、地球上で最大の動物の移動が見られます。

一ヶ月の間に、200万頭以上のヌーが移動して出産します。

移住の目的は、食料を見つけることです。

研究によると正規化植生や標高(傾斜)、降雨情報でヌーの移動パターンを推定することを研究しています。

 

【031】生息地適合性モデルを使用して蚊の数を予測

生息地適合性モデルは、蚊の数について興味深い予測を行っています。

蚊の生息域状況と土地被覆状況、地形の特徴、気象観測データを使用して、広域の蚊の生息地状況を推定します。

蚊の生息域を知ることで、病気を運ぶ病原体へのリスクを低減させることでできます。

 
参考資料

リモートセンシングとは?

https://www.restec.or.jp/knowledge/

100 Earth Shattering Remote Sensing Applications & Uses(2020/12/27)

https://gisgeography.com/remote-sensing-applications/

 

 火山噴火予知調査に用いる熱赤外放射温度計

https://www1.kaiho.mlit.go.jp/GIJUTSUKOKUSAI/KENKYU/report/tbh02/tbh02-07.pdf

大涌谷における熱赤外カメラによる連続観測とその特徴

https://www.onken.odawara.kanagawa.jp/files/PDF/houkoku/50/houkoku50_p53-59.pdf

 

リモートセンシングによる地すべりЖ析

http://www.infra.kochi-tech.ac.jp/takagi/other/Landslide0307.pdf

地すべり調査におけるリモートセンシングの活用に関する研究

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejg/66/3/66_3_85/_pdf

衛星画像 (ASTER) を用いてパキスタン地震による大規模地すべりを観測

https://www.gsj.jp/hazards/landslide/pakistan051008.html

 

「石油資源を遠隔検知するための衛星利用技術の研究(旧石油資源遠隔検知技術の研究開発)プロジェクト評価試料 平成30年10月15日

https://www.meti.go.jp/policy/tech_evaluation/c00/C0000000H30/181015_space_1st/space_1st_7-2.pdf

石油・天然ガスの探鉱・開発分野でのSARデータ活用と、ALOS-2への期待

https://www.eorc.jaxa.jp/ALOS/conf/workshop/alos2_ws3/ALOS2_4_1_Namikawa_Takatoshi.pdf

 

ホッキョクグマの個体数、今後35年で30%超減少の恐れ 研究

https://www.afpbb.com/articles/-/3110465

北極圏の海氷減少続く、ホッキョクグマ生息に不可欠 研究

https://www.afpbb.com/articles/-/3100981

NASAの衛星画像から個体数急減が懸念されていたペンギンが大群で住むペンギン島が発見される

https://gigazine.net/news/20180306-nasa-satellite-find-penguin-supercolony/

南極大陸コウテイペンギンの新たなコロニー 衛星画像で発見

https://www.cnn.co.jp/fringe/35157803.html

南極でペンギン150万羽を発見、衛星とAIを駆使

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/030600102/

野生動物の保護管理における衛星リモートセンシング技術の適用

https://www.jstage.jst.go.jp/article/seitai/64/3/64_KJ00009702784/_pdf

中国のパンダ、個体数回復も生息地は縮小 局所的絶滅の恐れも 研究

https://www.afpbb.com/articles/-/3144310

Nature Ecology & Evolution:パンダはまだ危機を脱してはいない

https://www.natureasia.com/ja-jp/natecolevol/pr-highlights/12189

「 宇宙・UAV・IoT技術の連携によるマラリア対策支援サービスの開発 」の成果について

https://www.mext.go.jp/content/20200309-mxt_uchukai01-100000553_5.pdf

西ナイルウィルス拡散状況・パターンの解明で被害を最小化

https://www.esrij.com/industries/case-studies/49137/

 

リモートセンシングとビジネス/気象変動/犯罪

リモートセンシングとビジネス/気象変動/犯罪

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Credits: NASA

 

https://images.nasa.gov/details-iss025e008532

 

人工衛星のデータは、農業や林業、天気といった様々なことを使用されています。

 

人工衛星データの中で地球表面を観測装置を用いて、観測することをリモートセンシングと呼びます。リモートセンシング人工衛星だけではなく、飛行機や気球などで観測することも言います。

 

リモートセンシングという表現は、そのうちに地球表面に限らず、惑星表面を観測する技術のことを指すことになるかもしれませんが。

 

リモートセンシングの用途は年々広がっています。

人工衛星のデータがどのように使われているか、知らない情報があれば幸いです。

 

  

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ビジネス

【010】 駐車場の車両数を検知して、小売り収益と市場シェアを予測する

投資の世界で有名なのは巨大な郊外店舗の駐車場の衛星データを使用し、駐車場での車両スペースを計測していることです。 

日本でもディズニーランドの駐車場の車両から混雑を予想していたり、観光地の混雑状況などにも使用されています。

衛星データの収集を分析を行う企業によって、車両数から、店舗の収益やユーザーの流入、地域の集客数の情報を得ることができます。

これらの情報は、市場アナリストによって分析され、企業の戦略に生かされます。

 

【011】不動産購入時の俯瞰的な上空から眺め

家を購入あるいは借用する際に、周辺地域の様子や眺めを気にするかと思います。

また、周辺に学校や商店街、公園などがあるのか、潜在的に知りたがっている情報をリモートセンシングによって得ることができます。

不動産においてもリモートセンシングによって取得された画像が使われています。

土地の購入や住宅の借用におけるプロセスにおいて、不動産鑑定士や保険会社、貸し手は、素早く周辺地域の情報を得ることができます。

 

【012】長期的な漁業の改善

人工衛星の視点では、海にはたくさんの魚がいます。

人工衛星から取得した海面水温や海の色によって、特定の魚を監視することができます。

地元の漁師と情報を共有することによって、漁業にかかる時間と燃料を節約することができます。

また、海洋環境の観点から有害なアオコを観測することも可能で、全体的に産業の改善と水産資源のバランスを取ることも可能です。

 

【013】夜間の地域経済活動のマッピング

夜間での光の総量は、地域経済や電力、および居住者の収入を考察できる情報になります。

光の総量である放射輝度国内総生産はよい相関性を示し、人間の幸福度とも比べられます。

夜間の経済活動のデータを得ることで、多くの知見を得ることは驚くべきことでもありました。

 

【014】アスペクトデータを使用したスキーリゾート計画

カナダやロシアなどの国では、領土が広く、年間のかなりの部分が氷点下にあります。

山岳地域はスキーリゾートに最適ですが、選択肢が多く、ユーザーを迷わせます。

そこで、スキーリゾートに適する場所を人工衛星のレーダー技術を用いて、アスペクトデータによって、山の斜面の方向、角度などを得ることでより良いプランを提供しようというものです。

 

気象変動

【015】樹木を特定し、その面積を集計して森林の供給量を推定

世界の森林供給量の情報を得ていることは、建設や紙、包装に使用される材料の管理だけではなく、二酸化炭素排出量の約3分の1程度吸収することにも役立ちます。

人工衛星の極軌道気象衛星NOAAのAVHRR(Advanced Very High Resolution Radiometer、改良型高分解能放射計)、地球観測衛星Terra/AquaのMODIS(Moderate Resolution Imaging Spectroradiometer、中分解能撮像分光放射計)、地球観測衛星SPOTにより、世界の森林の減少量と増加量を定量的に観測しています。

 

【016】過去から現在までの気候要因の比較

 NASAを始め多くの組織によって、毎月の様々な気候要因をマッピングして、時系列でどのように変化しているのか確認しています。

光学観測機器により、一酸化炭素葉緑体エアロゾル(空気中の微細な粒子)などのデータを取得しています。

人工衛星としては地球観測衛星TerraやAqua、TEMMに搭載されている観測装置MODIS(中分解能撮像分光放射計)、CERES(Clouds and the Earths Radiant Energy Systems Radiant Energy System、雲及び地球放射エネルギー観測装置)、AMSR-E(Advanced Microwave Scanning Radiometer-EOS、改良型高性能マイクロ波放射計)、MOPITT(Measurement of Pollution in the Troposphere、対流圏汚染観測装置 )が使用されています。

 

【017】海面上昇の測定

ヴェネツィアは毎年、数mmずつ沈下しています。

海面の測定は、費用対効果の高い例です。沿岸部の海面水位は常に変化しており、陸地も変動している上、数週間のデータを必要とします。

海面水位の測定は、衛星レーダーが導入されています。レーダー測定によって、隔週で世界中の海面水位を測定し変化の観測が可能となります。

 

【018】過去と現在の人間の影響を比較する

人工衛星による地球観測は1970年代から始まっています。

景観の変化を知りたい場合は、例えばLandsatの画像データを使用し、高度数百kmからみた過去の地球表面を得ることができます。

石油の流出、森林伐採、戦争、化学物質の流出、光学スモッグといった人的災害も観測することができます。

 

犯罪

【019】深夜のダイビング用のプール

全ての人工衛星による画像が、適切に使用されているわけではありません。

GoogleEarthの航空写真と衛星画像を使用してプールを探し、夜になると観測できる最大のプールに侵入します。

不法侵入ともいえる行為で、子供たちの前や家で試して真似させてはいけません。

 

【020】行方不明者の探索範囲を絞り込む

リモートセンシングは、行方不明者を見つけるために時間やコスト、及び人的資源を節約することも可能です。

刑事は事件が進む前に捜索範囲を絞り込みたいと考えています。

リモートセンシングにより、区画を細かく分け、検索場所を決め、地上の異常を検出させます。

異常の検出は、見つけたい犯罪現場からウサギの穴まであらゆる可能性が含まれています。

検索場所に対して、絞り込むだけの情報とアイディアがあれば、時間の節約も可能です。

 

【021】違法なボートの投棄を宇宙空間から監視下に置く

アメリカのサンタローザ市ですべての身分証明が消された状態でボートが不当放棄されたときに、刑事はGoogle Mapを検索しています。

時系列で記録されている航空写真と衛星画像を調べ、 ボートの所有者を探し出しました。

刑事によって見つけたのは、投棄されたボートの所有者と違法ダンプカーの住所を発見することができたといいます。

 

参考資料

リモートセンシングとは?

https://www.restec.or.jp/knowledge/

100 Earth Shattering Remote Sensing Applications & Uses(2020/12/27)

https://gisgeography.com/remote-sensing-applications/

 

RSMerics

https://rsmetrics.com/

いつ空いてるの!? 無料衛星データでディズニーランドの混雑予想チャレンジ

https://sorabatake.jp/349/

Mapping regional economic activity from night-time light satellite imagery

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0921800905001254

 

NASA Global Maps

https://earthobservatory.nasa.gov/global-maps

Aqua/AMSR-Eの形状や搭載パーツについて

https://www.satnavi.jaxa.jp/project/aqua/

海面の高さはどうやって測るのか?複雑怪奇な「海抜」の謎

https://logmi.jp/business/articles/322502

Human activities are changing the face of the earth

http://storymaps.esri.com/stories/LandsatCompare/

 

 

リモートセンシングと農業/考古学/北極・南極

リモートセンシングと農業/考古学/北極・南極

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-GSFC_20171208_Archive_e000502

 

人工衛星のデータは、農業や林業、天気といった様々なことを使用されています。

 

人工衛星データの中で地球表面を観測装置を用いて、観測することをリモートセンシングと呼びます。リモートセンシング人工衛星だけではなく、飛行機や気球などで観測することも言います。

 

リモートセンシングという表現は、そのうちに地球表面に限らず、惑星表面を観測する技術のことを指すことになるかもしれませんが。

 

リモートセンシングの用途は年々広がっています。

人工衛星のデータがどのように使われているか、知らない情報があれば幸いです。

 

 

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農業

【001】 光学センサ及び合成開口レーダを使用した土壌水分量の観測

大量に水を使用する日本ではいの一番に出てくることはなかなか難しいかもしれませんが、土壌水分量を調べることができます。

 

土壌水分を調べることで、地球の水循環や天気予報、干ばつ、洪水について分析することができます。

人工衛星による土壌水分量を観測するには光学センサと合成開口レーダの二つの方法があります。

光学センサでは、自然界に放出されたいわゆる表面放射の波長(スペクトル)を観測します。高精度ではありますが、一般に空間分解能の低い、いわゆる粗い画像が得られます。

合成開口レーダの場合は、対象地域に電波を照射し、後方散乱により観測します。光学センサとは異なり、空間分解能の高くなりますが、精度は低くなります。

NASAでは両方の観測装置を搭載した人工衛星によりSoil Moisture Active Passive (SMAP)と言われる計画があり、2015年に打上げられています。

 

【002】農業計画のための土壌データのマッピング

土壌は何もしなければ痩せ果て、時間がたつにつれて岩となり崩れていきます。

土質と水、日光によって、植物含めた生物が住める環境が保たれます。

世界の土壌情報を集めている独立した国際組織である国際土壌照合情報センターISRIC( World Soil Information)が土壌データのマッピングを優先事項と上げており、人口増加と食糧のために、世界中で正確な土質情報の必要性が高まってきています。

ISRICでは、1km区画の空間土壌特性を予測するモデルを開発していたり、Terra/Aquaの観測データを使用した気候指標や従来の土壌調査などをもとに、空間予測モデルを作成しています。

 

【003】正規化差植生指数(NDVI)による作物の状態の定量

世界の食料供給は、現在において衛星画像と正規化植生指数(NDVI、Normalized Difference Vegetation Index)で監視されています。

近赤外線観測によって、農業における健康な植生を検出しています。収穫される状態にもよりますが、一般に健康な植生は緑色の波長を反射し、赤と青の波長を吸収します。

人間の視覚から移る緑色の波長は、光合成中の植物によって生成されている葉緑素クロロフィル)です。

葉緑素は、他の波長と比較して、緑色及び近赤外の波長で多くの光を反射しています。この情報からNDVIと近赤外観測が農業及び自然環境における主要な情報とされる理由の一つとなります。

 

【004】精密農業で農耕地のコストと時間を節約する

精密農業(Precision Agriculture)とは、農耕地の空間的時間的な画像データを農作業の判断に利用するシステムのことを指します。

精密農業をうまく実行することで、肥料の節約は10%とされており、収穫量も向上させることができるといわれています。

精密農業では、さまざまな波長の光を観測し、農作物の健康状態を確認します。健康状態に合わせて、調整された肥料を設定し散布させたり、農業害虫の特定にも活用されています。

 

考古学

【005】恐竜の足跡の発生を予測する

リモートセンシングによって、恐竜が地球上を歩き回っていた場所を特定するためにも使用されています。

一般に恐竜は地層の奥深くに埋まっているイメージですが地球上の中には地表面に露出していることもあります。

そのような恐竜の化石が数多く露出している地域の植生や傾斜面、サイズなど地理空間的データを取得します。

現在の技術では、解像度ではありませんが数値モデルで、1cm以下の精度のモデル化をすることができます。

 

【006】マヤや古代エジプトなどの古代遺跡の発掘

古代遺跡の発掘には、赤外線画像とステレオ画像(立体画)が使われています。

長い波長である赤外線により、表面約1m程度の深さまで情報を得ることができます。

ステレオ画像は、地上にある物体の微妙な高低差を知ることができます。

考古学者が木々の植生の大きさを越えた高さで地上に正方形のパターンを見つけた時に衝撃を与えたといいます。

正方形のパターンで見られたのは古代の建物やピラミッドであり、リモートセンシングと赤外線画像を使用することで、古代マヤ文明エジプト文明を発見・解明してきています。

 

北極/南極

【007】積雪量を計算する

積雪量は、雪が解けると川に流れ込み、地域によっては洪水であったり飲料水に関する貴重な情報になります。

しかし、リモートセンシングによって積雪量を計算することは非常に困難です。

NASAでは人工衛星ではありませんが航空機に搭載されたイメージング分光計およびLIDAR(Light Detection and Ranging)システムによって観測しています。

LIDARシステムとは、観測対象に向けてパルス波を発信し、照射による散乱光を観測することで観測対象を分析するシステムです。

 

【008】北極圏での探索、保護、誘導

北極圏は政治的にも非常にデリケートな地域です。アメリカを始め、ロシア、カナダ、デンマークが自国の領土を主張しており、すべての国が合意するまで、北極圏の資源を自由にすることはできません。

北極圏は、鉱物の採掘や天然ガス、船舶航路の短縮といった多くの利権が関わっています。

 

【009】氷河の融解と海面への影響の研究

氷河は地球上で最大の淡水貯水池を保持しています。

極地の99%には氷河があることが分かっています。

さらに、2002年に打上げられたNASAとドイツ航空宇宙センター(DLR)による2機のコンステレーションを編成したGRACE(Gravity Recovery and Climate Experiment) によって、北米アラスカの氷河が年間約20.6ギガトンの質量を失っていることが観測されています。

日本の年間(2017年)の生活用水と工業用水が約25.7ギガトンと言われており(農業用水を合わせると約79.3ギガトン)、日本の年間で使用する水の80%が失われていることになります。

恐ろしいことに、融ける氷の量は年々増えており、海水へ深刻な影響を与えています。

 

参考資料

リモートセンシングとは?

https://www.restec.or.jp/knowledge/

100 Earth Shattering Remote Sensing Applications & Uses

https://gisgeography.com/remote-sensing-applications/

農業

Soil Moisture Active Passive(SMAP

https://smap.jpl.nasa.gov/

ISRIC( World Soil Information)

https://soilgrids.org/

精密農業(スマート農業)はテクノロジーではない、マネジメントである

https://www.jacom.or.jp/column/2019/05/190521-38061.php

考古学

An Integrated Approach to Three-Dimensional Data Collection at Dinosaur Tracksites in the Rocky Mountain West

https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/10420940490442296

北極/南極

NASA Opens New Era in Measuring Western U.S. Snowpack

https://www.nasa.gov/home/hqnews/2013/may/HQ_13-131_Airborne_Snow_Mission.html

NASA Airborne Snow Observatory (ASO)

https://nsidc.org/data/aso

GRACEがもたらしたもの

http://www.geod.jpn.org/web-text/part3_2014/matsuo/index.html

水資源の利用状況(国土交通省

https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/mizukokudo_mizsei_tk2_000014.html#:~:text=%E5%85%A8%E5%9B%BD%E3%81%AE%E6%B0%B4%E4%BD%BF%E7%94%A8%E9%87%8F%EF%BC%88%E5%8F%96%E6%B0%B4%E9%87%8F%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B9%EF%BC%89&text=%E7%94%9F%E6%B4%BB%E7%94%A8%E6%B0%B4%E3%81%A8%E5%B7%A5%E6%A5%AD%E7%94%A8%E6%B0%B4,m3%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

人工衛星と地上局との機能配分と総合システムの役割

人工衛星と地上局の機能配分の一例を考えてみる

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人工衛星を制御するのに、必要なものがいくつかありますが、アンテナのある地上局が必須となるでしょう。

 

データを受信するだけであれば、地上局の必要はないのですが、人工衛星を制御するために電波を送信するには必要になります。

 

そんな地上局ですが、人工衛星の地上局には、人工衛星の制御をするだけではなく、人工衛星から送られてくるデータを補完する機能を持っている場合があります。

 

今回は、人工衛星と地上局の機能分配についてまとめていきます。

 

前提として高頻度観測について考えてみる

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光学観測衛星の高頻度の観測といわれると、どの程度の回数を想像されるでしょうか?

 

観測衛星でいうと、静止軌道上にある2015年に打上げられた気象観測衛星のひまわり8号は最大2.5分に1回のペースで撮影しています。

 

 

観測頻度の制限として、次のようなものがあります。

  • 観測機器が発熱することで画質感度が落ちる熱的制約
  • 観測機器を動作電力不足による電力制約
  • 観測機器の指向性が撮影地点に向けることが間に合わない指向性の制約
  • 取得した撮影データを人工衛星内部に保存しておく記録媒体の容量の制約
  • 人工衛星の状態を確認するためのデータを地上局に送信する運用計画上の制約
  • 人工衛星の運用計画を人工衛星に送り、指示するため運用制約
  • 運用に使用する地上局の配置数により変動する人工衛星との交信タイミングの制約

などがあります。

 

このような様々な制約の中で、静止軌道の場合、いくつかの制限が緩和されますが、ひまわりのような大型衛星は2.5分に1回のハイペースの観測頻度になっています。

 

もちろん、最初からこのようなハイペースの観測頻度ではありませんでした。

 

1978年に運用を開始したひまわり(初号機)及び1981年に運用を開始したひまわり2号は、3時間ごとにフルディスク観測を1日に8回、風計算のためのフルディスク観測を6回行い、1日で合計14回の観測を行っていました。

フルディスク観測:衛星から見える地球全体の観測

風計算のためのフルディスク観測:雲の動きを捉え上空の風を算出するための観測

 

2005年に運用を開始したひまわり6号では、一時間ごとのフルディスク観測に加え、1日32回のハーフディスク観測を開始し、日本周辺を含む北半球では30分に1回の観測が得られるようになりました。

北半球ハーフディスク観測:フルディスクの北側半分の観測

 

一方で、静止軌道よりも地球に近い低軌道では、1台の人工衛星でそこまで高頻度の観測をすることはできません。

 

低軌道では太陽同期準回帰軌道と呼ばれる1日に地球を10数回北極近傍と南極近傍を通ります。

 

地上局の配置場所や回帰日数にもよるのですが、日本の場合ですと1日でだいたい2回以上、日本の同じ地上局と交信することができます。

 

近年盛り上がっている小型の光学観測衛星は、いくつかの制約の中で、1日に1回以上の画像データの取得ができるようになってきました。

 

もちろん、制約があるため地球に向けた姿勢をあまり変えずに行う運用であったり、電力制約により実は1日充電しなければいけなかったりという制限が隠されているのかもしれません。

 

さらにいうと、1回の観測では1枚の画像を取得するのではなく、連続で撮影したり、パノラマ写真のように一度に長い画像を取得する場合があるため、1回の観測はかなりのデータ量を蓄積させたり、電力を使用したりすることになります。

 

人工衛星と地上局の機能配分

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-MSFC-1601978

 

さて、撮影頻度について書いているうちに横道にずれてしまいましたが、改めて人工衛星と地上局の機能配分を実施していきましょう。

 

①-1『観測できること』

①-2-1『観測位置を認識できること』

①-2-2『人工衛星の軌道上位置を認識できること』

①-2-3『観測姿勢への移行及び元の姿勢に移行できること』

 

人工衛星が指定した特定の位置を観測する場合に必要な機能であるため、すべて人工衛星側に機能配分されます。

 

②-1『観測によって取得した観測データを人工衛星内で一時記録できること』

②-2『一次記録された観測データを地上に向けて伝送※できること』

②-3『地上に伝送された観測データを地上設備で記録できること』

②-4『地上設備に記録した観測データをユーザーに配布できること』

※伝送は通信に近い言葉で、衛星通信だとミッションデータ(画像データ)に限らずデータを送受信する場合に使用され、データ伝送と称することが多いです。英語では、transmitと称されます。一方で、交信であったり通信、ビーコンはcommunicationとされることが多いです。個人的には使い易い方を使えばという感じだが組織によって違うと思われます。

 

観測データは人工衛星で取得し、リアルタイムでの伝送とするか人工衛星の中に記録することになります。観測データはミッションデータやプロダクトとも呼ばれることがあります。

データを取得した後に人工衛星のアンテナによって地上に向けて伝送していきます。

ここまでが人工衛星の機能です。

 

電波を受信し、伝送された観測データを地上設備で記録します。地上設備に記録した観測データをユーザーに配布します。

ユーザーといっても、観測データの生データでは読み取れないため、情報を画像の加工を行うユーザーであったり、受信した地上設備での画像を加工したりと、数段階画像処理を行うなど、ユーザーの種類によって変わります。

ここからが地上設備での機能です。

 

③-1『あらかじめ定められたユーザから観測要求を取得できること』

③-2『観測要求に基き、パス制約を加味して、観測運用計画を立案できること。

③-3『観測運用計画に基づいた観測運用を実施できること』

③-4『観測運用計画に基づき、観測データをユーザーに配布できること』

 

時系列的には、先の①②より先に実行しそうな機能です。

人工衛星は受動的には動かないため、ユーザーから観測要求を取得し、いつ頃に実行できるか、現在の運用計画との優先順位の検討、指向制御の挙動の情報などのパス制約を加味して計画を立てます。

先に述べているパス制約というのが観測頻度の制限に当たります。地上局側からでは、1つの観測タイミングを1パスと呼ぶため、パス制約と呼んでいます。

また、ここでの観測運用計画は、データを取得することに限らず、データの画像処理を行い、ユーザーに配布するまでも計画抱けることになります。広義的な観測運用計画となります。

この観測運用計画が、どこの範囲を指しているのか、定義し、提示しておかないと、多くの勘違いを生むため注意が必要になります。

 

個々での機能は、③-3と③-4は人工衛星側と地上局側の両方で持つための機能になります。

 

④-1『人工衛星の軌道上位置を認識できること』

④-2『人工衛星の軌道上位置に基き衛星軌道を認識できること』

④-3『現在の衛星軌道に基づき、保持すべき衛星軌道に応じた軌道変更計画を実施できること』

④-4『軌道変更計画に基づき軌道変更できること』

④-5『軌道変更実施後の評価ができ、必要に応じて修正のための軌道変更を実施できること』

 

ここでは運用時のミッションのためだけではなく、待機状態にある人工衛星に必要な機能を示しています。

④-2~④-5は人工衛星と地上局の両方に機能として持つことが多いです。ただし、④-3~④-5は人工衛星に軌道制御の機能が搭載されている場合に限ります。人工衛星には、姿勢制御機能を持つ衛星は大半を占めますが、軌道制御機能まで持つ特に小型衛星、超小型衛星の場合は、数が減ります。ロケット打上げ時の軌道を維持し、地球の重力や大気により落下していきます。

小型衛星や超小型衛星は、大きさに制限があるためいわゆる推進系と言われる軌道制御機能を持つことが難しくなります。中には、人工衛星の向きを変更する能動的な姿勢制御を行わず、強磁石などにより受動的な姿勢制御を行い、姿勢制御機器を搭載しないこともあります。

 

⑤-1『観測衛星としての機能を満足させるべき機器を搭載できること』

⑤-2『搭載される全ての機器の振動環境を保持できること』

⑤-3-1『搭載機器の熱環境を維持できる姿勢を保持できること』

⑤-3-2『搭載機器の発熱及び外部からの熱入力と、人工衛星からの放熱バランスを保持できること』

⑤-4-1『搭載機器に必要な電力を供給できること』

⑤-4-2『搭載機器に必要な電力を供給するために衛星姿勢を維持できること』

⑤-5-1『衛星搭載機器と地上設備間で通信できること』

 

ここでは観測データを取得するというミッションから離れてしまいますが、人工衛星の運用を考えた時には必須な項目があげられています。

⑤-5-1は、人工衛星と地上局の両方の機能になりますが、それ以外は人工衛星の機能になります。

人工衛星として軌道上で動くための機能が明示されています。

 

人工衛星と地上局の機能配分にみる総合システム

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-20040421_exp9_04

 

だいたいの人工衛星と地上局の持つ機能を知ることができたのではないでしょうか。

 

この二つのシステムのうちに、いくつかの人工衛星側と地上局側両方持つ機能があります。

 

お互いの情報をインターフェースを介してやり取りするだけではなく、お互いに補完していることが見て取れます。

 

これらを衛星の統合システムあるいは衛星の総合システムと呼ぶことが多いようです。

 

大型衛星や商用衛星にはよくあるのですが、人工衛星開発側と地上局開発側では開発体制が違うことが多いのです。

 

お互いに同じ機能を持ち、実は無駄であったり、人工衛星と地上局のソフトウェアの相性が悪いこともあります。

 

人工衛星と地上局は単なるインターフェース担当を立てて進めていくことが多かったのですが、より効率的で、目的に合った、コストダウンを目標として、初期運用時の不具合を減らすなどなどを理由として人工衛星と地上局をそれぞれサブシステムとして管理する総合システムという開発方法もあります。

 

現在のように、小型衛星や超小型衛星を始め、民間業者管理の人工衛星が増える前は、人工衛星と地上局をそれぞれ別々の業者によって開発されたシステムを組み合わせたシステムの方が多かったようです。もちろん調整のためのカスタマイズは必ず行っていたようですが。

 

日本の大学で打上げている人工衛星は、人工衛星システム開発と地上局システム開発を同時に実施していることが多いです。

両方のシステムを開発していれば、お互いにかぶる機能を搭載する必要が無かったり、ソフトウェアの軽量化が可能になります。

利点もありますが、開発側と運用側の両方を担う必要があります。

 

一方で、スカパーJSAT人工衛星の開発能力のない国では地上局設備を整備して人工衛星の運用に徹しているところもあります。

 

ただ、スカパーJSATのよう衛星運用のみ、地上局特化の企業は日本のスタートアップではなかなか現れていません。

 

人工衛星と地上設備を両方開発している企業や画像データを使用した企業などが多いです。

 

おそらく理由の一つとして、電波の使用権が関わっているのでしょうが、今回は長くなったのでここまでにします。

 

参考資料

 システム技術開発調査研究19-R-3 高度なマヌーバビリティを有する地球観測監視衛星の具体化に関する調査研究報告書 2008年

https://ssl.jspacesystems.or.jp/library/archives/usef/gijyustu/pdf/19-R-3.pdf
PRAREシステムのパフォーマンス

https://earth.esa.int/workshops/ers97/papers/bedrich/

地上サービスの購入と地上システムの構築に関する考慮事項

https://www.nasa.gov/smallsat-institute/sst-soa-2020/ground-data-systems-and-mission-operations

リモート・センシングに適した人工衛星の軌道

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsass1969/24/264/24_264_10/_pdf

日本の静止気象衛星のあゆみ

https://www.data.jma.go.jp/sat_info/himawari/enkaku.html#himawari-9

防衛白書 令和2年版を振り返り読み解く宇宙領域

産業面から見る防衛白書 令和2年版

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技術だけではなく、国の政策からも宇宙領域をみたことはあるでしょうか?

 

利用者からすれば、注意している方は少ないかもしれませんが、開発者や事業者からすれば政策にまつわる補助金や、業務委託という形でお客様になります。

 

国防とか技術面は横に置いておいて、今回はなるべく、産業面から防衛白書を読み解いていきます。

 

ただ、防衛面での宇宙事業関係の場合は、既知の技術や製品を使い、安全や信頼性が高いものを使用しているイメージがあります。

これは新規の研究開発や実証実験レベルがとても少ないということです。

 

防衛を見据えた宇宙用製品を開発する場合は、すでに他の製品などで関わりがなければ、防衛特化ではなく産業で十分に有用である結果がなけれなならないことに注意しておく必要があります。

 

最初からアイディア先行のスタートアップで防衛目的で販売しても誰も買わない、ということです。

 

興味を示し、情報収集のための接触はあるかもしれませんが、開発の時間を考慮すると、何年もスタートアップ企業のスポンサーとなることはやや少ないといえます。

昨今の予算事情では、文科省内閣官房のような予算がないため、難しいでしょう。

 

現在の予算を増やすという話もありますが、決まっていないことは仮定とすることは避けます。

それに明言しているのは文科省の大臣であるため、長期計画としても、入れるのは止めておいた方がいいでしょうと先に述べておきます。

 

「特集2 新たな領域 宇宙領域 サイバー領域 電磁波領域」

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一般知識として 、宇宙空間に利用されるものとして、各種の観測衛星、通信・放送衛星、測位衛星などが打上げられているとあります。

 

現在、ビックデータであったり、画像解析に提供される画像を取得するリモートセンシング衛星とも呼ばれる人工衛星は、観測衛星に分類されます。

 

これら人工衛星とは別に、宇宙空間利用において特に注意されるものとして2点あげられています。

  1. スペースデブリ宇宙ゴミ
  2. 人工衛星に接近して妨害・攻撃・捕獲するキラー衛星

 

この2つを如何様に対応していくべきか、議論に上げられています。

書き様から、どのように取り組むべきなのか情報収集と試作検討段階、製品調達で進めているというところでしょうか。

 

国防という観点から、内部組織内、あるいは古くから付き合いのある信頼できる企業を利用してでの情報収集などの初期検討を取り組んでいることでしょう。

 

宇宙空間利用だけではなく、防衛白書では、サイバー領域と電磁波領域について記載されており、この3つの新領域と従来の陸・海・空を融合させることを検討しているようです。

 

サイバー領域については、情報としては2010年代の話で古いですが、こちらの情報が役に立つかもしれません。

mechanical-systems-sharing-ph.hatenablog.com

 

電磁波領域については、実は宇宙業界と切り離せない領域でもあります。

まあ、宇宙業界は産業としての裾野が広いので、切り離せない領域は多いかもしれませんけどね。

 

宇宙領域をめぐる動向

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防衛という面ではどのような衛星が使用されているでしょうか。

 

防衛白書には次のようなものがあげられています。

 

  1. 軍事施設・目標偵察用の画像収集衛星
  2. 弾道ミサイルなどの発射を感知する早期警戒衛星
  3. 電波信号などを収集する電波収集衛星
  4. 各部隊間などの通信を仲介する通信衛星
  5. 艦艇・航空機の測位・航法・時刻同期や武器システムの精度向上などに利用する測位衛星

 

この中で、自衛隊が保持している衛星は、おそらく通信衛星ぐらいではないでしょうか。

 

画像収集衛星や測位衛星は、内閣府側で持っています。

しかし、自衛隊は独自性が強い印象を受けるため、画像収集衛星の画像データなどは気軽に手にすることは難しいような気がします。

 

最初からそのつもりなら、防衛庁で研究開発費を取得して独自で人工衛星を開発すればいいもののとは思います。

 

まあ、軍事色が強くなるのを避けるためかもしれないですけどね。

 

同じことは内閣府が管理?運用?している測位衛星である準天頂衛星にも同じことが言えます。

 

ただ、準天頂衛星は、割と情報がオープンな方なので情報提供は難しくないかもしれません。

 

さらに、早期警戒衛星と電波収集衛星は、日本政府内では調査研究レベルで、影も形もありません。

 

そういう意味では、ねらい目なのかもしれませんね。

 

このうち、早期警戒衛星は即応性衛星と関連つけられているため、5年以内には実現の目途が立ちそうですけどね。

 

 

そんな一方で、宇宙作戦隊の内容が報道されました。

 

そこでは人工衛星の動きを分析し予測しているそうです。

主な目的は、日本の人工衛星を敵対攻撃から守るというものですね。

この「日本の人工衛星」はどこまでの範囲に入るのかちょっと知りたい気がしますね。

 

ひまわりのような気象観測衛星はもちろん、情報収集衛星といった政府衛星だけではなく、いわゆる、宇宙活動法で登録された人工衛星も入るのでしょうかね。

 

人工衛星の管理に関わる許可申請書などを見ると、軌道情報を提供することで独自に軌道を監視することができます。

 

人工衛星の構造の記載もあるため、高精度の観測機器なら地球上から、人工衛星を観測できるかもしれません。

 

宇宙活動法も細かい箇所が改訂されているため、何か宇宙作戦隊などに情報を提供するようなことがどこかに記載されているかもしれませんね。

 

 参考資料

宇宙関係予算について

https://www8.cao.go.jp/space/budget/yosan.html

令和2年度当初予算案及び令和元年度補正予算案における宇宙開発利用関係予算について

https://www8.cao.go.jp/space/budget/r02/fy02yosan_01hosei.pdf

自衛隊「宇宙作戦隊」の訓練 報道陣に公開

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201216/k10012767621000.html

1994年、木星に衝突した彗星が地球と同じ大きさの衝突跡を残した

Comet Shoemaker–Levy 9 (D/1993 F2)を知っていますか?

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Category:天体衝突を題材とした映画

 

隕石あるいは彗星が衝突した光景を見ることができる人はどれだけいるでしょうか?

 

地球には年間数個の隕石が落下してくるといいます。

 

そんな隕石が落ちてくる様子と、落下したクレーターを観測できる人はほとんどいないでしょう。

 

四半世紀ほど前にそれを地球上全世界で観測できるチャンスがありました。

 

1993年3月に、シューメーカー夫妻とデイヴィッド・レヴィによって発見された彗星はComet Shoemaker–Levy 9 (D/1993 F2)、シューメーカー・レヴィ第9彗星と名付けられ、翌年7月に木星に衝突しました。

 

最初はそんなことはなかった

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-PIA00139

 

発見した彗星も、当初は木星に衝突するとは考えられていませんでいた。

 

彗星は、1966年ぐらいに、木星の引力に捕らわれ周回することになり、数十年間もの間木星の周りを回っていたとされています。 

 

発見から1年以上たった1994年7月に日本の天文家である中野主一と村松修によって衝突する軌道であることが予測されました。

 

衝突は、木星の引力に捕まった彗星が重力のバランスを崩し(木星潮汐力)崩壊、2km以下の大きさに分裂して毎秒60kmの速度で、1994年7月16日から7月22日の数日間もの間、21個の衝突が観測されました。

 

木星は、現在においても完全に解明されていませんが、地球でいう地上、地殻はなく、大気の層から内部の液体の層を形成する惑星だそうです。

 

地球や月のように、地表にクレーターが残ることはなく、衝突によって、大気を形成するガスや液体によるものによって、炎が吹き上がったところが衝突の際に観測されました。

 

当時、木星探査のために1989年に打上げられ、まだ移動中の木星探査機ガリレオによって彗星の衝突の瞬間が観測されました。

 

探査機だけではなく、地球の彗星や惑星の専門家は望遠鏡をのぞき込み、地球の軌道上を周回しているハッブル宇宙望遠鏡木星の方向に向けることになりました。

 

衝突跡は、小さな望遠鏡を使用しても非常に簡単に見ることができたそうです。

 

火の玉

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-ARC-1994-AC94-0353-3

 

7月16日の最初の衝突では、地球の半径とほぼ同じ幅で約6000 kmの衝突跡が残りました。同時に発生した火の玉は、23700℃(24000K)の温度に達しました。

 

木星の大気の温度はー140℃(130K)程度ですので、一気に2万℃近く急上昇したことになります。火の玉の噴煙も3000km以上であったそうなので、エベレストはもちろん、低軌道の人工衛星国際宇宙ステーションが巻き込まれたことになります。

 

破片の中に最も大きな影響を及ぼしたのが、7番目に衝突したフラグメントGと呼ばれる破片です。フラグメントGの衝突は、600万Mトンに相当するエネルギーを放出しました。

 

衝突により木星の貴重なデータを取得することもできました。

 

硫化水素アンモニアなどの「硫黄含有化合物」が放出されたり、微細な破片の動きから、木星の高高度の大気の動きを観測できるなどの成果を得ることができたそうです。

 

その後の影響

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Credits: NASA

https://images.nasa.gov/details-PIA01265

 

衝撃跡は数年後に消えましたが、探査機ガリレオによって、1994年と2000年に木星の輪の画像を取得した時には、1994年に輪の全体が約2kmほど傾いていることが観測されています。

さらに、衝突から約20年後の2011年に、冥王星探査機ニューホライズンにより、木星の輪のブレを観測されたそうです。

 

軌道上にある欧州のハーシェル宇宙天文台の赤外線宇宙望遠鏡によって、彗星の衝突による水分が2013年ごろまで待機中に残っていることが観測されています。

 

 

木星への彗星衝突と関連して語られるのは、2013年に、ロシアのチェリャビンスクという都市で発生した隕石の衝突です。

 

地表面には衝突せず、上空で爆発したのですが、彗星の大きさは直径17mでしたが、それでも数百人の負傷者と建物への被害が発生しました。


Падение метеорита в Челябинске ! 15.02.2013г.meteorite in Chelyabinsk

 

 

1994年の木星の衝突後、1998年にアメリカの議会ではNASAに直径1kmの地球近傍天体(NEO)の90%を探すことが義務付けました。

 

これは、1990年代後半、ハリウッドは、地球への彗星衝突をテーマにした映画である「アルマゲドン」と「ディープインパクト」の影響も少なからずあったとされています。

 

参考資料

What would happen if a rocky planet the size of Earth collided with Jupiter?

https://www.quora.com/What-would-happen-if-a-rocky-planet-the-size-of-Earth-collided-with-Jupiter

 

 What would have happened if comet Shoemaker-Levy 9 had hit Earth instead of Jupiter?

https://www.quora.com/What-would-have-happened-if-comet-Shoemaker-Levy-9-had-hit-Earth-instead-of-Jupiter

 

Category:天体衝突を題材とした映画作品 - Wikipedia

 

Comet Shoemaker–Levy 9 - Wikipedia

 

シューメーカー・レヴィ第9彗星 - Wikipedia

 

https://en.wikipedia.org/wiki/Impact_event#Jupiter

 

隕石落下のリスク評価 ―100 年間の落下隕石

https://www.spaceguard.or.jp/RSGC/results/ASTEROID_23_4/Vol.23-99-103.pdf

 

地球に隕石落下って年間どれぐらい?

https://www.gizmodo.jp/2013/02/post_11674.html

 

隕石落下は人類最大の脅威!? 今後10年間で危険そうな小惑星リスト

https://miraijin.info/asteroid-collision/

 

人類史上でただ一人だけ月面に埋葬された人物とは?

https://gigazine.net/news/20181027-eugene-shoemaker-buried-moon/

 

1994 年の SL9 彗星の衝突のスケッチ画像を収蔵

https://prc.nao.ac.jp/prc_arc/arc_news/arc_news921.pdf

 

宇宙で発見された最も怖いものは何ですか? - Quora

 

ロシアに墜落して激突した隕石のとんでもない瞬間を撮影したムービーまとめ - GIGAZINE

 

ロシア・チェリャビンスク隕石の総合解析~起源と歴史の理解に向けて~

http://chrome-extension://dnkjinhmoohpidjdgehjbglmgbngnknl/pdf.js/web/viewer.html?file=https%3A%2F%2Fwww.okayama-u.ac.jp%2Fup_load_files%2Fsoumu-pdf%2Fpress24%2Fpress-130318-2.pdf

 

チェリャビンスク隕石の現地調査報告

https://www.wakusei.jp/book/pp/2013/2013-4/2013-4-228.pdf

 

Why, when the Shoemaker/Levy comet slammed into Jupiter, were we not able to get even better photos of the event? Was that the best equipment for 1992?

https://www.quora.com/Why-when-the-Shoemaker-Levy-comet-slammed-into-Jupiter-were-we-not-able-to-get-even-better-photos-of-the-event-Was-that-the-best-equipment-for-1992

 

https://www.quora.com/Would-we-be-dead-if-Jupiter-didnt-exist

 

https://www.quora.com/If-Jupiter-is-made-up-of-entirely-gas-why-do-comets-slam-into-them-and-explode-like-it-hit-a-solid-ground-e-g-Shoemaker-levy-9-comet-in-1994

 

https://www.quora.com/What-is-the-largest-space-object-impact-recorded-in-human-history

Shoemaker-Levy 9: Comet's Impact Left Its Mark on Jupiter

https://www.space.com/19855-shoemaker-levy-9.html

軌道での温度変化を考慮しなかったためにSバンドアンテナが故障した | Lessons Learned、失敗学、事故事例

気象衛星NOAA-15(NOAA-K)のSバンドアンテナの故障 

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Credits: NASA  GOES-L

https://images.nasa.gov/details-KSC-99pp0489

 

極軌道気象衛星は、南北の極付近を通り赤道を大きな角度で横切る軌道を持っています。

これは、低高度(NOAA の場合は約850km)を短い周期(NOAAの場合は約100 分)で地球を南北方向に周回する軌道です。この軌道を持つ衛星は、地球上のある地点からみると、1日2回程度その地点の近傍上空を通ります。

静止気象衛星に比べ低高度を飛行するため、高解像度の画像が得られますが、観測範囲は狭くなります(NOAA の場合、幅約3,000km)。

また極軌道気象衛星は、静止気象衛星による観測が難しい高緯度地方(緯度60度以上の極地方)を高頻度で観測することが可能です。

静止気象衛星と極軌道気象衛星

 

今回は、最近注目を集めている小型衛星を打上げている軌道とは別の、軌道を通る宇宙船のアンテナに関するLessons Learnedです。

 

概要

温度変化の大きい軌道を採用する場合、人工衛星に使用されるアンテナの評価をより厳密にする必要があります。

 

設計で熱の影響を十分に考慮しつつ、熱モデルを作成したり、熱サイクル試験により設計を確認する必要があります。

 

発生タイミング

気象衛星NOAA-15(NOAA-K)は、1998年5月13日に打ち上げられました。

 

この衛星は、1978年に打ち上げられたTIROS-Nの設計の流れを汲む、新しい極軌道気象観測衛星(POES)の1号機に当たる人工衛星でした。

 

この衛星には、今までにない1700MHzの周波数範囲で動作する3つのSバンドアンテナを搭載していました。

 

ロケットから放出から約18日後、Sバンドアンテナ#2でデータ品質の低下が見られました。

 

1998年10月、英国が分析した観測機器Advanced Microwave Sounding Unit-B(AMSU-B)の観測データは、スキャン視野の半分に品質の劣化を観測しました。

 

発生原因

データの劣化は、人工衛星の軌道位置に応じて、相関性がある場合とない場合がありました。

 

調査の結果、毎年の季節の変化により、太陽が北から南に移動するにつれて、劣化も移動していることが明らかとなりました。

 

さらなる調査により、Sバンドアンテナで大きな温度勾配を受け、受信リンクの品質と観測データの劣化と、熱的な相関性があることが明らかとなりました。

 

アンテナに対して詳細な熱応力分析を行い、アンテナの歪みや破損を引き起こすのに十分な応力がは発生していることが確認されました。

 

また、一度アンテナが壊れると、アンテナゲイン、軸比、および定在波比 (Standing Wave Ratio:SWR) の変化により、受信リンクの品質とアンテナパターンが大幅に低下します。

 

解析で確認できた故障モードは、アンテナの熱サイクル試験で同様の結果を確認することができました。

 

Lessons Learned

軌道上で大きな温度勾配にさらされる人工衛星の設計者は、設計内のすべての材料の熱膨張係数(CTE)を慎重に検討する必要があります。

 

材料が受ける軌道温度のワースト値とその温度勾配を確認する詳細な熱モデルを作成し確認する必要があります。

 

熱モデルは、主に材料の機械的応力と熱的応力の両方を詳細にモデル化していく必要があります。

 

頻繁に、そして大規模な熱環境にさらされる場合は、熱サイクル試験の項目として、詳細に確認しておく必要があります。


Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。

 

新規の宇宙用ハードウェアを採用する場合、ピアレビューや設計レビューで重点項目の対象となるようにします。

 

今回のLessons Learnedを受けて、アンテナは、CTE特性が良い材料で再設計され、広範な熱サイクル試験に供されるように設計されるようになりました。

   

 

最後に

小型衛星を見るとパッチアンテナが多いです。

 

 見た目でアンテナと分かるのは皿(ディッシュ)が半球に近い形状を持ちパラボなアンテナではないでしょうか。

 

これらのアンテナは熱の影響を受けやすく、形状によっては集光して熱を集めることにもなります。

 

熱により変形してしまうと、本文のように送信データが劣化してしまいます。

 

しがたい、運用上でもなるべく太陽光を受けないような部分にアンテナが付けられています。

 

基本は地球に向けるため、わざわざ太陽を向けることはあまりありませんので、たまに設計の検討項目から抜けてしまうのかもしれません。

 

検討項目から抜けてしまう理由として、アンテナ系は構造系と別のメンバーが設計しており、設置場所や通信以外での運用時の人工衛星の指向方向など、気づいたらアンテナに悪影響を及ぼす運用だったなんてことは、たまにあります。

 

複合要因であるからこそ、設計や試験項目での追加項目としてあらかじめあるいは第三者視点でないと、抜けてしまうので要注意です。

 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

 

https://llis.nasa.gov/lesson/908

 

静止気象衛星と極軌道気象衛星

https://www.data.jma.go.jp/mscweb/ja/general/geopolar.html

光学機器搭載の人工衛星に必須な汚染対策 | Lessons Learned、失敗学、事故事例

宇宙機搭載イメージングカメラの汚染への対応(1999)

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人工衛星において光学観測は、その結果が見た目でも分かりやすく、直観的にも出来を判断されてしまいます。

 

地上のカメラにおいても、保管方法を間違えてしまえば、レンズにカビが生えたり、汚れが付着してしまいます。

 

洗浄方法はいくつかあるのですが、人の手がない宇宙空間ではその対応が難しいのです。

 

今回は宇宙空間でのカメラの洗浄方法とロケットで打ち上がるまでの管理についての教訓です。

 

概要

カメラに汚染物が付着した場合、その分析は汚染源や複雑な付着経路を必ずしも特定できるとは限りません。

 

設計・製造では、カメラシステムと熱制御面をわずかな侵入口から遠ざけたり、感受性の高い面を覆ったり、密閉したりする必要があります。

 

設計・製造時に、水蒸気汚染の対策(例えば、温度環境管理)を考慮する必要があり、複合材料を使用する場合は、低吸湿性材料の選択あるいは非ガス放出のコーティングを使用も考慮する必要があります。

 

発生タイミング

打上げ直後、初期動作確認で、NASAディスカバリー計画の探査衛星スターダストに搭載されたイメージングカメラの光学面が汚染されていることが判明し、画質が低下されていることが確認されました。

 

カメラのCCD検出器と光学系の低温動作温度により、汚染分子が物体に付着しやすい「コールドシンク」現象を発生させます。

 

この現象は遊離分子が最も冷たい表面に移動します性質を持っています。

 

付着する汚染物質は、宇宙船のガス放出、カメラ内に閉じ込められた汚染物質が付着している可能性があります。

 

探査衛星スターダスト以外でも、過去に米国および米国以外の低温動作温度環境に曝される機器で発生することが分かっていました。

 

イメージングセンサーの品質を悪化させないために主な対策としては、内部ヒーターや付着物が無機物の場合は太陽の熱によって、汚染物質を除去することが知られています。

 

ただし、加熱することで汚染物質の除去した後、宇宙船とカメラの光学部品の間の温度勾配により暖かい汚染源と冷たい光学面という状態になると、再びカメラの光学面に汚染物が付着することも分かっています。

 

その場合は、再度、内部ヒーターを使用して、再び汚染物質を除去する必要があります。

 

Lessons Learned

カメラに汚染物が付着した場合、理論的に分析しても、汚染源や複雑な付着経路を必ずしも特定できるとは限りません。

 

そのため、ミッション運用中に光学面の予期しない除染が必要になる場合があります。

 

Lessons Learnedを受けての推奨事項としては次の通りです。


特に汚染に敏感な光学システムを扱う場合は、設計・製造と運用時に特に注意して取扱う必要があります。

 

光学システムの関連機器をガス放出源から遠ざけ、実現可能な範囲でガス放出経路を管理した光学システムを構成できるように、開発する必要があります。

 

宇宙船の主構造または機器に複合材料を使用する場合は、吸湿性の低い材料の使用を検討してください。

 

また、吸湿を減らすために、複合構造に非ガス放出コーティングを使用することを検討してください。

 

これらの対策により、ガスによる汚染の可能性がさらに減少します。


汚染の可能性がある期間中は、カメラの光学部品を露出させたりせずに、カバーまたは密閉してください。

 

また、汚染分子を付着させる可能性のあるため、光学面がを冷やす/冷えることを避け、暖かく保温させてください。


宇宙空間で付着したら、光学機器のラジエーターに、ヒーターまたは直射日光を当てて内部温度を上げ、汚染物質を吹き飛ばしてください。

 

ただし、汚染された光学面に直射日光を当てないでください。

 

汚染物質が有機物である場合、太陽光の紫外線に化学反応を起こし、光学面または熱制御面に恒久的に付着する可能性があります。

 


 


 
最後に

汚染物の付着は、必ずしも打ち上げ直前だけとは限らないことを覚えておいてください。

 

打上げ後、長期間、金色のフィルム(MLI)に付着していた汚れが、フィルムから分離して光学面に付着することもあり得ます。

 

時間が経過しているから問題ないと考えるのは、まだまだ故障分析が足りていないといわれるかもしれません。

 

画像を取得して、毎回同じところが、ボケたり、黒点があったり、画素抜けがあったりとすれば、汚れの付着や放射線によるCCDあるいはCMOS素子の異常という可能性があります。

 

CCDあるいはCMOS素子の放射線での影響は、主に白抜けといった現象がみられるので、厳密には原因を分けることができるかもしれませんけどね。

 

今回のコールドシンクと呼ばれる、浮遊物が冷たい所に移動するという現象は、真空温度試験でものぞき窓があれば確認することができます。きっと清掃が大変です。

 

さらに言えば、光学面より冷える場所を作ってしまえば、より安全と言えるかもしれません。

 

だた、冷えやすい光学面より低温の面を少ないリソースの中でどうやって作り出すかが問題となるかもしれませんね

 

Lessons Learnedとは

Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。

 

得られた教訓というと、失敗や不具合だけを想像しがちではありますが、成功したことについても教訓としてあげられます。

Lessons Learnedは同じ失敗を繰り返さないようにすることと、計画が順調に進んだ成功要因を共有することの2つがあります。

  

NASAで公開されているNASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)から、宇宙業界に限らず、工業製品でも適用できそうなLessons Learnedを集めています。 

 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

 Spaceborne Imaging Camera Contamination (1999)

https://llis.nasa.gov/lesson/992